商品の原材料の調達から製造、消費者の手元に届くまでの過程を、サプライチェーンといいます。
サプライチェーンには多くの企業が関わっていて、災害が起こってどこか1つの企業に影響があると、他の企業にも影響が及びます。
災害がサプライチェーンへと及ぼす影響は、どのようなものがあるのか解説します。
災害がなぜサプライチェーンに影響するのか
災害が起こると、サプライチェーンにも影響を及ぼして物流が滞ってしまいます。
しかし、なぜ災害がサプライチェーンに影響を及ぼすのでしょうか?
具体的な理由について、解説します。
まず、交通インフラが麻痺することでサプライチェーンに影響が及びます。
地震によって道路が破損した場合や、洪水や豪雨で道路が冠水した場合などは、トラックが道路を通ることができなくなります。
また、鉄道も悪天候で運転を停止することがあります。
貨物列車も同様に、運休となってしまうことがあるのです。
車だけではなく、鉄道の運休もサプライチェーンに影響を及ぼすのです。
交通インフラが麻痺してしまい、車や鉄道が動けなくなった場合は、部品が届かないため工場も稼働できなくなってしまいます。
また、製品を小売店へと運んでいくこともできません。
また、災害によって企業設備が損壊してしまい、サプライチェーンに影響を及ぼすこともあります。
工場や、在庫を保管する倉庫などが被害を受けた場合などは、在庫にも被害が及び大きく減少したり、工場の稼働ができなくなり製品の製造がストップしたりする可能性もあります。
災害がサプライチェーンに影響すると、サプライチェーンは正常に稼働できなくなります。
自社だけではなく、サプライチェーンに組み込まれている他の企業に対しても、影響を及ぼすことになってしまうのです。
また、災害で取引先が被害を受けた場合、自社にも影響があるかもしれません。
サプライチェーンに組み込まれた企業は、お互いにリスクヘッジをきちんと考えているかが気になるでしょう。
災害などが起こった場合を考えずリスクヘッジをしていない場合や、見積もりが甘い場合などは、取引を断られてしまうかもしれません。
取引先からの安心感を得るには、サプライチェーンに与える影響が少ないBCPを策定するべきでしょう。
特に大きな影響を与えるのが地震で、2018の北海道地震では森永乳業が停電によって工場や冷蔵設備が停止してしまい、自家発電設備がない倉庫に保管されていた冷蔵品を廃棄することになりました。
日本の生乳生産率の半数以上は北海道が占めているのですが、停電になると保管がままならず、搾乳も難しい状態となりました。
牛乳、バターなどの乳製品の供給にも、影響が出てしまいました。
トヨタ自動車では、原材料の生産から製造まで、様々な工場を経由して商品を製造しています。
しかし、地震によって工場が操業できなくなったため、前後の工程を担っている工場にも影響が出て、結果的には全ての工場の操業がストップしてしまいました。
北海道地震の損失は5兆円を超えたといわれているのですが、2011年の東日本大震災では、16兆9千億円もの被害があったといわれています。
被害額が大きくなった原因の1つが、サプライチェーンの分断にあるといわれています。
被災地が広かったというのも理由の1つですが、企業が部品などの供給地点を広く持っていたことや、製造を他社に委託していた点も、被害が大きくなった原因です。
メーカーの中には、被災地以外の工場も操業停止になったところもあります。
サプライチェーンに必要なもの
災害によるサプライチェーンの影響を抑えるには、サプライチェーンのことを考えたBCPの策定が必要となります。
BCPは事業継続計画のことで、災害で被る損害を最小限に抑え、事業を継続させる計画です。
サプライチェーンが寸断されてしまった場合は、自社の損害に直結してしまうので、他社と連携できる対策も考える必要があるでしょう。
他社とのつながりにおいて、BCPの策定は大きな判断材料になります。
災害の後、工場の操業を開始する場合は、人員を確保しておく必要があります。
また、ドライバーが輸送中に災害が起こった場合は、確認を怠らないことで被害を最小限に抑えることができるでしょう。
安否を確認できるシステムを導入したり、災害に対応できる人材のリソースを把握したり、災害時の動きを確認したりしておくなど、BCPの基本的な部分をきちんと策定しておきましょう。
メーカーは、工場などの設備の耐震性を確認しておき、必要なら耐震補強をしておきましょう。
耐震補強以外にも、防災対策をきちんと行っておいてください。
災害が起こったときに、機械が故障することを防ぐ体制が整っていることも大切です。
特に、機械が倒れるようなことがあれば、2次被害も生じるかもしれません。
支えを設けておくなど、被害が広がらない対策をしておきましょう。
工場製品の製造をしている場合は、災害時に取引先から原材料や部品が供給されなくなることも想定しておく必要があります。
供給がストップした場合の対策について、検討しておきましょう。
取引先を1つに絞らず、複数から供給してもらうという方法もありますが、供給が途絶えるリスクを減らすことができる代わりに余計なコストがかかってしまうことになるという新たなリスクが生じます。
原料や部品を自社が供給している場合は、保管するための倉庫を分散して管理することで、災害時に供給が全くなくなるということを防ぐことができます。
代わりに、倉庫の管理コストが増加してしまいます。
海外の倉庫を利用するという選択肢もありますが、輸送には時間がかかるでしょう。
BCPを作成する際は、災害が起こった時を想定してメリット・デメリットを考慮したうえで作成します。
災害が起こった時の対処方法で、損害額は大きく変わってくるのです。
まとめ
災害が起こった時は、サプライチェーンにも影響を及ぼすことがあり、場合によってはサプライチェーンが正常に稼働しなくなって他の企業に迷惑をかけてしまうこともあるでしょう。
災害によるサプライチェーンへの影響を抑えるには、サプライチェーンのことも考えたBCPの策定が重要です。
災害によって被る影響を考え、対策をきちんと行ってサプライチェーンの稼働を妨げないようにしておきましょう。