突然ですが、みなさんは自宅の境界線がどのように決まっているか、ご存知ですか?
ぱっと見で判断できる、と思っている人もいるでしょうが、これが後々厄介な問題に発展してしまう恐れがあるのです。
一体、なぜなのでしょうか?
今回は、相続時の境界問題についてお話ししたいと思います。
境界問題を知るにあたって~そもそも境界はどう判断されるのか?~
相続時に資産を確認する際、必ずしも現金資産だけとは限りません。
お金としてでなく、土地の形で資産を残していることもあるでしょう。
相続税対策から考えると、現金よりも不動産で残した方が良いという話を聞きますよね。
ですが、不動産ほど正確な情報で残してあげなければなりません。
まずは、境界問題について触れる前に、境界自体がどのような物なのかをお話ししたいと思います。
基本知識として、理解すべきポイントは2つあります。
①そもそも境界とは何か?
②どうやって設定されているのか?
現在、戸建て住宅の購入を検討している人ならば、相続に関わらず知っておいて損はない内容ですよ!
①そもそも境界とは何か?
みなさんは、矢印等の模様が刻まれている杭を見たことがありますか?
例えば、道路上の境界ポイントに、赤字で記載されている物を見たことがある人もいるでしょう。
これは「境界標」と言われ、土地の境界線を私たちに教えてくれる物なのです。
また、戸建て住まいならば、敷地の仕切りになるように塀が設置されていることがありますよね。
これも、土地の境界になると言えるでしょう。
例えば、農家さんの中には自分の畑の境界線を把握するために、境界となる付近には特定の作物を植えることもあるでしょう。
このように「境界」というのは簡単に言うと、自分の土地であることを示す判断基準になります。
法的な定義では、登記された土地同士の地番の境目を表します。
示す方法は、目に見えている物だと、上記のように様々ありますよね。
ところで、土地の境界がどのように決められているのでしょうか?
②どうやって設定されているのか?
境界の設定は、自分1人で勝手に行えるものではありません。
登記や公図上ですでに確定されていますので、土地に関する書類を見ると分かる物なのです。
中には、境界線を改めて確定されるために、土地家屋調査士に依頼し、境界確定測定を行ってもらうこともあるでしょう。
相続時の場合だと、土地の登記書類を見ることによって、境界がどこまでなのかを知ることができますよね。
また、土地の所有者同士で決定する場合もあります。
この場合は、どちらか一方が決めるのでなく、双方の合意の下決めることになりますので、話し合いが前提の決め方になるでしょう。
さらに、境界を変更したい時も合意があれば実現できますので、公的な調査がある場合と比べると不明確な所も出てきそうですよね。
ここまで基本知識となる部分をお話ししましたが、これらは常識と言われればその通りの内容でしょう。
しかし、なぜ公的に決まっている内容でトラブルが発生するのだろう、と疑問に思う人もいますよね。
常識だと思っていることでも、実は盲点があるのです。
境界問題があると、不動産の相続がスムーズにできない?
境界問題は些細なことで済みません。
相続人全体を巻き込むだけでなく、正確な不動産の把握ができないというデメリットがあるのです。
ここでは、以下の相続時の疑問についてお話ししたいと思います。
・境界が不確定の原因とは?
・なぜ相続時に影響を与えるのか?
これらの内容は、誰にでも起こり得る可能性がありますので、もしもの時に備えて勉強しておきましょう。
・境界が不確定の原因とは?
そもそも公的に確定されているだろう境界が、なぜ不確定になっているような状態があるのでしょうか?
これには、書類上の2つの問題点が大きく関わっています。
1つ目は、登記書類に記載されている内容と、土地の現況が違っている場合です。
私たちは、土地の登記書類に書かれている内容が正しいと思ってしまいますよね。
ですが、その登記書類に記載されている境界は、いつ調査された内容なのでしょうか?
比較的最近調査された内容だと、最新技術等を使って調査がされたと考えることができますよね。
しかし、かなり昔に調査された場合だとどう思いますか?
数十年も昔に調査されたとなると、土地を取り巻く環境が違ったり、調査方法自体が古い手法だったりしますよね。
特に、測量技術の違いで、公募面積と実測面積が違うということがあり得るのです。
両者の土地の面積が違うとなると、当然境界部分の範囲にも違いが出てきますよね。
その結果、境界がズレしまっているということで、トラブルになってしまうのです。
2つ目は、対象となる土地の復元可能な地積測量図が、法務局になかった場合です。
「地積測量図」とは、土地家屋調査士が作成する、土地の正確な情報が記載されている書類で、境界を正確に判断するには大切な書類になりますよね。
法務局に提出している書類ですから、信頼度は高いと言えるでしょう。
ですが、上記の書類がないとなると、境界の判断やそもそもの土地の状態を知ることが困難になりますよね。
正確な証明が難しいと、改めて調査しなければなりませんから、時間や手間がかかってしまうでしょう。
相続資産の確認をしながら、不動産の調査を同時に進めるのは大変ですよね。
ですので、不安がある場合は、早めに調査等の準備しておいた方が良いのです。
・なぜ相続時に影響を与えるのか?
最後に、境界が不明確なことで想定されるトラブルをいくつかお話ししましょう。
スムーズに手続きするためにも、不利な点を確認しておきたいところです。
不明確な場合、どのような影響があるのかというと、売却や分筆等をする際に正確な判断ができなくなることが挙げられます。
例えば、売却を検討している場合、土地の価格は大きさや立地等から判断されますよね。
正確な情報があると、売却時の価格も見当がつきやすいですが、不確定だとどうでしょうか?
正確な価格が出てきませんよね。
さらに、境界がはっきりしませんから、買い手の立場からすると扱いが難しい土地として見られてしまう恐れがあります。
トラブルに発展する可能性がある不動産を、みなさんは購入したいと思うでしょうか?
価格の面は置いておいたとしても、なるべくトラブルにならない不動産を選びたいですよね。
そのため、売却する際に不利になるのです。
加えて、相続人同士で分筆等を行う場合でも、境界がはっきりしないことで適切な分割が行えない可能性が出てきます。
これらの影響を考えると、面倒に感じてしまう人もいるでしょう。
また、この問題は公的な情報のズレだけでなく、当事者同士で境界の了承を行っている場合、さらに厄介なことになりやすいです。
例えば、1つの土地の扱いを巡って、他者のエリアとの境界を話し合う必要がある場合もありますよね。
話し合いの際にすぐに当事者同士で話し合いができればいいですが、昔決めたことで、現在は遠方に住んでしまっているということもあり得るでしょう。
このようなケースでは、相続税の納付期限までに話し合い等の過程を終わらせることができません。
ちょっとしたことかもしれませんが、下手をするとお金の相続以上に時間かかることは間違いないでしょう。
まとめ
今回は、不動産相続で発生するトラブルの1つ、境界問題についてお話ししました。
土地の境界は、正確に把握されていることもあれば、当事者同士の合意で本人しか分からないこともありますよね。
誰もが正しい境界を知らないままだと、引き継いだ当人だけでなく、売却後に困る人が出てきます。
対象の不動産の状況が把握できないと、相続時の不動産の扱いが困難になりますから、チェックしておくに越したことはありません。