経営者が認知症になったら?事前に知っておきたいリスクと対策

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経営者が高齢化している昨今、経営者が認知症になる可能性も少なくありません。
超高齢社会になった今、経営者が認知症になるリスクについても考えておくべきです。
経営者が認知症になった場合は、どのようなリスクがあるのでしょうか?
事前に備えるために、知っておきたいリスクと対策を解説します。

経営者が担う役割に起こるリスク

経営者は、会社の方針を決め全体の支えとなる役割を持ちます。
特に、創業者であればカリスマ性を持ち合わせていることも多いでしょう。
経営者の判断に、社員は安心して従うことができたと思います。

しかし、気が付いたら経営者の判断が何かおかしい、本当に大丈夫かと感じることがあります。
また、予定を忘れやすくなったり、今までの成果を忘れてしまったりすることもあるでしょう。

最初のうちは、たまたまだと思うかもしれません。
高齢化している以上、たまにはミスもあると笑って受け流すことができるでしょうが、頻繁に起こるようになると何かおかしいと感じるようになるでしょう。

悪化すると、次にやろうとすることをすぐに忘れる、取引先の名前を忘れる、判断に自信が持てなくなったりあからさまに間違った判断を下したりする、などの行動が目立つようになります。

おかしいと思って病院に連れて行ったら、認知症だと診断された場合、本人はもちろん家族、従業員もショックを受けるでしょう。
65歳以上になると、7人に1人が認知症になり、将来的には5人に1人に増えるといわれているので、高齢化した経営者が認知症になっても不思議はないでしょう。

経営権はどうなる?

経営者が認知症になってしまった場合、まず気になるのが会社の経営です。
社長は、認知症になっても社長のままでいてもいいのでしょうか?
実は、認知症だからと言って社長や役員といった立場から退かなくてはならない、ということはありません。

しかし、判断能力が乏しいと判断されて成年後見制度を利用する場合は、役員の欠格事由に該当することになるため、役員を強制的に辞めさせられてしまうでしょう。
成年後見制度を利用しなくてもいいくらいに判断能力があれば、役員や経営者を継続しても問題はありません。

過去の契約は?

認知症になっても、周囲のサポートを受けて経営を続ける人もいるでしょう。
しかし、新たに結んだ契約や契約内容の変更、打ち切りなどがあった場合、契約内容は有効となるのでしょうか?

認知症は、一見してわからないこともあります。
話してみても、普通に感じることが多いのです。
取引相手も、契約を結ぼうとしたときに認知症だと気づくことは少ないでしょう。

認知症であっても、契約を結んだ場合は原則として有効です。
ただし、医学的見地から判断能力がないほどの重度の認知症だと認められた場合は、契約が無効になることもあります。

しかし、明確な基準はないため、基本的には押印してしまった時点で契約は有効になります。
後から、判断能力に欠けていたと主張して証拠を出すことで、無効化できることもあるのですが、無効にするには裁判か契約者同士の話し合いで決めることになるでしょう。

口座の管理

認知症になると、口座の管理が難しくなります。
暗証番号を忘れたためATMでお金を引き出すことができなくなったり、窓口で署名できなくなったりするかもしれません。

金融機関は、判断能力が著しく低いと判断した場合は、口座を凍結することがあります。
凍結されてしまえば、本人や家族も口座からお金を引き出すことができません。
生活費などが不安になりますが、経営者の場合は経営にも大きく影響します。

銀行からの借入金がある場合、自宅や保険などを担保にしていることがあります。
認知症になった場合は、担保を差し押さえられるのか不安になるかもしれません。
しかし、認知症というだけで一括返済や担保の差し押さえ、追加の担保などを請求されることはありません。

しかし、返済が遅れることは警戒されてしまいます。
また、業界内でも認知症だという評判は広まってしまうでしょう。
取引先にも影響して、取引を打ち切られ業績が悪化する可能性はあります。

認知症になった時のリスクへの対策

経営者が認知症と診断されたときは、様々なリスクが生じることがあります。
高齢化してきたときは、あらかじめリスクへの対策を講じておくべきでしょう。
具体的には、どのような対策があるのでしょうか?

後見制度と家族信託

認知症になり、意思能力の低下や財産管理などが難しい場合は、成年後見制度を利用することができます。
申し立ては4親等以内の家族が行い、財産管理人は裁判所が決定します。

後見制度には、任意後見と法定後見があります。
任意後見制度の場合は、あらかじめ自分で後見人を選んで置き、必要になった時に後見人となってもらいます。

後見人に任せる内容は事前に決めて置き、公正証書によって任意後見契約書を結んで置き、必要な時に効力を発揮するようにしておきます。
必要にならない限りは、後見人とはなりません。

法定後見は、後見、保佐、補助の3つの累計から判断能力などを加味して選択されます。
後見が担う役割は非常に幅広く、財産管理だけではなく契約の代行もできます。
保佐は重要な契約だけ、補助は本人の同意のうえで行動するなど、類型によって違いがあります。

経営者の認知症によるリスクを避けるには

日本では、高齢者の中で認知症になる人が年々増えています。
15~20%で発症する認知症は、だれでもなるものだと思っておいた方がいいでしょう。
認知症をむやみに恐れるのではなく、周囲でサポートできるように備えておきましょう。

経営者の場合、認知症になると自分や家族だけではなく、従業員や取引先にも影響することになります。
現在の実務を踏まえて、サポートしてもらえるように備えておきましょう。

経営者は、起こりうるリスクに対してあらかじめ備えておく義務があります。
認知症になってから対処しようとしても、適切な対処ができるとは限りません。
常に、様々なことに備えておきましょう。

まとめ

超高齢社会と呼ばれるようになり、経営者の高齢化が進む昨今は、経営者が認知症になる可能性も高くなっています。
認知症になると、経営に支障が出るようになり、契約の有効性も疑われてしまうかも知れません。
また、金融機関の対処も厳しくなるでしょう。
経営者は、何かあった時は自分や家族だけではなく、従業員や取引先など多くの人に影響があるということを忘れないようにして、備えておいてください。