事業承継補助金、事業承継税制適用の活用のすすめ

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中小企業は、日本の経済を支える重要な役割があります。
しかし、現在は経営者の高齢化が問題となっているものの、事業承継が上手くいかず廃業を考える企業が増えています。
国で円滑な事業承継をサポートするために用意している補助金や税制措置について、解説します。

事業承継補助金とは

事業承継の際は、補助金の申請ができます。
「事業承継・引継ぎ補助金」は、中小企業や小規模辞意業者の事業承継やM&Aを支援することを目的とした補助金で、支援対象によって3つの事業に分けられています。

1つ目は、経営革新事業です。
事業承継の後の取り組みにかかる費用を対象として補助する物であり、対象となる経費は店舗棟の借入費や設備費など、経営革新に必要となる費用です。

似たような補助金に「ものづくり補助金」などがあるのですが、対象がさらに幅広くなっています。
経営革新事業は、さらに創業支援型と経営者交代型、M&A型に分けられています。

創業支援型は、事業者の経営資源を引き継ぐ形で創業するケースを対象としています。
事業承継・引継ぎ支援センターが運営する後継者人材バンクや、民間で運営されるM&Aマッチングサービスなどを通じて経営資源を引き継ぎ、法人を設立するか個人事業主として開業するケースなどが当てはまります。

親族や従業員が後継者となって経営資源を引き継ぐケースは、経営者交代型です。
通常は承継後の取り組みが補助の対象となるのですが、令和4年度第2次補正予算において、後継者候補が承継前に取り組んだことも支援対象となっています。

M&Aによって経営資源を引き継ぐ場合は、M&A型です。
企業が取引先や同業他社の持つ経営資源を引き継いで、事業の統合や再編をする場合に補助金の対象となります。

2つ目は、専門家活用事業です。
M&Aによる事業引継ぎの際に発生する費用を補助するためのもので、承継後ではなく承継前の引継ぎの費用を支援するという点が、経営革新事業のM&A型とは異なります。

中小企業のM&Aは近年増加し続けていて、年間で3~4千件も実施されていると推計されています。
以前はネガティブなイメージもありましたが、後継者不足に悩む中小企業が増えている現在は、事業承継の当たり前の方法になっています。

M&Aには、仲介業者やファイナンシャルアドバイザーに支払う費用、企業価値の算定費用、デューデリジェンスの費用等も必要です。
中小企業にとっては、無視できる金額ではありません。

専門家活用事業で費用を補助することができ、売り手支援型と買い手支援型の2つがあるため、売り手と買い手のどちらの企業も対象となります。
ただし、仲介業者とファイナンシャルアドバイザーについては、M&A支援機関登録制度に登録されている業者に限り補助対象となるため、注意してください。

3つ目は、廃業・再チャレンジ事業です。
事業承継に伴って廃業する場合にかかる費用を補助するためのもので、M&Aが成立せず廃業することになったり、承継の際に事業の一部を廃業したりする際に補助を受けられます。

廃業の際は、廃業登記費や在庫処分費、原状回復費、解体費などがかかります。
合計すると意外に高額な費用となるため、廃業に踏み切ることができない中小企業も少なくありません。
費用を補助してもらうことで、安心して事業の一部を除いて承継することができます。

事業承継・引継ぎ補助金は、M&Aを含めた事業の引継ぎの時から、事業承継に伴う廃業、承継後の取り組みまで、事業承継に関わる多くの局面において利用できる補助金です。

事業承継税制とは?

事業承継において大きな問題となるのが、承継した時に係る多額の税金です。
非上場の株式会社では、経営者が非公開株の多くを保有していることが多いのですが、事業承継の際は非公開株を引き継ぐことになります。

先代の経営者が存命中に事業を承継した場合、自社株は贈与という形で譲り渡されるため、贈与税が課されます。
死去に伴って事業承継した場合は、相続となり相続税が課されます。

後継者の税負担を軽減するために定められたのが、事業承継税制です。
2009年に税制改正でスタートした制度ですが、2018年に特例という形で内容がさらに拡充されています。

特例は、2018年から2027年までの10年間限定です。
対象となるためには、当初5年間に特例承継計画を都道府県に提出して、2027年12月までに承継を行うこと、となっていました。
現在、提出期限は2024年3月までに延長されています。

元々の事業承継税制では、対象となる株式数が3分の2まででしたが、特例措置では上限が撤廃されて100%となりました。
3分の1は税金を通常通り治めなくてはならなかったのが、全ての株式を対象にできるようになったのです。

また、猶予割合は80%だったため20%の税金は納めなくてはならなかったのですが、特例では猶予割合も100%になりました。
つまり、税金を一切納めずに事業承継ができるようになったのです。

対象者についても拡充され、一般措置では先代経営者と後継者がそれぞれ1人ずつとなっていたのですが、特例措置では親族外を含めた複数の株主から代表者である最大3人の後継者へと承継する場合も対象となったため、中小企業の経営の実情に合わせて、多様な事業承継ができるようになっています。

雇用要件もあり、元々は5年間で平均8割以上の雇用を維持できなければ猶予が取り消されたのですが、特例措置では8割未満でも猶予が継続されます。
ただし、8割未満となった場合は理由を報告する必要があります。

経営悪化が原因で維持できなかった場合等、特定の理由がある場合は理由報告をしたうえで、認定経営革新等の支援機関に指導助言を得なくてはいけません。
助言や指導を得なければ、猶予が取り消されてすぐに納税しなくてはならなくなるかもしれません。

元々の制度では、引き継いだ株価の価値は承継時の株価を基準として、納税額を計算していました。
しかし、特例措置では経営環境の変化を考慮して、売却時や廃業時の評価額を元にして再計算を行い、納税額との差額を減免する制度があります。

まとめ

事業承継の際には、様々なコストがかかります。
廃業するだけでも費用はかかり、納税なども必要になるため、費用面で承継が難しいこともあるでしょう。
補助金を活用すれば、事業の拡大や廃業、M&Aなどでかかる費用を補助してもらえるため、承継がしやすいでしょう。
また、納税も事業承継税制によって、猶予や免除を受けられます。
事業承継の際は、ぜひ活用してください。