取締役が違法行為を行ったことによって会社が損害を受けた場合、会社はその取締役に損害賠償を請求することを検討するでしょう。
しかし会社は取締役などによって運営されているという部分もあり、身内意識から取締役の責任を追及しないというケースもあります。
その際に利用される制度が「株主代表訴訟」で、株主が会社に代わって取締役の法的責任を追及することができます。
株主代表訴訟で取締役に要求できること
会社に損害を与えた取締役に対して、株主代表訴訟で解任や辞任を迫ることはできません。
株主代表訴訟で請求可能となるのは会社に与えた損害賠償のみです。
取締役解任のためには原則株主総会で解任決議が可決されることが条件になります。
株主代表訴訟を起こすことができる株主とは?
訴えを提起できる株主は、公開会社(株式の全部に譲渡制限がついていない会社)の場合には6か月前から引き続き株式を所有している株主です。(定款にて期間短縮も可能)
非公開会社の株主には6か月前から株式を所有しているという条件はありません。
訴訟にかかる費用や弁護士費用は?
株主代表訴訟を提起する際には、裁判所に一律1万3千円の収入印紙を納める必要があります。
通常の損害賠償請求の場合には請求する額によって収入印紙の額が異なります。
請求額100万円であれば1万円ですが、請求額1千万円になると5万円、1億円になると32万円の印紙代がかかります。
株主代表訴訟で取り上げられる会社の損害額は、大会社の場合には数十億から数百億円規模の場合もあることから考えると、株主代表訴訟の一律1万3千円という印紙代はかなり抑えられた金額だということがわかります。
過去の株主代表訴訟
過去に起きた株主代表訴訟の事例として有名なのは、東電の株主代表訴訟です。
原発事故の責任追及として5兆5,045億円の損害賠償請求が行われ、国内の訴訟では過去最高の請求額になりました。
株主代表訴訟で大きな損害賠償請求額が発生することも
社内で損害賠償事件が起こらないためにも、普段からコンプライアンスを徹底して経営判断の適正さを維持するなどが必要です。
しかしどんなに気をつけていたとしても、取締役が会社に損害を与えることを完全に防ぐことは困難と言えます。
そのため損害が実際に発生してしまった場合の備えとして「会社役員賠償責任保険」などを検討すると良いでしょう。
「会社役員賠償責任保険」とは?
会社役員賠償責任保険会社は、取締役を相手とする損害賠償請求訴訟への備え、そして取締役自身が賠償責任に対する備えとして自分で加入を検討する保険です。
補償範囲は特約の有無など契約内容によって異なりますし、違法行為による取締役の賠償責任は補償対象外になることが多いため内容を良く確認の上で検討してみると良いでしょう。