防衛財源の法人増税

その他

日本において防衛費の増額は反対意見も多いものですが、2022年12月に法人税の増税分を防衛財源に充てることが発表されました。
実際に開始されるのは2024年以降の適切な時期としか言われていないのですが、23年度の与党税制改正大綱にはその内容も盛り込まれます。
具体的には、どのような変更となるのかを解説します。

防衛費の財源確保

2022年12月15日の税制調査会で、防衛費を増額するための財源として法人税と復興特別所得税、たばこ税の3つを増税して財源にすることで合意しました。
ただし、増税については2024年以降に開始される予定となっています。

政府の方針としては、防衛力を強化するために2023年から2027年にかけて、合計43兆円の防衛費を確保しようと考えています。
そして、税制措置でその内の1兆円強を賄う必要があるのです。

防衛費の増額は国家安全保障戦略に基づくもので、防衛力を抜本的に強化して反撃能力を保有し、米国依存の防衛から脱するための自衛力強化などを目的としています。
これにより、日本の防衛政策は大きく転換することとなるでしょう。

防衛力の抜本的強化では、国産のスタンド・オフミサイルの改良、並びに外国製のミサイルの購入など、十分な数のミサイルを確保して反撃能力を保有し、強化していくことで抑止力を維持・向上させることを目的としています。

また、防衛体制の強化として現状の縦割り体制を打破し、関係府省が連携して防衛にあたる新しい仕組みを構築することを主張していて、サイバー安全保障、公共インフラ、研究開発、国際的協力の4分野で総合的な防衛体制の強化に資する経費として計上し、把握していくものとされています。

現在、NATO加盟国の防衛費はGDP比2%が基準となっているため、日本は現在のGDP比1%前後の状態からさらに増加させていくべきという意見も多いため、基準迄ではなくてもある程度増やしていくべきと考えられています。

また、経済財政の在り方についても述べられていて、過去の歴史や海外の事例を踏まえた上で財政健全化の重要性について記述視されています。
そして、防衛費の財源は全世代で分かち合っていくべきとして後世への負担となる国債で賄うことには反対しているのです。

そのため、まずは歳出の削減によって財源を賄うことを考え、まかないきれない部分に関しては国債ではなく、増税で賄うべきとしています。
これは、財務省の影響が強いのだと思われます。

こういった意見を受けて防衛費の増額が決定し、その財源として法人税を始めとした3つの税を増税して財源とする、という方針が定められたのだと思われます。
柱となるのは法人税ですが、今後どのように変わっていくのでしょうか?

法人税の増税の内容

法人税は、かつての安倍政権時代に成長投資や賃上げを後押しするために引き下げを行っていて、それまでは国に納税する分と地方に納税する分の合計となる実効税率が37%だったのが29.74%に引き下げられ、現在までその税率を保っていました。

しかし、そのような経緯があったにもかかわらず、積極的に賃上げをする企業は少なく意図した成果には結びつかなかったと言われており、与党内では一部で増税することに前向きになっていた声もありました。

とはいえ、経済情勢が不安定な中で法人税を引き上げることには、自民党安倍派を中心として慎重論も多かったことから税率を変更して増税するまでには至らなかったため、今回の増税では付加税として一定割合を法人税額に上乗せすることで追加税率を低く抑得ることを考えています。

さらに、付加税の対象には中小企業を含めないことで、負担が増したとは感じさせないように配慮しているのです。
しかし法人税は景気の影響を受けやすいため、安定税源とするには不安定な一面もあります。

その不安定な面を支えるために、法人税だけではなくたばこ税の増税、そして東日本大震災の復興支援を目的として課されるようになった復興特別所得税を一部転用することで補填するように設計されているのです。

たばこ税はスウェーデンで国防費増額の財源として増税されている例もあることから、政府内で財源候補として挙げられています。
たばこ税はたばこ特別税が設けられた1998年から2003年、2006年、2010年と相次いで増税され、2018年から2021年にかけては段階的に毎年値上げしています。

そのため、たばこ税の増税はまたか、と思われてしまい、非喫煙者にとっては全く関係ないことなので、増税についても反対意見が少ないのです。
しかし、たばこ税は増税する度に喫煙者が減少し、税収はあまり増えていないという一面もあります。

将来的には、たばこ税ばかりではなく株式や土地などの資産を持ち、そこから所得を多く得ている富裕層に対して金融所得課税を行い、相続税を強化して防衛財源を確保するという可能税も考えられています。

嗜好品に分類されるたばこにかかるたばこ税と同じく、主な対象が富裕層である資産課税や相続税に対しての増税であれば、世論の反発も少ないと思われるというのがその理由です。

特に、現在問題として指摘されているのが、非上場株式などの譲渡所得が多い高所得者の税負担が、1億円を境に減少する「1億円の壁」と呼ばれる問題です。
これは、通常であれば所得が増えると所得税の税率は最大45%まで上がっていくのに対して、金融所得は一律で20.315%になるという問題です。

富裕層は給与所得などの税率が高くなるのを避けるため、税率が一律になっている金融所得を増やそうとしているのです。
そして、所得税の負担率は1億円をピークとして下がっていくため、壁と表現されています。

この問題点を掲げて、年間数億円の所得がある富裕層にも相応の負担を求めるため、富裕層を対象とした課税強化を検討しているのです。
そうして、様々な角度から防衛費を確保しようと考えているのです。

まとめ

防衛委費の財源を法人税に求めるのかつて法人税が減税されているという点も理由となっていて、また、嗜好品であるたばこにかかるたばこ税、並びに復興特別所得税も財源として考えられているのですが、特にたばこ税については反対意見が出にくいという一面もあります。
実際に増税されるのは2024年以降ですが、それまでに備えておく必要があるでしょう。