新NISAが円安を誘発している

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2024年から、少額投資非課税制度(NISA)が新NISAといわれる新制度に変わり、年間投資枠が拡大されて非課税保有期間も無期限となりました。

しかし、新NISAは円安を誘発していると言われているのですが、新NISAと円安にはどのような関係があるのでしょうか?

新NISAが円安を誘発していると言われるのはなぜか、解説します。

円安になった原因は?

近年、円安ドル高が急激に進行し、6月には37年ぶりに1ドル160円台半ばを突破し、今も155円から158円の間で推移しています。

円安の原因は様々で、2024年から始まった新NISAも原因の一端と言われているのですが、新NISAは円安にどう影響しているのでしょうか?

4か月で約4兆円にもなっている個人の円売り

2024年に始まった新NISAの内容は、元々のNISAから大きく変わっていて、以前は最大800万円だった非課税投資枠も最大1800万円に拡充されています。

岸田政権における重要な政策の1つでもあるのですが、実は開始されたことで日本から海外へと流出する資産が、急増しているのです。

財務省の発表では、投資信託委託会社の海外株式や債券への投資額が2024年1月に約1.3兆円と、過去最大になっています。

1月から4月までの合計は4兆円にもなり、前年が1年間で4.5兆円だったことを踏まえると、2024年の年間合計額は前年の約3倍になってしまうかもしれません。

理由として考えられるのが個人投資家の円売りで、新NISAの開始がキッカケとなって価値が低下している円を売り、価値が高い外貨を保有する動きが加速しているのです。

個人投資家の円売りは機関投資家に次ぐ存在感があり、今後は海外でも注目されるようになるのでは、と考えられています。

円に対する不安

新NISAが円安を後押ししていると言われているのですが、NISAはもともと長期間での資産形成を目的とした制度なので、短期的な理由で判断するのは問題があります。

現在、多くの人が将来への不安からNISAをはじめ、外貨に投資をしていることで円安につながり、円を持つことに不安を抱くようになっているのです。

円に対する不安がスパイラル的な動きをしている中で、新NISAが始まったことによる副作用として、急速な円安が起こっているのでしょう。

しかし、政府ではNISAから新NISAへと移行する中で、円安が加速する動きが起こるだろうと予測することはできなかったのでしょうか?

ある意味では正解と思っている

政府は、新NISAを開始することで円安の動きが加速していくということは、予測していたと考えています。

なぜかと言えば、2020年にはすでに日本の投資家の中で、国内の株を売却し、海外の株を購入するという動きは出ていたのです。

しかし、日本では資産運用立国の実現を掲げているため、海外の株式に投資させないという制限を設けることは難しかったのではないかと思われます。

また、新NISAの内容に関しては、制度についてはシンプルな方が良いため、最初は何の制限も書けなかったことが1つの正解といえる、ともされています。

特に、日本人は投資を始めることに対して心理的ハードルが高いと言われているため、新NISAは抵抗を解消できるという点で優れた制度とも考えられているのです。

しかし、投資を始める人が増えている一方で、問題となっているのは円安であり、歯止めをかける方法は悩みどころとなっています。

解決策の1つとして考えられているのが、現在の投資枠に加えて国内投資枠を新たに設置するという案です。

国内への投資に対して枠を設け、何らかの形で優遇すれば、将来的には海外への流出を抑えることができるのではないか、と考えられています。

日本でNISAを制定するのに参考としたイギリスのISAでも、同じような内容の改革案を検討しているため、今後前例になるのかという点が注目されているのです。

円安はいつまで続くのか

2024年から始まった新NISAは、米国債利回りの上昇を抑えて今年起こると言われていた円相場の反発を遅らせることになった、という意見もあります。

新NISAが始まったことで、2024年はさらに5円の円安になるという見立てもあり、実際に1月は1円の円安になっているのです。

今年末までに円は上昇するはずと言われていたのですが、実際には1月以降で7%近く下落しています。

米国の早期利下げ観測が後退した反面、日本では新NISAが開始され、マイナス金利解除後も低金利政策は続くと見られています。

マイナス金利解除で大幅利上げは無理

海外への資金流出は予想を超えていて、為替市場にも大きな影響を与えると予想されています。

足元の円安圧力がいつまで続くのかという点には議論の余地があり、ヘッジファンドや資産運用会社は円安のポジションを増やしつつあるのです。

マイナス金利に関しては数か月以内に日銀が解除する可能性が高まっていて、米連邦準備制度理事会も年内には利下げに踏み切ると予想されています。

新NISAが始まったことは、日米中央銀行のそれぞれの政策変更の境となる時期に一定の影響を及ぼしているのです。

日本の個人投資家による、投資信託を経由した海外株式や投資ファンドへの買い越し額は、1月に約80億ドル、日本円で1兆2千億円と過去最高に達しています。

2月になると新NISAへの資金流出が1月の半分ほどにとどまりましたが、積立投資などの定期的な流入が将来の円高に歯止めをかける可能性があるのです。

NISAの拡充による資金の動きは、年内に日銀や主要10か国の金融政策が分岐点を迎えるという多くの投資家による見立てを変えることはありません。

投資家がすでに円の動きに不安を抱えている状態で、新NISAが開始されたとしてもネガティブな理由にしかならないのです。

円安の動きを止めることはなく、どちらかといえば円安を促進することになりかねません。

しかし、一方では円に対する評価が過少であり、日本人が海外株式をヘッジ無しで保有しているとリスクがあるとも考えられています。

市場関係者の予測では、年末までに円高が進み140円を切るのではないかと言われているため、今後の動きには注意が必要でしょう。

まとめ

2024年から始まった新NISAは、現在急激に進む円安に大きな影響を与えていて、実際に新NISAが始まったタイミングで海外への投資が急増しています。

日本の政策金利においてマイナス金利は解除される予定があるのですが、たとえ解除されたとしても円安を食い止めることは難しいでしょう。

しかし、市場では円に対する評価が高いため、今後は円高の動きが起こり、年末までには140円を切るという予測もあるのです。