東京都太陽光パネル義務化で起こりうるリスクを考える

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温暖化ガスの削減や環境保護、電気代の高騰など様々な面から、太陽光発電に注目が集まり導入する住宅も増えています。
そんな中、東京都では太陽光パネル設置を義務化する法案が可決されたのですが、これによってリスクが生じる可能性もあるのです。
どのようなリスクがあるのか、解説します。

太陽光パネル義務化とは?

東京都議会では、2022年12月15日に新たな法案が成立しました。
2025年以降、住宅メーカーなどに新築住宅建築の際、太陽光パネルの設置を義務化するというものです。

現在、日本では2050年までに二酸化炭素などの温暖化ガスの排出量を実質ゼロにする、カーボンニュートラル宣言を出しています。
太陽光パネルの設置義務化も、その一環という面があるでしょう。

この条例は、都民ファーストの会、共産党、公明党、立件民主党などが賛成し、賛成多数で可決されて成立しました。
しかし、自民党などは納得してもらえる状況ではないと反対に回っています。

このために、1100億円余りの補正予算を提案してそれも可決され、成立しています。
さらに、義務化に向けてメーカー側の技術向上支援や相談窓口の設置費用、啓発事業などに300億円の予算が組まれています。

対象となるのは基本的に都内となり、年間の合計で延床面積2万平方メートル以上を提供する大手住宅メーカーで、発電設備を設置することが可能な住宅数や日当たり条件に応じた件数、発電容量の達成状況の目安などを都に報告する義務を負うことになります。

これに対して、東京都では設置費用の補助を拡大するとともに、維持費用を支援することも検討しています。
設置費用は100万円前後と予定されていて、想定では4割を自家消費して6割を売電することで、10年で回収できるとなっています。

現在、燃料の高騰によって電気代は高騰しています。
そんな中、太陽光パネルが設置されえると電気料金を軽減することができるでしょう。

減り続ける太陽光パネルの設置台数

日本では、以前太陽光パネルが多くの住宅で設置されました。
それには、固定価格買取制度(FIT)が背景にあったからです。
発電した電気を一定価格で買い取ってもらうことができたため、設置費用をペイできたのです。

この制度は買取期間が10年間と定められていて、スタートしたのが2009年なので2019年からは順次終了しています。
そして、後から始めた人はどんどんと買取価格が下がっているのです。

20012年度には、1kWhあたり40円から42円で買取していました。
しかし、2022年度には1kWhあたり11円まで下がり、2023年度は10円に下がっています。

さらに、2020年度のFIT法改正によって、50kW未満の太陽光発電は全量売電が廃止されています。
大規模な太陽光パネルの設置のために森林が伐採されたり、近隣住民とのトラブルが起こったりもしています。

そのせいで、太陽光パネルの設置台数は右肩下がりになっています。
今となっては、太陽光パネルを設置することにそれほどのメリットがないのです。
これでは、カーボンニュートラルの実現はまず無理でしょう。

また、設置費用についても問題があります。
設置義務は大手住宅メーカーに課されるため、家を建てる人に負担がないのかと言えばそうではありません。

家に付ける設備なので、費用は必ず住宅価格に転嫁されることとなるでしょう。
そうなれば、結局家を建てる人が負担することになるのです。
補助金が出る予定とはいえ、全額賄えるほどではないでしょう。

売電にも問題があり、これまでのFITの料金も電気料金に加算されてかなり高額になっていました。
そして、今回の義務化で売電する人が増えた場合、やはり電気料金に加算されてしまう可能性が高いのです。

懸念されている点としては、まず天候面で年間降水量が多い東京では十分な発電量があるのかということがあります。
これについては、4kWhの太陽光パネルを設置すれば平均年間電力消費量の80%前後をカバーできると言われています。

また、東京は高いビルやマンションが多いため、日照権の問題もあります。
ビルやマンションに隣接した土地に新築が立てられる場合も設置義務があるのか、と疑問に思う人も多いでしょう。

設置の義務を負うのは大手住宅メーカーなのですが、実はすべての住宅に設置する義務はありません。
年間の発電容量の目標を設定し、その達成状況を報告すればいいのです。

そのため、日照など条件が悪い場合は、設置する必要がありません。
また、屋根が20平方メートル以下の大きさの場合は設置対象から外すことができ、それ以外にも屋根の形状が設置に適していない場合も設置しないという判断ができるのです。

東京都には台風が来ることも珍しくないため、台風で破損したり大雨で水没して感電したりしないか、といった心配の声もあります。
また、雹などで割れないかという人もいます。

太陽光パネルは、JIS企画で風速62メートルまで耐えられるようになっていて、水没により感電したという報告もありません。
また、雹についても毎秒23メートルで2.5センチの粒を当て続けても耐えられるよう設計されています。

太陽光パネルは、一度設置すれば永年使用できるわけではありません。
寿命は25~30年となっていて、使用できなくなったら交換、もしくは処分する必要があります。

これについて、東京都では設置だけではなくアフターフォローまでの支援を検討しているものの、詳細については未定となっています。
将来の大量廃棄を想定して多くのリサイクル施設が稼働し、リサイクルルートの確立にも取り組んでいるのですが、まだ詳細は決まっていません。

小池都知事は、都内の二酸化炭素排出の原因の7割が建物関連なので、今後の二酸化炭素の排出を考えると今のうちから対策をしてくことが必要と述べています。
そして、やがては屋根が当たり前のように、屋根が発電するのも当たり前になることを目指しているのです。

まとめ

東京都内で2025年から新築住宅へのソーラーパネル設置を義務化することが決定したというニュースは、今から家を建てようと考えている人に大きな衝撃を与えました。
大手住宅メーカーが対象となる制度とはいえ、様々なリスクも想定されて不安が残ります。
今はまだ詳細について決定していないことも多いため、今後の状況によっては変更となることも考えられるでしょう。