中小企業が従業員の退職金を確保することは、従業員の働く意欲やモチベーションを向上させ、企業経営の発展にも繋がると考えられます。
在職期間中の貢献に対する功績、さらに老後の生活を安定化のためにも制度を整備することを検討している経営者もいるでしょうが、会社の立場で見た場合にはこの従業員の退職金制度には色々なリスクや問題点が存在しています。
退職金制度の方式
退職金制度を検討する際には、方式の種類によって退職金の算出方法が異なります。それぞれどのような算出方法なのか、問題点やリスクなどについて確認しておきましょう。
・基本給連動方式
一般的に多くの企業が採用している方式で、退職金は「退職時の基本給×支給係数」で算出します。この支給係数は勤続年数に応じて変わります。
仕組みが簡単なので採用しやすい方式なのですが、毎年昇給制度がある企業などは何十年先の基本給まで想定できず、実際の退職金がいくらになるか計算できません。
また、賃金が下がると連動して退職金も下がることになるため、いざという時に賃金の引き下げを検討すると従業員からの反発を受けやすい状況になってしまいます。会社が自由に賃金の設計ができなくなるといったことが問題になるでしょう。
・定額方式
勤続年数によって退職金の額が決まる方式ですが、例えば20年勤務すれば400万円、30年なら500万円といった決め方を行います。
受取ることができる退職金は勤続年数と連動するため、いくら退職金が必要になるかわかりやすいというメリット、さらに基本給と連動しないことで賃金の設計が自由にしやすいというメリットもあります。
ただしこの方式は在職中の貢献や功労などは反映されていませんので、機械的に退職金を支給するという形になってしまう可能性があります。
・ポイント付与方式
役職ごとに設定されたポイントを付与していき、退職時に貯まったポイントに単価を乗じて退職金を算出する方式です。
役職が高くなればポイントも高くなるため、従業員が昇進を目指すためのモチベーション向上には繋がるでしょう。さらに基本給と連動しないことで、賃金設計の自由も遮断されません。
ただしポイント設定の妥当性が求められることや、ポイント管理の手間がかかるといった部分が問題です。
自社に一番合う退職金制度方式などの導入が重要
従業員の退職金制度をどのように決めて行くか、導入したいけれどどうすれば良いかわからず悩む経営者も多いようです。
その理由として、先に述べたようなリスクや問題が隠されていることが挙げられますが、自社にとって一番良い方法を選択することが望ましいと言えるでしょう。
また、退職金準備の方法として中退共や生命保険の活用などを検討することになりますが、どの方法を選択するかもやはり企業の経営スタイルなどに合ったものを選ぶことが必要になります。
一度決めたら変えなくて良い方法を選ぶこと
退職金制度は会社が自由に設計できますので、一度決めたら変えることはできないというわけではなくいつでも見直し可能です。
しかし何度も途中で変更してしまうと、従業員からの信用を失い働く意欲やモチベーションを低下させることに繋がりますので変更しなくて良い方法を選ぶことも必要です。