組織の何らかの面でリスクを管理することは多いのですが、組織を全体的にリスク管理することも重要となるでしょう。
全社的リスク管理のことをERMといい、リスクを管理してマネジメントすることでリスクを未然に防ぎ、発生を防ぐことができないリスクに備えることができるのです。
ERMとはどのようなものか、解説します。
ERMとは?
組織において部門ごとにリスク管理をするのではなく、組織全体のリスクを包括的に管理してマネジメントすることをERMというのです。
ERMはEnterprise Risk Managementの頭文字をとった言葉で、日本語では全社的リスク管理という意味になります。
方法としては、組織全体のリスクを洗い出して優先順位を決め、順位が高い方から対応策を考えて評価と検証をサイクルにして継続的に回していくのです。
リスクが発生した際、部門ごとに対応していたのに対して、EMSは組織全体のリスクをまとめて管理するための機関となります。
企業を取り巻く環境はグローバル化の様に大きく変化しているため、リスクも複雑になり組織に対するリスクはどんどんと複雑になっているでしょう。
今までは部署ごとにリスク対策を行ってきましたが、今までの対策では不十分なことも珍しくはありません。
リスクマネジメントは部署ごとで行うものではなく、組織全体で行ってこそ意味があるものだということが分かってきたのです。
ERMを実施することで、リスク対策の管理漏れを防ぐことができ、リスクを多角的に捉えて脅威をわずかにも見逃さないような体制を整えられます。
十分な対処をすることで、組織全体の対応力やリスクの察知力も向上し、被害を最小限に抑えることができるのです。
実施する際は、組織の規模によって方法が異なるのですが、基本的には経営者がトップとなり役員がまとまって、責任者となります。
組織全体で体制を構築することが重要なので、従業員各自がERMについて理解できるようにして、チームを構成する必要があるのです。
専門チームが中心となって枠組みを構築してリスクを洗い出し、具体的なプロセスを定めて実践することを推進し、研修なども行いましょう。
ERMのリスクの認識方法は?
ERMにおいてリスクを認識する方法としては、主にヒアリングとSWOT分析があるのですが、具体的にはどのような方法となるのでしょうか?
ヒアリングは部門ごとに分かれて行い、情報を収集して些細なリスクも含めてすべて洗い出していきます。
部門ごとに認識が異なって起こるズレや漏れなども防ぐために、情報もしっかりと整理していくことが重要です。
現場の従業員から聞く意見は実態に基づいたものなので、起こる可能性が高いリスクも把握でき、優先順位の決定にも役立ちます。
SWOT分析というのは、組織の強みや弱み、機会、脅威について分析することで、内部と外部を絡めてリスクを洗い出すために行うものです。
ERMの構築にはリスクを認識することから始める必要があるため、分析して根本的な原因まで明らかにすることで、対応先も決めることができます。
ERMのフレームワークは?
ERMにおいて、フレームワークはリスクを認識し、評価した上で対策を行い、モニタリングをして再びリスクを認識するというサイクルを繰り返すことです。
まず組織に存在している様々なリスクを洗い出していくのですが、洗い出す際は起こりうるリスクを全て認識していきます。
地震や台風のような自然災害、内部で起こる不正、サイバーテロ、為替リスクや金利の変動等、企業内だけではなく外部で起こるリスクも含めて洗い出す必要があるのです。
特に、近年ではテクノロジーの進化に伴ってデータが爆発的に増加しており、従業員のリモート化によってサイバー攻撃の頻度も増えています。
従来通りの対策では十分にリスクを防止することができないため、現状に合わせた対策が必要となるのです。
洗い出されたリスクは、評価と分析を行って判断していくことになるため、漏れがないように些細なリスクも逃さず、出来るだけ多くのリスクをリストアップしましょう。
洗い出されたリスクには、発生する可能性が高いリスクや影響度が大きいリスクなどをピックアップして、優先順位を決めていくのです。
リスクが発生したときはどのような業務にどんな影響があるのかというポイントは、対策を検討する際に重要となります。
反対に、発生率が低いリスクや、トラブルに発展したとしても被害が少ないと思われるリスクも把握して、影響度を分析する際にメリハリをつけていくことも重要です。
リスクを分析したら対策を検討するのですが、検討する順番としては影響度が高いリスクから行わなくてはいけません。
基本的な対策は、影響度分析を参考にしながらリスクの回避、提言、移転、需要などの中から決めていくことになるでしょう。
リスクの回避は、リスクが高い新規事業を断念するなどの方法で、リスクの要因となるものを排除することをいいます。
リスクの低減は、事業継続計画を策定してリスクが発生した際に事業が受ける影響を減らすなどの方法です。
リスクの移転は、データを社内で保管するのではなく、クラウドサービスなどを利用して外部に保管するなどの方法があります。
リスクの受容は、リスクを把握した上で対策するとコストが被害を上回る場合などに、対策をしないという方法です。
対応策の策定が終わったら、リスクについて定期的、あるいは常態的にモニタリングを行い、状況を判断します。
リスク管理がきちんと運用されているか内部監査を行って確認し、課題が見つかった場合は改善していくことになるのです。
モニタリングを行って継続的に運用し、再びリスクを発見して分析、対策と繰り返すことで、効果はどんどんと高まっていきます。
まとめ
組織を運用する上で発生するリスクは、部門ごとに対処するのではなく組織全体のリスクをマネジメントするERMによって、組織全体で対処する必要があるでしょう。
企業を取り巻く環境は大きく変化しているため、リスクについても複雑になっていて、対処するには組織全体で取り組む必要があります。
ERMは、リスクを明確にして分析し、対策をした上でモニタリングをして再び洗い出すと繰り返すことで、効果はより高まっていくでしょう。