日本では現在慢性的な人材不足に陥っており、ほとんどの企業が計画通りに人材の確保ができていない現状です。
そういった状況の中でも人材確保ができるように、政府は働き方改革の一環として副業・兼業を推進しようとしています。
そこで今回は雇用環境を改善していく中で、副業・兼業がどのような役割を果たすかについてご紹介させていただきます。
なぜ副業・兼業は禁止されていたのか?
2018年3月に政府が発表した働き方改革実行計画の中で、「合理的な理由がない限り副業・兼業を認める方針を周知し、企業向けの指針を策定する」と述べられています。
このことからも、現在は副業・兼業が解禁する流れになっていることがわかります。
そもそもこれまでなぜ副業や兼業は禁止されていたのでしょうか?
おそらくこの記事を読んでいる方の企業でも、副業・兼業が禁止されているケースがほとんどではないでしょうか?
実際、全国の商工中金取引先の中小企業を対象としてデータによれば、現在従業員の副業・兼業を容認している企業はたったの7.6%しかいないようです。
しかし、実は労働基本法で副業や兼業が禁止されているという訳ではなく、厚生労働省の「モデル就業規則」で副業・兼業が原則禁止となっていたのです。
そして今回の働き方改革を実行していくにあたり、このモデル就業規則が変わります。
働き方改革では、「副業・兼業の推進に向けたガイドラインや改訂版モデル就業規則の策定」を行うことを挙げており、これまでの原則禁止だったものが原則容認へとモデル就業規則が改定されるのです。
副業・兼業を解禁するメリットとは?
では、実際副業や兼業を解禁するメリットは何でしょうか?
一つは、最初にも申し上げたように働き手の確保があります。
副業や兼業を解禁すれば、人材の流動性はより高くなり、一人の人材が複数の企業で働くなんてことが普通になります。優秀な人材ほどそういった傾向にあるでしょう。
また、これまで新たなチャレンジをするために退職していたような人にとっても、会社にいながらチャレンジができることから離職率低下にもつながり、結果的には働き手確保となります。
現在の日本では、少子高齢化が加速しており、向こう10年で800万人の労働力が失われると言われております。
そういった状況の中でも会社運営をしていくためには、副業・兼業解禁は当然の流れと言えるでしょう。
また、副業・兼業を解禁することは副産物を多く生み出します。
例えば、本業で得ることができない経験やスキルを習得することができるということです。これは、企業にとっても非常に大きなメリットと言えます。
例えば、あなたが経営者だった場合、一つの会社しか知らない社会人3年目の人材と、会社経営も行なっている社会人3年目の人材、どちらの価値が高いと考えるでしょうか?
答えは簡単で、後者です。
副業・兼業解禁ではこのような人材が社内増える可能性が高く、結果的に会社での働き方に還元されるのです。これはスキルだけの話ではなく、考え方についても同様です。
副業で企業をしている場合は、通常の従業員と比べてより広い視野で会社を見ることができます。そうすることで、今自分が求められてることは何かを自分で判断して行動を起こせるようになります。
他にも、副業や兼業でできた人脈が自社に生きてくるケースもございます。
これまで自社だけではできないと思っていたことも、その人脈がきっかけで新たなイノベーションが生まれることもあるかもしれません。
また、副業や兼業解禁はモチベーションの維持にもつながります。
自分のやりたいことが明確にある人にとっては、日常の業務は我慢の連続です。
しかし、だからと言ってやめてしまうと収入がなくなってしまうので、一歩踏み出すことができない。このような人は非常に多く存在します。
しかし、こういった人材は結果的に低いモチベーションで日常業務に取り組むことになるため、企業にとっては非常にデメリットな存在です。
これからの時代、働き手が限られていることから従業員一人一人の生産性をどれだけ高められるかが非常にポイントですから、モチベーションの維持は非常に重要です。
だからこそ、副業・兼業を解禁することで、自分のやりたいことにチャレンジもできますし、副業で身につけたスキルが既存業務で役に立つなど、これまでなかった新たな刺激を日常的に感じることができるようになるのです。
副業・兼業解禁の課題とは?
副業・兼業解禁を検討する上で、必ず考慮しなればならないことがあります。
それは、成果への合意です。
副業や兼業を行うことは、ある意味ではこれまでの労働時間を分配していくこになります。
つまり、より短い時間で成果を出す必要があるのです。
そういった意味で、副業・兼業はOKとしながらも、既存業務でどんな成果を残さないといけないかについては事前に明確にしておく必要があるのです。
このような点に注意して、ぜひ副業・兼業解禁を前向きに検討頂ければ幸いです。