中小企業の倒産リスクは、人手が足りないという理由だけではありません。
経済状況が関係している等、複合的な要因が重なってしまっていることがほとんどでしょう。
中には、融資が困難になったことがきっかけとなる場合もあります。
皆さんは、中小企業倒産において「返済猶予後倒産」があるという事を、知っていますか?
どのような事情で倒産するのか?
企業の規模に関わらず、事業を行うためには資金が必要になります。
大企業の場合は、株式を発行したり、銀行からの融資が得られやすかったりと、資金集めに苦労することが少ないかもしれません。
しかし、中小企業の場合を考えてみて下さい。
資金を集めるにしても、苦労している場合がありますよね。
資金集めでお世話になることが多いのは、銀行からの融資になり、資金繰りで相談をしている経営者もいるでしょう。
融資によって経営が上手くいっているならば、銀行側も安定して返済ができると考えますから、問題はないですよね。
ですが、経営が厳しく、返済もままならないような状況だとどうでしょうか?
追加で融資を得たいと言われても、銀行側からすると、返済が滞ってしまう可能性がありますから、容易に貸し出すことはできませんよね。
このように、追加融資が受けられず、事業の立て直しができなくなった末に倒産してしまうことを、「返済猶予後倒産」と言います。
特に、地方の中小企業では経営が綱渡り状態で、融資が得られているからこそ何とかなっている企業もありますよね。
そのような中小企業にとっては、融資が受けられないことは致命傷になってしまいます。
返済猶予後倒産になってしまう中小企業は年々増加傾向にありますから、経営者にとって他人事ではないでしょう。
なぜ、返済猶予後倒産が増加するようになったのか?
返済猶予後倒産になってしまう中小企業は、金融機関から見ると、倒産予備軍という位置づけになっています。
しかし、予備軍と言われながらも、何とかやってきたのは経営陣の努力だけではありません。
実は、政策的な事情も関係しているのですが、2009年に制定された「中小企業金融円滑化法」を聞いたことはありませんか?
これは、リーマンショック後の中小企業に対して、経営における資金面での支援を行うために作られた法律になります。
内容は、金融機関が融資する際に、返済にかかる負担を金利や返済猶予等を通して軽くするもので、経営に対しての不安を軽くする処置になるでしょう。
法律自体は2013年に終了したのですが、申し込みはその後も続き、支援を求めている中小企業の支えとなっています。
一見すると、悪い内容には見えませんが、ある問題点を孕んでいることに気付けるでしょうか?
実は、支援の承諾の裁量は各金融機関に委ねられているのですが、融資にリスクがあると分かっている企業であっても、承諾してしまっている事実があるのです。
その背景には、承諾数を金融庁に報告する義務があり、承認数が多いほど実行されているという印象を伝えることができますよね。
省庁への印象を良くするということで承諾してしまうと、当然制度上に無理が生じてきてしまい、運用に悪循環を生みだしてしまいますよね。
結果として、経営状態が改善されず、返済状況もままならないような中小企業を生み出してしまったということになるでしょう。
加えて、2019年の3月に実質的な運用が終了されたため、残った中小企業は自分でどうにかしなければならない状況になってしまいました。
融資の継続等で悩んでいる背景には、このような法律の存在が関係しており、中小企業だけでなく金融機関も悩ませている状況にあるでしょう。
参考URL新日本法規
(https://www.sn-hoki.co.jp/articles/article123976/)
まとめ
返済猶予後倒産は、これから先も増えていきます。
現状では何とか経営がなされている企業であっても、金融機関からの融資・支援が切られていないからという事情もあります。
本来ならば、金融機関は不良債権の処理を行わなければなりませんが、地方の金融機関はそこまでの資金的な体力はありません。
倒産予備軍との関係をいつまで続けるのかは、やはり金融機関次第と言えるかもしれませんね。