経営者が認知症・・・任意後見人制度

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経営者の高齢化が進む現代において、経営者が認知症となってしまい、問題となる事態が増えています。
そこで今後は、認知症となる高齢者の割合も増えていくと予測される中、問題解決に向けた対策も色々と考えられているのです。
その対策となるうちの一つが任意後見人制度なのですが、これはどういった制度なのでしょうか?

任意後見人制度とは?

任意後見人制度、もしくは任意後見制度というのは、判断能力がある状態で自分の後見人をあらかじめ定めておき、何かあった時には様々なことを代行してもらう制度です。
誰を定めるのかは自分で選ぶことができ、選定の際は契約を結ぶこととなります。

契約の内容についても、自分で定めることができます。
任せる権限の範囲としては、通帳の管理や年金の受け取り、預貯金の取り扱い、税金の支払いなどが一般的ですが、会社の経営者の場合はこうした個人的な財産だけとは限りません。
会社の経営に関することも、後見人として代行してもらうことができるのです。

会社の権利として、最も重要な点は議決権についてです。
中小企業などでは、経営者が最も多く株式を保有していることが多いため、議決権についてもその多くを経営者が持っていることになります。
しかし、その経営者が認知症となり、正常な判断ができなくなった場合はどうなるでしょうか?

特に問題となるのが、経営者が過半数の議決権を持ったまま認知症となった場合です。
過半数の議決権を持ったままで判断能力が低下してしまうので、経営に関して何も決めることができなくなります。
株式の売買や譲渡についても制限がかかるため、家族であっても勝手に取引できない事が多いのです。

そのせいで、会社の経営がピンチになってしまう事態は少なくありません。
そういった事態を防ぐために、あらかじめ任意後見人を定めておくことが大切となるのです。

任意後見人制度を利用するには、任意後見契約を結んでその内容を公正証書にしておき、
後見が必要となった際には、裁判所へとそのことを申し立てます。
そうすると、裁判所が任意後見監督人を選任するので、それからその権限が有効となります。

後見人は、専門家でも親族であっても問題ありません。
また、後見へと支払う報酬についても、任意に定めることができます。
任意後見人制度を利用することで、会社の経営もスムーズに進むでしょう。

任意後見制度と成年後見制度の違い

後見制度には、任意後見制度の他にも成年後見制度というものがあります。
任意後見制度と成年後見制度にはどのような違いがあるのでしょうか?

最も大きな違いは、成年後見制度は認知症などで判断能力が喪失してから裁判所に申し立てるという点です。
その際の申し立ては、本人が無理な場合は家族などが代理で行うことができます。

そして後見人が選定されるのですが、後見人については裁判所が、専門家である弁護士や社会福祉士などから選任します。
また、親族や知人は選定の対象外となります。

成年後見制度の場合、本人の状態に合わせて3つの種類があります。
最も多くの権利を代行できるのが、法律行為を代行し、日常的なものではない契約などは取り消すことができる後見となります。
それよりも症状が軽い場合は、保佐、補助と続きます。

任意後見と異なり、自分でこれを任せたいということを細かく選ぶことができないため、自由度は低くなります。
また、後見人に支払われる報酬については、裁判所で決定するという点も異なります。
可能であれば任意後見人制度を利用した方が良いでしょう。

まとめ

あらかじめ任意後見人制度を利用して後見人を選定しておくと、経営者が認知症となっても経営に支障が出にくくなるでしょう。
成年後見制度とは違い、後見人は任意の人物を選定することができ、尚且つ後見人が持つ権限の範囲についても定める事ができるので、自由度が高いのが特徴です。
その権限が使われるのはあくまでも経営者が判断能力を失ったとみなされた時点からですので、もしもの時に備えて任意後見人制度を活用しましょう。