従業員にとっては最終目標にもなる退職金の存在
企業が社員など従業員を大切にしているかどうかの目安は福利厚生の充実さが基準になるでしょう。日本は高齢化が進む中で、将来リタイアした後に退職金がもらえるかどうかは大きなポイントになります。優秀な人材には長く働いてもらいたいと思う企業にとって、退職金は重要なアイテムとなります。
自力で資金を貯めることは困難
ただし退職金としての資金と他の資金とを区別することが難しく、さらには利益の中から貯めていくことで法人税が発生します。そして貯めた退職金を従業員に支払う際には多額の損金を計上することになるというデメリットが発生するため、中小企業が従業員のための退職金を自力で貯蓄すること難しいでしょう。
福利厚生を充実させるための退職金の適切な貯蓄方法
従業員の退職金準備のために適切な方法で貯蓄を行うために必要なのは、
① 退職金用の資金を会社資金と区別しながら積み立てる方法であること
② 金額の一部もしくは全部を損金算入できる方法であること
③ 退職金支払時に益金計上可能な方法であること
これらが組み合わさった方法で貯蓄できることがベストです。
中小企業が利用しやすい公的制度
中退共が運営する制度に「中小企業退職金共済」があります。事業主が掛け金を出し合って国がその一部を助成するという運営方法が行われているためリスクが低いという特徴があります。
また、掛金の全額が損金算入されますし、国や地方自治体から助成を受けることもできます。加入する手続や退職金を支給する手続も簡単ですし、退職金支払時には直接中退共から従業員に支払いが行われるため会社の損金に影響がありません。また、加入できる中小企業の範囲も広いことから検討がしやすいというメリットもあります。
中小企業退職金共済のデメリット
中小企業退職金共済からの退職金の支給は、加入して11か月目まで支給が行われないということ、12か月目から23か月目に関しては総額を下回った額の支給になります。最短でも24か月という期間が必要になります。
また、加入した後に企業業績が悪化すれば当初予定していた掛金を減額したくなるというケースも発生するかもしれません。その場合には従業員の同意を得るか、厚生労働大臣からの認定が必要になるため減額の手続が面倒です。
そして退職理由を問わずに従業員へ必ず支給させるという性質のもののため、例え懲戒解雇した場合でも支給は行われます。減額は可能でも減額した分の掛金は没収されてしまいます。
民間の保険を利用する方法も
中小企業退職金共済は公的制度ですが、民間の保険会社の養老保険や終身がん保険などを福利厚生プランとして利用することもできます。従業員の福利厚生を充実させ、リタイア後にはしっかりと退職金がもらえるということであれば企業の士気向上にも繋がるでしょう。