近年、学校に関係する事件や事故は多様化しており、いじめや暴力行為、インターネット犯罪、不審者による児童生徒の殺傷事件というようにその内容も深刻化しています。
このような学校での危機は、児童や生徒にとって好ましくない環境を及ぼしますので、不測の事態が発生した時に学校がどのように対応するかがその後の信頼性に影響すると考えられます。
そのため学校では多様なリスクを体系的にとらえていき、未然に防ぐことができるような取り組みや対応など、組織的な危機管理が必要です。
学校の組織体制の整備を
まずは学校の規模等に応じた危機管理責任者、危機管理推進者、危機管理委員会といった組織体制を整備しましょう。
・危機管理責任者
学校においての危機管理の最高責任者の立場にあるのは校長です。
児童や生徒等の安全と安心の確保を第一に考え、危機管理体制の確立に万全を期し平常時のリスク低減対策や危機発生時の的確で迅速な対応を行うことが必要になります。
・危機管理推進者
危機管理推進者は校長の指示に基づいて、平常時にリスク体系の把握、危機管理マニュアルの整備、研修訓練の実施など管理を行います。
教育活動や業務で有するリスクを把握し、危機発生を未然に防ぐための活動を行うことも必要です。
・危機管理委員会
危機管理を推進する連絡調整機関として設置しますが、委員長は校長としてあとは危機管理推進者など必要な人員によって構成していきましょう。
危機管理に関しての情報収集や分析、情報共有を行いながら、危機発生時においての対応方針を検討し学校内の連絡調整を行うことが必要です。
賠償責任問題に対する対応の検討も必要
そしてここ数年、学校での事件や事故と共に目立っているのは、学校の管理ミスに対しての賠償責任問題です。例えばどのような事例があるのか、起こりうるケースを想定しておくことが必要だと言えるでしょう。
教育活動中に発生した事故による賠償責任
例えば職場体験などの受け入れ先の学校で、教師が置き皿を割ってしまうケースや、理科の実験中に器具の使用方法を間違って教えてしまい生徒がケガを負うといったケースなど、教職員が原因による事故も想定されます。
さらに部活動の試合へ自転車で向かっている途中に、通行人にぶつかってケガを負わせてしまうケースや、学校内で休み時間中にキャッチボールをしていたらボールが来校者の車にあたって損害を与えてしまうという生徒による事故もあるかもしれません。
学校教育活動中に教職員や学校管理下中の生徒の行為で、生徒や第三者に障害を及ぼした場合や財物を壊してしまった場合など、法律上の損害賠償責任を負うことになります。
盗難な紛失などのリスク
例えば生徒から預かっていた携帯電話を紛失したというケースや、体育の授業中に教室にあったはずの制服を盗まれてしまったなど、紛失や盗難などのリスクも考えておく必要があります。
学校が第三者や生徒から預かった保管財物を管理している間、失火などで損壊した場合や、紛失・盗難、詐取などで持ち主等に対して損害を及ぼした場合には、持ち主に対する法律上の損害賠償責任を負うことになります。
保険などで備えることが必要
他にも施設の設備の欠落などのよる事故や総合学習中の事故、借り物に対する事故 など様々な部分でリスクを考えておく必要があるでしょう。
学校の施設の使用や管理、教育活動の遂行に起因する生徒や第三者に対する損害は、学校が法律上の損害賠償責任を負担することになるケースがほとんどですので対応できる保険などで備えておくことが必要です。多額の損害賠償責任を負うことになっても対応できるようにしておきましょう。