貧困・社会的排除に対峙するソーシャルワークについて

その他

コロナの影響で困っている人は、全国各地にいますよね。
みなさんの中にも、失業や収入減で明日の生活がどうなるのかと不安を抱えている人もいるでしょう。
その際にお世話になるのは、ソーシャルワークをしている人たちです。
今回は、貧困や社会的廃除に対峙するソーシャルワークについて、お話ししたいと思います。

ソーシャルワークの基本を学ぼう

暗い話題ばかりが多い現在、日常生活を送ることさえ困難な人もいると思います。
そのような時に支えになるのが、ソーシャルワークになります。
ですが、一般的な仕事内容からすると、馴染みがない人もいますよね。
本題に入る前に、まずはソーシャルワークの基本知識を学びましょう。

基本的な仕事のあり方、考え方を知るためのポイントは2点です。

①どのような仕事なのか?
②社会に対する役割は何なのか?

上記2点の項目は、社会問題を見る上でも大切な視点になりますので、学んでおいて損はありません。
また、もしかするとみなさん自身も何らかの機会にお世話になる可能性があるかもしれませんから、具体的な内容を確認しておきましょう。

①どのような仕事なのか?

そもそもソーシャルワークとは、社会で暮らしている全ての人々が、楽しく、幸せな気持ちで生きることができるようにお手伝いする仕事になります。
もっと簡単にまとめると、「社会生活をする上で困っている人をサポートする仕事」ということになるでしょう。
広い考え方のように思えますが、具体的な仕事場所を説明すると以下のような所が挙げられます。

例えば、学校や病院、福祉施設、行政といった多様な場所で関わることがあります。
その他には、企業にも該当する仕事があるのです。
例えば、従業員のメンタルヘルスをチェックしたり、従業員の中に障害者がいる場合は働きやすいように環境を整えたりすることがありますよね。
このような業務も、「ソーシャルワーク」として位置づけられると考えて下さい。

要するに、私たちが安心して生きていくためには、欠かせない仕事になるのです。
この仕事に関わる職業として、「ソーシャルワーカー」と呼ばれる人たちが存在し、今もどこかで困っている人を助けています。
この職業名を、誰でも一度は聞いたことがあるでしょう。

ところで、困っている人を助けるだけがソーシャルワークの全てではありません。
実は、社会全体のシステムと密接な関係性を持っているのです。

②社会に対する役割は何なのか?

ソーシャルワークには、以下の機能が備わっていると言われています。

・介護予防サービスや住まい等の必要な社会資源とクライアントの関係調整・構築を行う
・クライアントに置かれた問題や環境の対処能力のサポートを行う
・関連機関等の運営や地域住民・専門職同士の連携を促す役割
・施設や制度の運用改善を行う

ソーシャルワークに馴染みのない人だと、「困っている人の相談に乗ったり、適切な行動のサポートを行ったりする」ことが仕事だと思ってしまいますよね。
しかし、本来の業務は多岐に渡っていることが分かるでしょう。
様々な権利擁護や社会的な不公平があった場合の仲介やサポートだけでなく、多様な人と専門機関の結びつけを行っていますよね。
その結果、個人の課題を解決するだけでなく、地域社会で従来からあった問題に対しての改善を促すことができるのです。

そのため、社会問題の解決から、個人間の課題の解決に至るまでが業務の本質になると考えても良いでしょう。

ここで、もう一つの見方ができることに、みなさんは気付けるでしょうか?
それは、携わっている業務の内容のほとんどが、社会的なセーフティネットと密接に関わっていることです。
普段は知識として知っているセーフティネットですが、何らかのきっかけで利用することが誰にでもありますよね。
ソーシャルワークが浸透し、幅広く活用できるようになることは、「セーフティネットが拡大すること」に繋がるのです。

私たちは、「セーフティネットは本当に困っている人しか利用できない」と思ってしまいがちです。
しかし、そこまで困っていなくても、少しは助けが欲しいと思う時は誰だってありますよね。
その時に、どのような状況の人でもサポートが得られる社会だと、安心して過ごせる、生活ができると思いませんか?
ソーシャルワークの理念は、まさしくココにあると言って良いでしょう。

貧困や社会的排除への対応における議論

ところで、ソーシャルワークの重要性はコロナ禍でより著しくなりました。
例えば、失業者向けのサポートだけでなく、給付金や貸し付け制度の内容が充実して利用できるようになっていますよね。
特に、社会的弱者と言われるような女性や老人、障がい者向けのサポートには、現在も必死に取り組んでいるでしょう。

その一方で、ソーシャルワーク自体には貧困や社会的排除といった課題に対して、常にそのあり方が議論されています。
みなさんも報道等で知ることができる内容だと、以下の状況が挙げられます。
例えば、必要なサービスに結び付けるための連携が取れていない、生活が苦しいと説明をしても生活保護を受けさせないといった内容になるでしょう。
上記のような内容は、どの地域でも発生していることですよね。

ですが、本当に助けを求めている人が、必要なサポートを受けられないというのは理念上あり得ないことです。
なぜ、理念とは反対の対応になってしまうのでしょうか?
それには、考えられる要因がいくつかあります。

・ソーシャルワークの国際定義と日本の関連資格「社会福祉士」「精神保健福祉士」の定義が異なっている
・教育内容がまだまだ未熟であること
・ソーシャルワーカーの配置や位置づけの問題(制度の門番化していること)

一般の方ならば、3つ目の要因によることで必要なサービスが受けられないといった経験が多いでしょう。
これは、単に担当した人との相性が悪かったという話にはなりません。
実は、配置されている機関や組織との兼ね合いによっては、サポートをしてあげたくても難しい状況があるのです。

生活保護に関する事例は、まさにそれを体現したようなものなのです。
相談者が助けを求めている場合、状況に合ったサポートやその提案をしていくべきなのですが、受け入れ状況等であえて利用できないと言っている場合もありますよね。
また、サポートする側の人員の問題から、1人当たりの担当数が多く、全ての人に対してサポートができない事情もあるでしょう。

近年はその反省をもとに、業務に携わる人を増やそうと取り組んでいます。
しかし、実際の対応事例や組織の収益上の問題等から、根本となる課題が解決できていないと言えるでしょう。
コロナ禍の状況では緊急性がより高くなるため、対応を積極的に行っている状況になりますが、サポートが届いていない人がいるのも事実です。

様々な事例には、必ず社会的な困難が隠れています。
生活が苦しいと言っても、その理由は本人の怠けだけではありません。
障がいがあるため、失業したのに仕事が決まらないため、病気を抱えているためと、単純な事柄でないのです。
これらを解決するならば、病院や専門機関と連携しながら進めなければ、「貧困」から抜け出すことはできないでしょう。

個別の事例から社会の問題や課題を読み取る力が、貧困や社会的排除と対峙するこれからのソーシャルワークに求められます。

参考URL
(https://womanslabo.com/c-case-tips-190809-5)
(https://archives.bukkyo-u.ac.jp/rp-contents/DF/0046/DF00460L081.pdf)

まとめ

貧困や社会的排除といった出来事は、単純なきっかけで起こり得るものです。
人によっては、根本となる要因を解決しない限り、そこから抜け出すことすら厳しいですから、セーフティネットの大切さが理解できますよね。
このことはコロナ禍によってより明らかになっていますが、企業も無関係ではありません。
企業でできることや役割を考えるきっかけになりますから、今一度経営や自社のあり方を考え直す時期に来ているでしょう。