高齢者のデジタル難民問題

その他

日本では、様々な分野でデジタル化が進んでいます。
しかし、若い世代は馴染み深いデジタルも、高齢者にとってはよくわからないものです。
デジタルには疎い高齢者が多いことで、高齢者の中にはデジタル難民と呼ばれる人も少なくないのです。
高齢者のデジタル難民問題について、解説します。

高齢者のデジタル難民問題とは

日本では、2007年に高齢者が全人口の21%を超えたことで、国連の超高齢社会の定義に当てはまることとなりました。
2021年には、高齢者人口が29.1%と、4人に1人以上が高齢者になっています。

一方で、社会ではデジタル化が進んでいます。
店舗での買い物の支払いも現金は少なくなり、スマホを使った電子マネーでの決済増えています。

しかし、高齢者のほとんどは未だに現金で支払っています。
クレジットカードがないから電子マネーが使いづらいという人もいるのですが、多くの人は慣れ親しんだ現金払いが良いと思っているでしょう。

そもそも、スマートフォンを持っていないという人も多いでしょう。
内閣府の調査では、18歳から49歳までの人は90%以上がスマートフォンやタブレットをよく利用しているのですが、70歳以上になるとよく利用しているのが24.3%となり、約半数は利用していないのです。

しかし、近年では現金での支払いができず電子マネーでの支払いに限定したお店も出てくるなど、デジタルの利用を前提とした社会へと変わりつつあります。
デジタル・ディバイトという、ITの恩恵を受けることができる人とできない人の間に経済格差が生まれるということも、問題視されています。

総務省は、高齢者のデジタル・ディバイト問題を解決するため、令和2年度の第三次補正予算案の中に11.4億円の予算を計上しています。
携帯ショップや公民館で、e-TAXやマイナポータルの使い方のオンラインサービス利用方法についての説明会を実施して、利用方法を周知しています。

自治体での取り組みは以前からあったものの、多くの場合はスマートフォンの操作方法など基本的なことを教えるにとどまっていました。
しかし、現在はデジタル・ディバイト解消を目指す取り組みも増えています。

渋谷区では、スマートフォンを所有していない65歳以上の区民を対象に、スマートフォンを無料で貸与しました。
加賀市は、マイナンバーカード対応スマートフォンの購入助成を行っています。

高齢者がスマートフォンやタブレットを利用しない理由として多いのが、問題なく生活できているため必要性を感じないことと、使い方が分からないということです。
一度使ってみて、使い方を教えるというのはいいことでしょう。

企業でパソコンが使われ始めた時も、ベテラン社員は今までのやり方に拘ってパソコンの使い方を覚えようとせず、若手社員に操作を任せていたことが多かったのです。
それでも、時間が経つにつれ使い方を覚えざるを得なかったように、高齢者の生活にもスマホなどは必要とされるようになるでしょう。

中国における事例

中国は、現在世界最先端と言われるITイノベーションが起こっています。
スマホ決済も普及し、国民の生活も多くがデジタル化されているのです。
コロナ禍を経て、IT化はさらに進みました。

生活を送る中で、多くの場面がスマホアプリを活用するようになっていて、1つのアプリで多くの機能を持つようになっています。
しかし、高齢者はデジタル化についていけず、デジタル難民となっています。

上海でロックダウンが実施されていた最中は、情報収集やデリバリー食材を注文するのもスマホを活用しなくてはならなかったのですが、高齢者が使い方を理解できず、餓死しかけていることもありました。

また、バスに乗車する際は健康アプリを認証する必要があったのですが、アプリの使い方が分からない高齢者が数分経っても認証できず、次のバスに乗るように言われて降ろされました。

ロックダウンが終わって外出できるようになった時、年金の支給日には銀行窓口に人が殺到したものの、サービス時間が短縮されていたため入店が制限され、何日も通って何時間も並んだことで、倒れた人もいます。
ネットで確認すれば分かるのに、デジタル難民だったため窓口に行くしかなかったのです。

上海でも、少子高齢化が進み日本とあまり変わらない割合となっています。
中国ではSNSが発達していたため、上記のような状況が投稿されて対策が講じられることとなりました。

日本の今後も懸念される

中国では、政府が研修でスマホの使い方を教えたり、子世代が親世代に教えたりしています。
親に教えるにはどうしたらいいか解説するアプリも、複数登場しているのです。

少子高齢化が進む日本でも、同様のことが起こる可能性は高いでしょう。
日本は中国より高齢化が進んでいて、東京では65歳以上の単身世帯が10%以上あるため、子どもから教えてもらうのも難しい状況です。

日本でも、中国の様にデジタル化が急速に進んでいます。
病院でもネット予約システムを導入しているところが増え、薬局でもアプリを使って処方箋を送信しておくと、待たずに薬を受けとることができます。

レストランでもタッチパネルやQRコードで注文するようになっていて、アプリを使用すると割引クーポンやモバイルオーダー、ポイント付与などができるところも多いでしょう。

また、スーパーではセルフレジや電子マネー決済に対応しているところも多くなっています。
うまく活用すれば便利なサービスですが、デジタル難民となった高齢者は使いこなせず、使える人との格差が生じることとなるでしょう。

しかし、人手不足に悩む日本の社会では、デジタルによる自動化の流れは止めることができないでしょう。
高齢者をデジタル難民にしないためには、政府や地域、家族、事業者などがそれぞれの立場で支えていく必要があります。

高齢になると、今までの生活スタイルを変えることには不安があるため、従来のやり方に拘ることが多いでしょう。
デジタル化を推進するにあたっては、高齢者に優しいデジタル社会を目指すべきでしょう。

まとめ

高齢者の中には、デジタルについて理解できない、興味がないという人が少なくありません。
しかし、社会がデジタル化している現代では、スマホなどを持たない、使いこなせないと不便な思いをする可能性が高いでしょう。
現に、中国ではデジタル化により、バスに乗れなかったり銀行で並んで倒れたりする高齢者がいて、政府でも対策しています。
日本でも、デジタル化を推進する上では高齢者の生活も考えるべきでしょう。