個人年金保険は一括受け取りと年金受け取りどっちがいい?

社会保険制度(年金/医療/雇用/労災/介護)

国民年金だけでは将来が不安という人は、将来への備えとして個人年金保険に加入していることがあります。

しかし、個人年金保険を受け取る時は、一括受け取りと年金受け取りのどちらが良いのでしょうか?

また、一括受け取りと年金受け取りは総額などが違うのでしょうか?

個人年金保険の受け取り方について、解説します。

個人年金保険の受け取り方で何が変わる?

個人年金保険は、毎月積み立てて将来受け取ることができるため、貯金代わりに利用している人もいます。

しかし、個人年金保険を受け取る際の方法には、一括受け取りと年金受け取りの2つの方法があるのです。

一括受け取りは、受け取ることができるようになった60歳の時点で、全ての保険金を受け取るという方法です。

一方、年金受け取りというのは、受取額を分割して、一定期間毎月受け取っていくという方法のことをいいます。

一括受け取りと年金受け取りでは、受け取ることができる総額が異なり、所得税も変わってくるため、一括受け取りの方がおすすめです。

なぜ、毎月もらえる年金受け取りより、一括で全て受け取る一括受け取りがおすすめなのか、例を挙げて解説していきます。

30歳で個人年金保険に加入して60歳になったら受け取る場合、受け取る金額は今まで支払った分に若干プラスされた金額です。

毎月2万円ずつ支払っていた場合は、30年間の合計で720万支払っており、受け取る金額は40万円ほど増えて760万円くらいになるとします。

もし10年間の分割でもらった場合、1年間で80万円、毎月6~7万円ほどもらうことになるでしょう。

トータルで800万円もらえることになるのですが、一括であれば760万円になる場合は、どちらがいいのでしょうか?

単純な額面であれば分割の方が良いのですが、税金のことを考えたら事情は変わってきます。

お金をもらったら所得税がかかるのですが、一括で受け取った場合は一時所得となるため、分割払いとは計算方法が異なるのです。

一時所得は、総収入金額から必要な支出を引き、さらに特別控除額の50万円を引いた金額が課税対象になります。

上記の例の場合、総計で720万円を支払い、760万円を受け取ることができるため、差し引きは40万円です。

特別控除で50万円を差し引くことができるため、課税対象の金額は0円となり、納税の必要はなくなります。

一方、分割でもらう場合ですが、実は毎年80万円を受け取ったという申告をしなくてはならないのです。

また、申告する際は納めた保険料も申告する必要があるのですが、申告する際は1年間で24万円を納付したという計算ではいけません。

30年間納付して10年間でもらうので、毎年3年分の72万円で申告しなくてはならないのです。

つまり、毎年の保険金の利益は8万円となり、雑所得として計算されることになるのです。

なぜ一括受け取りの方が良いのか

受け取り方によって金額は変わるのですが、分割でもらった方がトータルでもらえる金額は多くなるのです。

しかし、どちらがおすすめかといえば、一括受け取りの方になるのですが、なぜ一括受け取りの方がおすすめなのでしょうか?

毎年80万円ずつもらえる場合、毎月分割で支払われることとなるため、手元にはまとまった金額が来ません。

しかし、一括受け取りの場合はまとまった金額が来るため、受け取った後は再び財産を増やすため、資産運用ができるのです。

資産運用に成功すれば、10年間で760万円を900万、1,000万円と増やすことができるかもしれません。

もちろん、資産運用は絶対に増えるとは限らないのですが、安定した運用をすれば増やせる可能性は高いため、一括で受け取るのがおすすめとなるのです。

また、分割で受け取った場合は所得となるのですが、他にも所得があったり公的年金を受け取ったりしていると、住民税の非課税枠を超える可能性があります。

非課税世帯になると多くのメリットがあり、介護費用や医療費などがかなり安くなり、給付金を受け取れることもあるのです。

しかし、分割で個人年金保険を受け取ることで、メリットは失われてしまう可能性があります。

また、国からもらう年金を受け取る年齢を5年遅らせると、以降の年金額は42%増えるため、一括で受け取った分を年金代わりにして遅らせるというのもおすすめです。

国民年金保険料の納付は60歳までですが、公的年金を受け取るタイミングは原則として65歳からとなっています。

しかし、繰り上げ受給や繰り下げ受給というものがあり、受け取るタイミングは60歳から75歳の間で受け取ることができるのです。

繰り上げ受給の場合は、繰り上げた月数の0.4%が減額されるため、62歳から受け取る場合は14.4%減額されて支給されることになります。
一方で、繰り下げ受給の場合は繰り下げた月数の0.7%が増額されるため、5年間繰り下げると42%増額されて支給されるのです。

繰り上げ受給の場合は、長く生きるほど減額されている影響が表れやすいため、生活は徐々に厳しくなっていくでしょう。

一方、繰り下げ受給の場合は増額された分を長く受け取ることができるだけお得となるため、長生きするとメリットはさらに大きくなります。

自分が何歳まで生きるのかは誰にもわかりませんが、どちらを選ぶにしても後悔が無いよう、よく考えたうえで選んでください。

なお、平均寿命から計算した場合、65歳から受け取った場合を100として計算すると、60歳から受け取った場合は76、68歳からだと125となります。

71歳からであれば150、75歳からなら184となっているため、健康であれば定年後の再就職も考えてみるべきでしょう。

ただし、遅らせればいいというわけではないため、悩んだ場合は通常通り65歳から受け取った方が良いかもしれません。

まとめ

個人年金保険を受け取る際は、一括で受け取るか分割で受け取るかを選ぶことができるのですが、おすすめとしては一括での受け取りです。

分割で受け取った方がトータルで受け取ることのできる金額は大きくなりますが、一括であれば受け取ったお金を資産運用して、さらに増やすことも考えられるのです。

また、一括で受け取ることで年金を受け取るタイミングを遅らせると、もらえる金額が増えるというメリットもあります。