ビックモーター問題について解説します

取締役の法的責任

中古車販売会社大手のビッグモーターが自動車保険の保険金不正請求を行ったとして、大きな問題となりました。

ビッグモーター問題とも言われて社会問題となったのですが、具体的には何があったのでしょうか?

ビッグモーター問題というのは一体どのような問題だったのか、解説します。

ビッグモーター問題の経緯

ビッグモーター問題が大きく注目を集めたのは、2022年末から2023年にかけてのことでした。

問題の原因となったのは、不自然なノルマの設定です。

ビッグモーターでは自動車修理も受け付けていたのですが、実は社内で修理費に対するノルマを設けていました。

修理1台当たりのノルマなのですが、本来修理費はコントロールできるものではないため、ノルマを設けても達成するための努力というのはできません。

設定されていたノルマは14万円ですが、例えば車の傷の修理で5万円程度の修理費という車が5台続いた場合、ノルマには1台当たり9万円、合計で45万円足りなくなります。

次の依頼は、約60万円かかる修理が必要でなければいけません。

どうやっても無理なノルマを達成するために社員が行ったのが、わざと傷を増やして修理費を増やすという方法でした。

車にドライバーで傷をつけたり、擦り傷をつけたり、場合によってはゴルフボールを詰めた靴下をぶつけてへこませたりすることもあったのです。

社員がノルマを達成するために無理な行動をするのは、ビッグモーターのノルマ未達のペナルティがあります。

ノルマが達成できなかった場合は降格処分となることが多く、他にも歩き方が悪い等の理不尽な理由で降格になることがあったのです。

理不尽な対応は今に始まったことではなく、産経新聞の2016年の取材でも営業成績未達の社員が罰金を支払う慣行があると報じられています。

ビッグモーター問題が発覚したのは、店舗の従業員による内部告発が発端でした。

調査結果

損害保険の保険金に関わる内容だったため、損害保険会社がビッグモーターの調査を行った結果、33か所の修理工場で合計300件以上の不正があったと分かったのです。

損害保険会社はビッグモーターに厳格な調査を求め、外部の弁護士などで構成された特別調査委員会が設置されて調査を行いました。

調査の結果、保険金請求に関して不正行為があったことが発覚したことで、マスコミも大々的に報道することとなったのです。

また、従業員のアンケート回答でも、不正な作業に関与したと4分の1が回答しています。

今回の問題では、保険金不正請求以外にも犯罪行為や不正が見つかっています。

まず、ビッグモーター店前に合った街路樹の切断、並びに除草剤を撒いて枯らしていたことが発覚し、社員が器物破損で逮捕されています。

また、虚偽の自動車保険契約を結んでいた疑いもあります。

契約の対象となったのは個人所有ではない展示車両などで、保険業法違反の恐れがある行為です。

ビッグモーター問題の結果

ビッグモーター問題によって調査が行われたことで分かったのが、いびつな企業風土です。

調査報告書にも書かれていて、原因となったのは異常なノルマの設定だとされています。

達成が困難なノルマを課されたことで、ペナルティを受けないよう社長の顔色ばかりを窺うようになったと見られます。

顧客のことは一切考えず、幹部は部下をどう扱うかも一任されているという、あり得ない状況となったのです。

ビッグモーターが保険金を不正に請求しても、自身が修理を依頼していなければ関係ないと思っている人もいるでしょう。

しかし、実は間接的な影響を受けるのです。

保険というのは、加入者から集めたお金から保険金を支払うため、支払う保険金が多くなれば保険料も高くなってしまうのです。

自分が一切修理を受けなくても保険金が高くなるため、納得がいかない人も多いでしょう。

また、修理を頼んだ人にとってはさらに大きな影響があります。

自動車保険は、保険金を受け取った場合事故カウントが入り、等級が下がってしまいます。

等級が低ければ保険料が高くなってしまうため、ほとんどの人は少額の修理であれば保険を使わず自費で修理しているのです。

不正に増やされた修理費を見て保険を利用した人の中には、本来の修理費であれば自費で修理した人もいるかもしれません。

また、傷を増やされたのは全ての車ではありません。

元々の傷だけ修理された車もあるので、自分の車が傷を増やされたかどうかは判断が難しいでしょう。

修理前に写真を撮っていない人は、証明できず泣き寝入りになるかもしれません。

保険会社は知らなかったのか?

保険会社でも、ビッグモーター問題によって支払った保険金に関する精査を行う必要があり、故意に傷を増やされた人に対しては下がった等級を見直す必要もあります。

契約者とも相談して、必要なら等級を見直さなくてはならないでしょう。

本来であれば必要な対応ではなく、調査結果によっては更に見直しが必要になる可能性もあるため、かなりの工数となります。

件数によっては、時間もかなりかかるでしょう。

しかし、保険会社は不正を知っていたのではないかとも言われています。

他社と比較して、ビッグモーターは修理費が平均してかなり高くなっているはずなので、事前に調べて把握していたのかもしれません。

ビッグモーターと特に関係が深い損害保険会社は3社あり、中でも損保ジャパンはビッグモーターに2011年以降37人が出向しています。

少なくとも、可能性は考慮していなければおかしいという意見も増えています。

また、ビッグモーターの代理店委託契約も、通常であれば不正が発覚した時点ですぐに破棄されることが多いのですが、損保ジャパンは問題がかなり大きくなってから委託契約を終了しており、東京海上日動火災保険と三井住友海上火災保険は自主的に終了することはなく、関東財務局の命令でビッグモーターの代理店登録が取り消されています。

もしかしたら、保険会社は不正を黙認していたのかもしれません。

ビッグモーターは保険代理店として多くの契約を得ているため、今後のことを考えてできるだけ契約解除を引き延ばした可能性もあるでしょう。

まとめ

ビッグモーター問題は、保険金不正請求を中心としたビッグモーター全体の不正やいびつな企業風土、犯罪などのことをいいます。

ビッグモーターでは、修理依頼を受けた車に傷を増やして修理費を加算していたのです。

修理費を増やしていた背景には、修理費に対してノルマを課すビッグモーターの体制がありました。

保険会社も知っていたのではないかという疑惑なども持たれていて、今後さらに影響が広がる可能性も考えられます。