副業赤字節税vs副業300万円問題

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近年、サラリーマンなどが副業を持つことが増えています。
働き方改革でも副業が解禁されたことで、今後ますます副業を持つ人が増えていくでしょう。
そこで問題になるのが、副業赤字節税と副業300万円問題です。
対立することになるこの2つの問題について、解説します。

副業赤字節税とは?

副業は、本業を持つサラリーマンなどが収入をさらに増やすために行うのが一般的です。
収入が増えると、税金もより多く納める必要があるでしょう。
しかし、中には副業によって節税をしている人もいるのです。

本業のサラリーマンとして十分な収入がある方であれば、わざわざ副業で収入を増やす必要はないでしょう。
そういった方が、副業として節税をしているのです。

副業と言えば、どのようなものが思い浮かぶでしょうか?
例えば、不動産投資をして賃貸物件を保有し、その家賃収入を得る場合や、ネットショップを開設して商品を販売しているケースなどがあります。

また、スキルがある人はそのスキルを本業以外にも使って、収入を得るケースもあります。ただし、副業は確実に儲かるとは言えません。

元手が必要無い副業なら、悪くても収入が0になるだけです。
しかし、元手が必要な副業を選択した場合は、赤字になってしまうこともあるのです。
在庫を持っての商品販売や、不動産投資なども赤字になる可能性がある副業です。

本業の場合、赤字になった場合は単に収入がマイナスになるというだけです。
しかし、副業で赤字が出てしまった場合は、それが節税になるのです。
サラリーマンにとっては、あまりなじみがないでしょう。

サラリーマンの場合、会社として赤字になることはあってもそこで働く従業員が赤字になるということはありません。
会社の業績が悪くても、社員がそれを補填することはないのです。

そのため、給与所得にかかる税金は支払うことになります。
副業によって赤字が出て場合は、その給与所得で支払う所得税から相殺して、税金を還付してもらうことができるのです。

わざわざ赤字を作り出すために副業を始める人はいませんが、想定していなかった経費がかかって赤字になってしまった、ということはあり得るでしょう。
その場合、副業に所得税が課されることはないものの、そのままマイナスで終わるよりは給与所得で支払った所得税を少しでも取り返したい、と思うことは多いはずです。

そこで、損益通算という制度を利用します。
これは、異なる所得の金額において生じた損失の一部を控除することができるという制度です。

この場合、給与所得から副業において生じた損失を控除することで、給与所得の消費税を減額するのです。
金額によっては、所得税の税率そのものが変わるため、大きな節税になるかもしれません。

副業300万円問題とは?

上記の損益通算において、対象となるのは不動産所得、事業所得、譲渡所得、山林所得の4つです。
この4つについて、損失が出た場合に給与所得から控除できるのです。

しかし、国税庁が8月に公表した通達案では、副業収入が年300万円以下であれば原則として雑所得とする、となったのです。
雑所得は上記の4種類に含まれていないため、副業で赤字が出た場合でも損益通算は認めないということになります。

これまで、副業の収入が事業所得になるのか雑所得になるのかというのは、曖昧なものでした。
反復して継続する意思があるかどうか、という点が基準となっていたのです。

その場合、単に持っているものをネットショップで売却するだけなら雑所得となります。
しかし、一定以上の期間継続して行うつもりでネットショップを開業したり、アクセサリーなどを作成して販売したりする場合は事業所得として認められるのです。

雑所得になると、損益通算ができないだけではなく特別控除なども認められません。
雑所得はそもそも青色申告ができず白色申告になるため、青色申告の65万円の特別控除がなく、節税としての効果も少ないのです。

雑所得は、他の所得の分類に当てはまらないものをいいます。
そのため、副業の収入が300万円以下の場合は事業とは認められない、ということになるでしょう。

ただし、このような分類にしようと国税庁が考えたのには、いくつかの理由があります。
その中でも大きいものが、副業を利用して赤字を作り出す人がいる、という点でしょう。
これは、どういうことでしょうか?

例えば、サラリーマンが副業として作成した小物をネット上で販売した場合、ほとんどは趣味程度の規模で収入もごくわずかでしょう。
しかし、それに対して節税目的に大きな経費を計上して赤字を作り出そうとする人がいるのです。

例えば、ネット上で販売するための経費としてパソコンの機器代金や通信費、小物を作成するためのパーツ代、さらに作業場所として自宅の家賃や光熱費なども経費として計上した場合、大きな赤字となるでしょう。
中には、友人との旅行や食事代も勉強会という名目で経費に計上している人もいるのです。

そうして、給与所得から赤字分を差し引いて課税所得を減額するのです。
一般的に節税対策として知られる方法ではありますが、副業をしていなくても発生する費用を計上しているという点でグレーな方法ともいえるのです。

その対策として出されたのが、300万円以下は雑所得にするという案です。
そして、それに反対する人からの反対意見が多く、副業300万円問題となったのです。
国税庁が8月まで受け付けていたパブリックコメントには、7000件以上の意見が寄せられました。

この変更案は、働き方改革の副業推進にも反するものと言えます。
その点もあり、反対意見も踏まえたうえで、国税庁では10月にその改正案を撤回したうえで300万円以下の場合でも、帳簿があるかどうかを判断基準にすると譲歩した案を出しました。

帳簿に関しては、確定申告をするためにほとんどの人がつけているでしょう。
そのため、300万円以下という基準は実質的に消滅したと言えるでしょう。
ただし、無理な赤字による節税をする人が多ければ、再び改正案が提示される可能性もあるため、注意が必要でしょう。

まとめ

サラリーマンが副業をすることが増えている現在、それにかかる税金をどう扱うかは非常に重要な問題です。
副業をする意義が失われないことを念頭に置きつつ、適切な税金を課さなくてはいけません。
今回の副業赤字節税に対する副業300万円問題は、これからの副業における経費の計上を考えるきっかけとなるでしょう。
節税ができるようにしたうえで、不適切な計上をしないように注意しなくてはいけません。