相続が発生した時、不安に思うのが相続税です。
しかし、実は相続する財産の中には、相続税よりもコワいものがあります。
相続税よりもコワいのは、「負動産」といわれる不動産です。
なぜ、負動産は相続税よりもコワいのでしょうか?
負動産のコワさについて、解説します。
相続はいいことばかりではない
自分が頑張って築き上げた財産を、自分の子供たちに受け継がせることを相続といいます。
多くの生物がいるのですが、相続という考え方をするのは人間だけでしょう。
相続される財産には、多くの種類があります。
最もわかりやすいのは現金や預貯金ですが、他にも有価証券や保険、宝石、不動産、特許権、貸付金などがあるのです。
財産はイコール金銭的価値があるものというイメージがあるかもしれませんが、実はプラスの財産ばかりとは限らず、マイナスになる財産もあるのです。
例えば、親が借金をしていた場合、返済する義務も財産の1つとして相続することになってしまいます。
相続する財産の中で、特に価値が大きいのは不動産です。
以前は不動産があると非常に喜ばれたのですが、近年では不動産を相続したことで苦しむ人が増えています。
不動産には様々なものがあり、中には多額のローンが残っていて入居者が少ないアパートや、地方にある不動産、郊外ニュータウンに建てられた家、老朽化した別荘、山林など、相続しても困る不動産も多いのです。
大都市の新築マンションはかなりの高値で売られているものの、多くの人が購入しています。
しかし一方で、日本全国には840万戸以上の空き家があり、所有者が不明な土地の合計は九州全土より広くなっているのです。
なぜ、ありがたいはずの不動産が持てあまされているのかというと、不動産は正常に相続されにくいという特徴があるのが原因です。
預貯金のように扱いやすい財産ではないうえ、所有しているだけでも毎年税金を納める必要があります。
相続においては、一次相続と二次相続があります。
一次相続は親が亡くなった場合の相続でどちらか一方の親だけが亡くなった場合、二次相続は一時相続の後でもう一方の親も亡くなった場合です。
不動産の価値判断の難しさ
相続財産に不動産が含まれている場合、混乱するのが不動産の価値の判断です。
不動産の価値を示すものは、固定資産税評価額や路線価評価額、売買価格など様々なものがあるので、評価額をどう考えるべきかという判断が難しいという人もいます。
実は、不動産の価値を判断する基準となるものは、土地と建物で異なります。
土地の価値は路線価評価額を基準にするのですが、建物の価値は固定資産税評価額を基準として産出することとなります。
路線価評価額というのは、該当する不動産が面している道路に付けられた価格のことで、毎年7月に公表されていて、インターネットで簡単にチェックできます。
不動産評価額は、毎年5月頃に送られてくる固定資産税通知書に記載されています。
固定資産税通知書には、土地の評価額も書かれているのですが、相続の際の価格を知りたい場合は、土地の評価単価を7で割り、8をかけた額が路線価の目安となります。
路線価評価額は公示地価の約8割、固定資産税評価額は約7割が目安です。
さらに、小規模宅地等の特例について知っていれば、評価額はおおよそわかるでしょう。
株式や債券の取引に関しては、近年はほとんどの人がネットで取引しています。
運用報告書については、書面ではなくメールで送られてくることが増えているので、父親が亡くなった時にメールアドレスやパスワードなどがわからず、財産をすべて知ることができないというケースも多いのです。
メールやネット証券のログインID、パスワードなどは、メモなどが残されていない限り本人がいないからわからないというケースが増えています。
相続財産に関する申告には関係ありませんが、放置していると毎年会費がかかるものもあるため、できるだけ早くパスワードを知ることが重要となるのです。
全体の財産を把握したと思っても、また別の財産が見つかることもあります。
また、いくら探しても不動産の権利書が見つからず、家中をひっくり返すような騒動になることもあるのです。
相続人が全員近くに住んでいれば、財産を探すのにも協力できるのですが、例えば実家が北海道で子どもが道内、東京、大阪とバラバラに住んでいる場合は、いちいち集まることもできず捜索にはさらに時間がかかってしまいます。
一次相続でもかなり大変なのですが、二次相続になるとさらに複雑となります。
親の財産は、相続税がかかるものもかからないものも相続されるので、親が亡くなる前に資産の内容を把握しておくべきでしょう。
しかし、親に財産のことを聞くのは、死ぬのを待っているように思われることもあるため、なかなか聞きづらいものです。
また、親との関係があまりよくないため、聞きづらいというケースもあるでしょう。
親としても、子供に財産の内訳を教えてしまうと、相続を当てにして浪費したり仕事をしなくなったりするのではないか、と不安に思うかもしれません。
ただし、直接教えなくても目録などは作っておくべきでしょう。
財産の全貌を残された家族が把握できないようなケースでは、財産をいつまで探せばいいのか、何を探せばいいのかがわかりません。
また、亡くなる前に教えようと思っていても、認知症になってしまい自分でもわからなくなるというケースもあるでしょう。
負動産をはじめ、親の財産を相続する際は、具体的な内容を知らなければ相続するかどうかの判断が難しいでしょう。
マイナスにしかならないようなら、相続放棄という選択肢も検討しましょう。
まとめ
親からの相続の問題は、相続税だけだと思っている人もいるのですが、実は負動産という問題もあるのです。
昔は、不動産といえば相続財産に含まれているとかなり嬉しいものだったのですが、現代においては必ずしも嬉しいとはいえず、所有していることでマイナスになってしまうこともあるのです。
まずは相続財産の全貌を知り、全体的にマイナスとなるようなら相続放棄も検討しましょう。