政府が検討している「こども保険」とは?

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現在、日本の大きな社会問題の1つに、少子化があります。
時代を担う子ども達が少なくなっているため、政府では様々な対策を打ち出しているのですが、その際に問題となるのが財源の確保です。
そんな中、新たにこども保険の導入という考えが出てきたのですが、これはどのようなものかを解説します。

こども保険とは?

こども保険と聞いて思い浮かぶのは、民間保険会社の保険プランのうち、子どもを対象としたものでしょう。
特に、学資保険などが思い浮かぶと思います。

しかし、今回話題になっているこども保険は、それとはまったく異なります。
これは政府、特に厚生労働省が取り扱うもので、簡単に言えば社会保険料の一種として考えられるものです。

現在、会社員として働いている人は給与から、健康保険や厚生年金などの社会保険料を天引きされています。
また、自営業や個人事業主の人も国民健康保険や国民年金などに加入し、保険料を支払っています。

今話題になっているこども保険は、こういった保険料に一定金額を上乗せしよう、というものです。
まだどのくらいの金額になるのかは明らかではなく、そもそも導入が正式決定されたわけではないのですが、決定した場合は大きな負担が増えることになるかもしれません。

実は、こども保険という構想自体は以前からありました。
2017年に、小泉進次郎衆議院議員をはじめとした若手議員が、こども保険の構想を打ち出していたのです。

その時の予定では、幼児教育・保育の実質無料化を実現するための新たな社会保険制度として発表されています。
そのため、まずは給料の0.1%から始めて、最終的には0.5%まで上げていくという考えでした。

当時の試算では、0.5%徴収することで年間1兆7千億円が集まります。
それに児童手当を加えると、実質無料で幼児教育・保育が可能となるのです。
税ではなく、保険という形で社会を支える財源を確保するのが狙いでした。

政府では、そのことを明記した基本方針の素案も発表していたのですが、いつの間にか立ち消えとなっていました。
おそらく、それよりも現在の基本10%まで消費税を引き上げることを優先したのでしょう。

確かに、2017年のこのこども保険が成立していた場合、そのすぐ後に一部を除いて消費税を10%まで引き上げるという法案を出したとしても、賛同は得られなかったでしょう。
次々と負担が大きくなってしまうと、国民は不満を覚えるのです。

そのこども保険が、5年の時間を経て再び浮上してきました。
それは、どのような理由からでしょうか?
また、この案に対してどのような意見があるのでしょうか?

こども保険の背景とそれに対する意見

再びこども保険が浮上してきた理由として大きいのが、来年4月に発足する「子ども家庭庁」でしょう。
これは子ども政策の司令塔となるもので、子ども政策担当大臣の直下に置かれる組織です。

内部は、子ども政策関連の大綱の作成・推進を担当する企画立案・総合調整部門と、文科省と共同で教育・保育内容を策定する成育部門、そして虐待やいじめ対策、並びに施設等出身の若者の支援を行う支援部門に分けられています。

しかし、この庁の発足を控えて問題となったのが、財源です。
こども関連予算は将来的に倍増するという方針を打ち出してはいるものの、その予算がどこから出てくるのか、という問題があります。

公約でも、具体的にどうやって財源を確保するのかという点には触れられておらず、具体的には今後決められていきます。
そこで、財源確保の手段としてこども保険を模索する動きが出てきたのです。

人口動態統計では、2021年の出生数が過去最低の81万1604人と、昨年を3万人近く下回る人数となりました。

そこで、少子化対策が急務となり、このような動きが見えるようになったのです。
こども保険の保険料は、子どもがいる家庭だけが負担するわけではありません。
健康保険や年金などの社会保険料を支払っている人全員が、対象となります。

そこで不安視されているのが、子どもがいないため直接恩恵を受けることがない人の理解を得られるかどうかという点です。
また、高齢者は負担することがないというのも、問題視されています。

実際の評判を見てみると、まず政府や官僚は新たな名目で我々から取り立てをすることをもくろんでいるというものがあります。
2019年に消費税が増税されたばかりで、さらに負担が増えるというのはさすがに不満が出てくるようです。

また、子どもに予算を割くこと自体は賛成しますが、そのために負担を増やすよりも先に高齢者向けの医療費を削ることを考えるべきではないか、という意見もあります。
健康保険の保険料には、高齢者の医療費の支援分も含まれているのです。

そして、保険と銘打たれてはいるものの、これは実質的に新しい税だという意見もあります。
こうやって新たな名目で次々と税が作られていき、そのせいで家庭が圧迫されて子どもを養う余裕がなくなり、少子化は更に進むとも言われています。

そして、子育て世代への風当たりが強くなることを心配する意見もあります。
現在は子育てがしにくい世の中なのに、さらに批判材料となるような政策を打ち出すくらいなら昔あった年少扶養控除を復活させた方が良い、とも言われています。

また、明石市で独自の5つの無料化を実施して子育て世代を中心に9年連続で人口増を達成した明石市市長も、こども保険には反対しています。
官僚は、こども保険に反対されたせいで子ども予算の拡充が難しいというストーリーを考えているが、実際には他にも予算を確保する余地がある、とコメントしています。

このように、こども保険には反対意見がかなり多く寄せられています。
5年前も同様で、当時は政治的にお蔵入りとなったと考えられていたのですが、ここにきて再び浮上してきました。
しかし、この様子では導入も難しいでしょう。

まとめ

こども家庭庁の発足を控えて話題となったこども保険は、以前に出されてお蔵入りとなったものです。
当時から批判が多かったのですが、それから5年経って再び浮上したことで注目を集めているものの、やはり悪い評価が多くなっています。
本当に、これは必要なものなのでしょうか?
それ以外に予算を確保する方法がないか、もう一度よく考えてみた方がいいでしょう。