ここ数日、原油価格に関する話題を聞き、驚いた人もいるでしょう。
今の情勢の中でなぜ価格が変わったのかと、疑問に感じませんか?
世界の動きが大きく変動している中、今回は注目度の高い、原油価格下落の話題についてお話ししたいと思います。
その背景には何があるのでしょうか。
原油価格の下落の状況には何が関わっているのか?
地方にお住まいの方にとっては、車は大事な移動手段になります。
そのため、毎月のガソリン代を気にしてしまう人も多いですよね。
まずは、なぜ原油価格が下落している状況なのか、関連する2つの要因を解説しましょう。
・新型コロナウィルスによる工場等の稼働停止
価格が下落した要因の1つは、みなさんもお分かりの通り、新型コロナウィルスの影響です。
しかし、国内事情からすると、あまりピンとこない人もいるかもしれません。
大きな要因は、中国における工場の稼働率にあり、感染が確認されてから拡大を防ぐために仕事がストップしましたよね。
中国には、日本だけでなく世界の企業の生産工場が設けられていますので、稼働していると大量の原油が使われることが予想できるでしょう。
それがストップするということは、本来使用されるだろう原油が余ってしまうことになりますよね。
そして、世界中に新型コロナウィルスの感染が拡大した今、中国に限らず、生産活動をストップしているところは多くあります。
さらに、航空機の利用ができない状況にあるため、燃料の使用がされていない状況になるでしょう。
つまり、現在は原油が余ってしまっている状態だと思って下さい。
供給が多い一方で需要が少なくなると、当然価格は下がってきます。
その結果、現在のような価格が下がっている状況になっていると思っていいでしょう。
私たちにとっては、安くて助かる!と思ってしまいますが、その一方でこの状況を好ましいと思っていない人たちがいます。
それは、一体誰でしょうか?
・OPECプラスの交渉~現状を打開するための交渉が…~
新型コロナウィルスの流行の背景に、OPECを含めた産油国の国々ではある議論がなされました。
原油価格が下落すると、その影響は産油国を直撃することになりますよね。
やはり、原油価格が低いと得られる収入も少なくなってしまいますから、産油国としては利益が得られるように調整したいところです。
そのため、OPEC加盟国と、主要産油国でも非加盟の国々との間で設けられたOPECプラスでは、原油の産出量を調整する「協調減産」の関する交渉が行われたのです。
しかし、この交渉は決裂してしまいました。
結果、原油の産出量を少なくするように調整することができず、今までと同じ分量で産出するため、余計に原油が余る状況になってしまうでしょう。
つまり、OPEC関連の調整が上手くいかなかった結果として、原油価格の下落が発生したと考えることができますよね。
しかし、ここである疑問を持つ人がいるかもしれません。
それは、いくら新型コロナウィルスの影響が予測できないものだとしても、原油価格を低いままで産油国がそれをよしとするとは考えにくい、ということです。
産油国にとってはやはり、収入分が多くなるように高値にしておくことが望ましいでしょう。
ですが、なぜこのような考えが全ての産油国で認識されなかったのでしょうか?
産油国の立場で考えると、不思議に思いませんか?
実は、こうした事態になってしまった背景には、OPECだけでなく、そもそもなぜOPECプラスという仕組みを作ったのかが関係しています。
次の項目で、OPECに関連するここ数年の状況を解説しましょう。
全ての産油国にとってのメリットとは何か?~原油を取り巻く状況から~
協調減産が上手くいかなかった背景には、現産油国の思惑が見え隠れしています。
その前に、そもそもOPECプラスという組織がなぜ登場したのが、その部分について少し触れておきましょう。
OPECプラスと呼ばれる組織には、OPECに加盟していないロシア等の国を含めた国が所属しています。
そのため、「プラス」という表現になっていると思って下さい。
しかし、非加盟国である国がなぜ協力関係になろうとしたのか、理由がなければ協力しようとは思いませんよね。
実は、ある国に対抗するために手を結んだ事実があることを聞いたことはありませんか?
・アメリカとの市場の関係性
現在の主要産油国は、一般的に西アジアの国々が多いですよね。
例えば、サウジアラビアは馴染みのある国の一つになるでしょう。
しかし、産油国のグループの中に、アメリカはカテゴリーされていませんよね。
実は、この国同士の関係性もちょっとしたポイントになってくるのです。
他の産油国と比べると、アメリカはそこまでメジャーな国として聞こえてきませんよね。
しかし、その見方がここ数年で一気に変わったことを知っていますか?
それは、「シェールガス革命」と呼ばれる、原油に関するちょっとした革命がおこったのです。
一般的な原油と何が違うのか、と疑問に思う人がいるかもしれません。
ここで少し、シェールガスについて触れておきましょう。
これは、従来ならば産出が困難だった「シェール層」という場所から産出できた原油や天然ガスのこと言います。
今までの産出方法や場所では、資源に限界が出てしまいますよね。
資源には限りがありますが、新しい場所から産出できるとなると、話は違ってくるでしょう。
困難な場所での産出を可能にしてしまったアメリカは、市場内で有利な立場に立つことになります。
しかし、当然ながら他の産油国はこの状況を面白く思いませんでした。
そうなると、アメリカに市場にいてもらっては困りますから、摘まみだすための理由が必要になってきますよね。
その際の理由として、他の産油国同士で協力し合い、原油価格を調整するという動きを取り始めたのです。
アメリカからこの状況を見ると、他の国々は価格決定に歩幅を合わせていますから、自国が浮いてしまうことになりますよね。
周囲から浮く、というのがOPECプラスの国々の目的です。
水面下で、叩き潰せる機会を伺っていたとも言えるでしょう。
・現状の変化をロシアが納得しなかった
今回の価格下落のきっかけを作ったのは、ロシアです。
産油国に協力的だったロシアが、なぜここで交渉に応じなかったのでしょうか?
その理由は、先程ご説明したアメリカとの関係にあります。
今までは、他国と協力することでアメリカの市場への介入を最低限に留められていました。しかし、その手を緩めてしまってはどうなるでしょうか?
隙を見せてしまっては、介入されてしまう恐れが十分にありますよね。
その結果、今まで保っていたシェアバランスが一気に崩れてしまいかねません。
つまり、交渉内では自国の利益を守るか、アメリカ対策を強固にすべきかで考えが分かれてしまったと言えるでしょう。
特にロシアは、アメリカに対して様々な分野で対抗している事実がありますよね。
そのため、事情はどうであれ、手を引いてしまうということに抵抗があったのです。
世界中の混乱も一大事ではありますが、原油に関する状況も重要事項だと考えていたのかもしれません。
これらの事情から交渉に関しては、上手くいかなかったのです。
サウジアラビアを始めとする産油国にとっては、残念な結果だったと思いますが、パワーバランスの維持を考えるとそうはいかなかったのでしょう。
もちろん、現状を鑑みた時に何を優先事項にすべきなのかは、国によって違いますから、この判断が間違いだったとは言えません。
今後、議論が再び行われる日は、必ずやってくるでしょう。
その日まで、私たちは世界の情勢を様々な視点から見ておかなければなりません。
参考URL
独立行政法人経済産業研究所
(https://www.rieti.go.jp/jp/papers/contribution/fuji-kazuhiko/149.html)
やさしい株の始め方
(https://kabukiso.com/column/crude_oil_down.html)
まとめ
原油価格の状況は、産油国の状況で良くも悪くも変わります。
ですから、今のような状況は一時的なものと思っていいでしょう。
産油国にとって一番良いのは産出量の調整をすることですが、市場のバランスを保つためには中々難しい部分があることも事実です。
水面下で行われている争いは、私たちの日常に今後どのような変化を与えるのか注目しておきましょう。