中小企業の経営リスク、物価高騰時代に販売価格の見直し・価格転嫁

事業運営リスク

未だ影響が根深く残るコロナ禍、さらに収まりを見せない円安によって、原材料の価格や電気料金、燃料費など多くのものが高騰し、中小企業にとっては大きな打撃となっているでしょう。

予定していた価格では利益が出ないことも多いため、販売価格の見直しが求められます。

どのように価格へと転嫁したらいいのか、解説します。

価格交渉や価格転嫁の難しさ

商品の価格は、原材料と人件費など、かかった費用に利益を上乗せして決定されます。

商品を運ぶ運搬費用、さらに卸業者などが間に入る場合は各自の利益も上乗せされることになりますが、価格は基本的に一定です。

ただし、原材料費や仕入れ価格が上がった場合、販売価格に値上げ分を転嫁するのは当然のことでしょう。

ただし、中小企業には簡単に値上げができない事情もあるのです。

見積もりを出して契約したのに、後になって価格を再交渉するというのは商習慣上あまり歓迎されません。

もし交渉に応じてもらうことができたとしても、信用を失って今後の契約が打ち切られる可能性もあるでしょう。

契約が打ち切られてしまうくらいなら、多少利益が減ったり損をしたりするとしても、耐えた方がいいと考えるかもしれません。

取引先に相談したくても、他社からは価格交渉をしたいという声がないと言われてしまえば交渉を申し出るのは難しくなるでしょう。

しかし昨今は、下請法などのガバナンス遵守の精神を持ち、企業成長を共にしようという考えを持って発注先企業との関わる方を変えていこうという動きが、大企業を中心として見られるようになっています。

実際に、調査結果では価格交渉を行って満額回答が得られた、いつでも相談してくれと言われたという回答があり、6割以上の企業は価格交渉の協議に応じてもらうことができているのです。

価格交渉・価格転嫁のポイント

価格交渉に応じてもらい、価格転嫁できるかどうかは、中小企業にとって重要なことですが、ただやみくもに交渉を申し込んでも断られる可能性が高くなります。

望んだ結果を得るためのポイントについて、解説します。

原材料費の高騰が続き、以前とはビジネス環境に大きな変化がある昨今、発注元となる大企業は現状についてどのように考えているのでしょうか?

実は、大企業でも中小企業が大変な状況に陥っていることは、十分に理解しています。

しかし、発注元となる大企業の担当者の人事評価にも品質やコスト、納期などがあり、過去のものと変わらなかった場合は価格交渉に応じることで評価が下がる可能性があるため、担当者では柔軟に判断することが難しいケースも多いのです。

発注元に価格交渉をして応じてもらうためには、普段から担当者同士が友好関係を結んでおくことが大切で、外部環境の変化や自社の状況の変化などは常に相談して、意識してもらうことで価格交渉があるかもしれないと考えてもらい、相談しておくことが大切です。

大企業側も、事前に相談があれば予算の余裕やどこまで応じるかを検討してもらうことができるので、応じてもらいやすくなるのです。

予算に関してはお互い無視できない点なので、事前に妥協点を決めておく必要があります。

単に値上げをしたいというだけでは、取引中止になってしまうリスクがあります。

また、唐突に値上げを持ちかけた場合は業績悪化を疑われてしまい、他社にも噂として流れていくため、事業の継続が困難となるかもしれません。

取引先に要求を受け入れてもらうには、自社の都合を押し付けるだけではなく、応じてもらうことで得られるメリットについても考える必要があるのです。

不利益となる条件を受け入れても、取引を続けてもらえるメリットを考えておきましょう。

スムーズに価格交渉を進めるには、原価が上がっているから値上げするというだけではなく、具体的な原価を伝えたうえで商品ごとに値上げの必要があるかを話し合いましょう。

中小企業側が譲歩したなら、大企業側も譲歩してくれる可能性が高くなるのです。

中小企業側が下手な駆け引きをしようとすれば、今後問題点が解消された際に関係性が切られてしまう可能性もあります。

どちらかの立場が強いという状態ではなく、手を取り合って協力して苦境を乗り越えよう、というスタンスで取り組むことが大切です。

現状において、安定経営をするために経営者は何に気を付けるべきでしょうか?

原因となることが落ち着いたとしても、一度変化した世の中の考え方は元に戻らないため、現状の延長線上での経営というのは現状維持すら不可能でしょう。

現状を把握したうえで、自社の成長機会にはどのようなことがあるのかを把握して、強みを生かしてできること、弱みを補完するために行うべきことを一から考え直し、中長期的な競争優位性が確保できる事業を立ち上げたり、伸ばしたりするべきです。

現在は、国や自治体による補助金が交付されるケースもあります。

しかし、経営者には単に救いの手に縋りつくのではなく、中小企業診断士や税理士などの専門家と相談したうえで、具体的な次の一手を考える必要があるのです。

今まで、自分だけで会社を経営してきたという経営者であれば、人に相談するということに抵抗があるかもしれません。

また、相談の仕方がわからないという人もいるでしょう。

しかし、胸の中ではモヤモヤとしたものを抱えていることも多いはずです。

モヤモヤを解消するためのアドバイスをしてくれる存在は、心強い味方となるでしょう。

専門家に限らず、社内の人材であっても、相談しやすい人や雑談していて元気が出るような人を見つけることができれば、協力してトラブルを乗り越えていくことができるはずです。

まとめ

中小企業にとって、現在の円安や燃料費、電気代、原材料費の高騰は、企業経営に大きなダメージを与える要因となっているでしょう。

製品を製造する上で、原価の値上がりは商品価格に転嫁するべき項目ですが、すでに契約を結んでいる条件を変更するというのは容易ではありません。

難局を乗り越えるためには、取引先である大企業とも協力して、お互いに納得できるラインを見定める必要があるのです。