多くの企業が人手不足に悩んでいる現在、求職者も重視するポイントが変化してきています。
有効求人倍率がかなり高くなってきたこともあり、求職者は福利厚生を重視するようになってきたといわれているのですが、具体的にはどのような点を重視しているのでしょうか?
人材確保につながる福利厚生とはどのようなものか、考えてみましょう。
なぜ、福利厚生が重視されているのか
そもそも、なぜ求職する人の多くは福利厚生が充実した企業を希望するのでしょうか?
求職者が福利厚生の充実を求める意味について、考えてみましょう。
以前は、給与が高い企業を希望する人が非常に多かったのですが、最近考えられているのが、ワークライフバランスです。
つまり、どれだけ働きやすい企業なのか、という点が問われるようになっているのです。
仕事に没頭するような働き方をしたいという人は減り、現在はプライベートの時間を確保しながらも、仕事にやりがいをもって取り組むことができる働き方を希望している人が増えています。
たとえ給料が高くても、プライベートの時間が無くなるような企業はブラック企業と呼ばれてしまい、早期に退職してしまう可能性が高くなるリスクを抱えることになってしまいます。
そのような会社を避けるためにも、求めることが変化したといえるでしょう。
もちろん、企業にも求職者に求める働き方があります。
求職する人と企業、双方が納得のいく勤務条件で、気持ちよく仕事ができるような環境が整っているのが、長く働くことができる企業となる第一歩だといえるでしょう。
福利厚生が整っている企業は、それだけ社員のことを考えている企業だといえるでしょう。
以前であれば、法定福利厚生といわれるものだけでも十分でしたが、現在では当たり前となっていることで、それ以外の法定外福利厚生が重視されるようになっています。
法定福利厚生というのは、社会保険制度などの法律によって定められているものです。
例えば、健康保険料や介護保険料、厚生年金保険料の一部負担、労災加入、児童手当拠出金などがこれにあてはまります。
こうしたものは、費用のうち一定の割合を会社側が負担することと法律で定められていて、法律の順守を掲げる企業にとっては守らなくてはいけないものです。
これをやっていれば十分なのではなく、これが最低限の福利厚生なのです。
これ以外にも、企業が独自に導入している福利厚生があり、それを法定外福利厚生といいます。
これは、企業によって様々なものがありますが、いずれも社員のためを思って導入するものです。
例えば、家賃補助や住宅手当の支給についても、これにあたります。
また、実は通勤費も法定外福利厚生にあたるのです。
家族手当や健康診断補助などを導入している企業もあります。
わかりやすいのが、社員食堂の導入でしょう。
大企業でなければ成り立たないでしょうが、これは福利厚生としてわかりやすいものであり、味や値段、種類などが十分でなければ利用する人が減ってしまうので、常に工夫が必要となるものでもあります。
他にも、勤続年数に応じた表彰や、財形貯蓄制度、社員持ち株制度などが最近の福利厚生として注目されているものです。
こうしたものは、必ずしも自社ですべてやるというものではなく、外部に委託している場合もあります。
注目される福利厚生
福利厚生の中でも、特に注目されるものがあります。
それは、需要が高いものと、他社とは異なるユニークなものです。
後者については、ユニークであっても役に立たないものでは意味がないので、同時に需要があるものではなくてはいけません。
需要が高い福利厚生として、特に希望する人が多いのが子育てサポートです。
女性の社会進出が進んでいる現在でも、結婚する人がいないわけではありません。
ただ、結婚したから退職するのではなく、結婚後も働き続けたいと希望しているからこそ、子育てサポートが充実している企業が人気となるのです。
子育てのことを考えた福利厚生として、まずは勤務時間の短縮が考えられます。
妊娠中だけではなく、子どもが小学校を卒業するころまでは、フルタイムで働くのが厳しくなるでしょう。
そこで、その時間のうちコアタイムを決め、それ以外の時間は調整を可能とする勤務体制とするのです。
もちろん、残業も断ることができます。
仕事内容もその勤務体制に合わせたものとなりますが、閑職に追いやるのではなく、周囲がサポートできるような体制を作り上げるように考えましょう。
会社に託児所などを用意できれば安心して働けますが、それが難しい場合でも会社が託児所やベビーシッター、保育園などと提携して、優先的に利用できるようにしたり、保育料を一部補助したりする福利厚生も求められています。
特に、現在は仕事に復帰したくても、保育園に空きがないため働けないという母親も少なくありません。
会社が協力して、保育園の確保に動いてくれれば安心して働くことができるでしょう。
時間の都合はつけやすいものの、個人で利用するのは負担が大きいベビーシッターも、会社がその料金を一部負担してくれれば利用しやすくなります。
その際は利用料だけではなく、入会金や年会費がかかる場合もあるので、それらの補助も必要となるでしょう。
子育て中に困るのが、子どもがけがや病気などで看病しなくてはいけないときに、有給休暇を使い果たしてしまっている場合です。
その場合、子どもの看護の休暇はまた別にして、休暇の取得が可能なようにしておくといいでしょう。
また、子どもの学校行事などで親も参加するものについて、仕事のために泣く泣く参加を見送ることになった方もいると思います。
こうした行事や記念日などの時は、優先して休暇をとれるような制度を設けておくことも求められています。
ユニークな福利厚生も、様々なものがあります。
例えば、会社にこもりがちとなってしまう人が多い企業で導入されている、色々な人とのコミュニケーションをとることやフィールドワークなどを行うために、毎月1日は外出・直帰を奨励する制度はユニークと言えるでしょう。
あらかじめ目標を申請して、その目標が世間的に認められる形で達成できたときに、社長から褒章をもらえるという制度もあります。
この場合は、オリンピックの出場や賞の授与だけではなく、ギネス認定や雑誌掲載など様々な目標が設定可能です。
禁煙となっているオフィスが増えている現在は、禁煙宣言することで祝い金を支給して、さらにその後は禁煙手当を毎月受け取れるという企業もあります。
禁煙を続ける限りは手当が支給されることとなりますが、どうやって禁煙を続けているのか判断するのかはわかりません。
社員同士が2人以上でランチに行った場合、そのランチ代を会社が全額支給するという会社もあります。
また、大切な人の誕生月などに年1回特別休暇を申請でき、さらにプレゼント代の補助も受けられるという福利厚生もあるのです。
様々な形で、社員が求めるものの後押しや、目標達成の助けとなるような福利厚生が考えられています。
こうした福利厚生は選ぶための絶対的な基準ではないものの、印象に残りやすいので求職の際に好印象を持たれることが多いでしょう。
まとめ
最近では、求職者が重視する点として企業の業績が安定していることよりも、福利厚生の充実が上位となることが増えています。
長く働ける企業を探している求職者にとっては、社員の生活を幅広くサポートしてくれる福利厚生が最も大切なポイントとなりつつあるのです。
中には一般的なものにとどまらず、社員のことを考えたユニークな福利厚生制度を設けている企業もあり、そういった企業には多くの注目が集まるでしょう。