法人や従業員を雇用している個人事業主などの事業者には、従業員の社会保険料を納める義務があります。
社会保険料を滞納すると、最終的に企業はどうなってしまうのか、不安に思っている経営者もいるのではないでしょうか。
社会保険料滞納時の流れやデメリットについて、解説します。
社会保険料とは
会社は、従業員に支払う給料の額に応じて一定の割合で計算した「社会保険料」を支払う必要があります。
しかし、最近では社会保険料が支払えず、滞納している会社が増えているのです。
消費税の増税や新型コロナウイルスの影響、人手不足、営業自粛や休業の要請などが原因で経営状態が悪化した会社が、社会保険料を支払う余裕がなくなってしまったため、滞納することとなったのです。
たとえ経営が赤字であっても、従業員には給料を支払う必要があります。
社会保険料も同様で、支払う義務があるのです。
たとえ会社の経営が赤字になったとしても、社会保険料の支払いが免除されることはありません。
近年は、自分で企業をする人も増えているのですが、社会保険の知識があまりないという人も少なくありません。
法人の場合や社長1人だけでも、個人事業主の場合は常時5人以上の雇用がある場合に社会保険の加入義務が生じるのです。
社会保険料を滞納した場合のペナルティ
社会保険の保険料を支払うことができず、滞納した場合は様々なペナルティがあります。
まず、滞納した時点で納付するよう督促を受けます。
納付期限のおよそ1か月後に、督促状が送付されてくるのです。
記載されている期限内に納付すれば問題ありませんが、納付できずに滞納したままとなった場合は再び督促状が送られてきます。
場合によっては、電話で催促されることや、職員が訪問してくることもあるでしょう。
また、督促状に記載された期限を過ぎてしまうと、延滞金が加算されます。
延滞金は、最初の3カ月は年利2.4%、以降は年利8.7%となっています。
ただし、年利は変わることもあるので、注意してください。
督促を受けても支払わなかった場合、年金事務所の職員が自宅や職場を訪問し、財産調査を行います。
調査対象となるのは、現金や所有する不動産、取引先の売掛金などです。
最初は聞き取り調査を行うのですが、差押えできる財産がなければ強制的に捜索が行われます。
差押えが可能な財産がある場合は、強制的に換価されて滞納金に充当されます。
差押えを受けると財産を失うだけではなく、銀行からの融資を受けるのが難しくなる、取引が打ち切られてしまうなどのデメリットもあります。
支払えない場合の対処法
社会保険料の納付を滞納している場合、滞納が発生してから2年経過すると時効になるのですが、納付期限を過ぎた時に届く督促状を受け取った時点で時効のカウントがリセットされるため、時効になることはほとんどないでしょう。
時効のカウントがリセットされる行為は、督促状だけではなく電話や訪問などもあります。
支払を滞納していると必ずいずれかの行為が行われるので、時効を待っていても成立することはないのです。
社会保険料の納付が難しい場合は、猶予や分納などの制度を利用することも検討しましょう。
ただし、制度を利用したい場合は申請しなくてはいけません。
申請には期限があるため、漠然と滞納していると期限を過ぎてしまうかもしれません。
支払うことができないと分かった時点で、できるだけ早く申請の手続きを進めていきましょう。
社会保険には、健康保険と介護保険、厚生年金保険、労災保険、雇用保険の5種類があるのですが、支払ができない場合に相談するのは年金事務所か労働局のどちらかです。
健康保険、介護保険、厚生年金保険は年金事務所に、労災保険、雇用保険は労働局に相談しましょう。
一時的に保険料の納付が困難になっている場合は、納付の猶予を申請してください。
申請するための条件としては、災害によって財産に被害を受けたか盗難にあった、事業主や生計が同じ親族が病気になったり負傷したりした、事業の廃止や休業、前年の利益の2分の1以上を超える損失があったなどの事由に類する事実があったことなどがあります。
納付の猶予が認められた場合は、原則1年以内、最長でも2年以内で猶予されます。
余裕が出るまでなど、いつまでも猶予されるわけではないのです。
猶予された金額については、猶予期間中に毎月分割で納付していきます。
また、延滞金は猶予期間中の全額、もしくは一部が免除されます。
猶予を受けている間は、財産の差押えも猶予され、すでに差押えを受けている財産に関しても換価が猶予されます。
納付の猶予だけではなく、分納という制度もあると思っている人もいるのですが、実は猶予も分納も同じ制度で、呼び方が異なるだけです。
納付の猶予が認められたとしても、滞納金の支払いを待ってもらえるわけではなく、猶予期間中に毎月分割で支払うことになるのです。
毎月分割して納付するため、分納とも呼ばれるのです。
分納が認められるか、分納が認められる期間はどのくらいかという明確な基準に関しては、公表されていません。
判断は、年金事務所が申請者の財産状況や収支状況などを鑑みて、個別に判断するとされているのです。
納付の猶予や分納の相談をする際は、財産収支状況書を作成して、正確なデータを基に説明する必要があります。
保険金の納付の猶予以外にも、財産を差し押さえられてしまった場合に財産の換価を猶予してもらえる制度もあります。
換価の猶予が認められた場合は、原則1年以内、最長で2年は換価が猶予されるのです。
換価の猶予を受けている間に、滞納金を毎月分割で納付していくことができ、延滞金も一部が免除されます。
ただし、一定の要件を満たしていなければ換価の猶予は認められないのです。
納付や換価の猶予を受けることができない場合や、猶予されても滞納金を納付することができない場合は、破産手続きをして倒産させることも検討しましょう。
法人の破産は、法人格が消滅することで社会保険料の支払い義務も消滅するのです。
滞納金を支払わずに破産した場合でも、従業員の社会保険には特にデメリットがありません。
従業員や取引先に迷惑がかかる前に、破産も検討してみましょう。
まとめ
法人や5人以上の常時雇用がある個人事業主は、社会保険に加入することが義務付けられています。
しかし、社会保険の知識があまりない人や業績が悪化した会社などの中には、社会保険の保険料を支払うことができず延滞するケースもあります。
しかし、社会保険料を延滞すると多くのデメリットがあり、場合によっては破産による倒産となる機器もあるため、気をつけましょう。