自動運転、事故責任は誰が負う? 速度超過の「違反者」は誰?

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生活に深く根差している自動車ですが、自動運転技術の発展により環境が大きく変わる日も近いと思われます。

しかし、自動運転になった場合、万が一事故が起こった時は誰が責任を負うことになるのでしょうか?

また、速度超過の違反者は誰になるのでしょうか?

自動運転の責任は誰が負うのか、解説します。

事故が起こった時の責任は誰に?

自動運転で事故が起こった場合、誰に責任があるのでしょうか?

可能性としては、自動車の所有者と自運転のプログラムを開発した会社、センサー等を開発した会社などが考えられます。

国でも以前から事故の責任に関しては言及していて、民事責任に関しても従来の責任を維持する方向で考え、保険会社から自動車メーカーに対する求償権行使の実効性を確保できるよう仕組みを検討しているのです。

また、一部の地域に限っては自動運転レベル4となる無人運転移動サービスの導入を図っているのですが、運行供用者は車両保有者の自動車運送事業者となり、高速道路における隊列走行トラックは走行形態に応じて運行供用者を特定することとなっています。

自動運転に関しては、ハッキングを受ける危険性もあります。

ハッキングによって事故が起こった場合は、保有者に責任があるかと思うかもしれませんが、責任がないとみなされた場合は政府保障事業で対応されるでしょう。

また、自動車の保有者らが必要なセキュリティ上の対策を講じておらず保守点検義務違反が認められる場合においては、また対応が異なるものとしています。

ソフトウェアが原因で事故が起こった場合は、開発者が不法行為責任を追及される可能性があります。

自動運転車両は、販売後もソフトウェアをアップデートする必要があるでしょう。

しかし、自動運転車両としての欠陥に関する製造物責任法の適用は、一般車と同様に引渡時点での欠陥によって判断するという基準が設けられました。

アップデートに関しては、継続して検討されます。

使用する上での責任については、消費者がリスクや使用方法を正しく理解するよう、使用上の指示や警告が求められるのです。

不適切な指示や警告であれば、安全性に欠けると判断される可能性があるので、技術的動向を踏まえて継続して検討されます。

刑事責任関連については、今後の交通ルールの在り方に応じて検討が行われるべきものであるとして、自動車事故により死傷結果を生じさせた者に対する刑事責任については、実際の事例ごとに注意義務違反や因果関係の有無などを判断します。

注意義務違反や因果関係の有無などを判断するためには、事故原因を明確化するためデータ記録や原因究明体制を構築する必要性があるでしょう。

今後、自動運転車を市場化する際には、交通ルールや運送事業に関する法制度などにより、関係主体に期待される役割や義務を明確化していくことが重要です。

ちなみに、自動運転車はどのような道路状況であっても必ず制限速度を守るようにプログラムされるため、速度超過の違反はなくなります。

万が一、何らかのエラーで速度超過した場合は、開発者の責任となる可能性が高いでしょう。

外部での検討

自動運転に関しては、国だけではなく外部でも様々な検討が行われています。

自動運転における損害賠償責任に関する研究会では、自動運転レベル3~4における自賠法の損害賠償責任の課題について検討を進めてきた「自動運転における損害賠償責任に関する研究会」に関して、異なる論点からも検討を進めています。

運行供用者の注意義務や、地図情報やインフラ情報といった外部データの誤り、通信トラブルによって起こった事故の扱いなどについても議論していて、問題点によって責任にどのような違いが生じるかを話し合っているのです。

注意義務に関しては、今後生じる自動運転システムのソフトウェアやデータなどのアップデートや、自動車の修理の必要性を自動運転システムが通知することなどについても、注意義務を負う可能性が考えられるとしています。

万が一通信遮断などが発生した場合でも、安全に運行できるよう外部データに関しては対策が必要で、安全性が確保できていないようならシステムには欠陥があると判断される可能性があるでしょう。

制度整備の進捗状況

ソフトウェアの更新に係る責任の検討については、経済産業省・国土交通省による委託事業「高度な自動走行システムの社会実装に向けた研究開発・実証事業:自動走行の民事上の責任及び社会受容性に関する研究」において技術的動向を踏まえ、継続的に議論を行っていいます。

通常有すべき安全性と使用上の指示・警告などの関係の検討についても、技術的動向を踏まえた継続検討課題として関係省庁と議論の上、進め方を含めて検討を進めているのです。

また、2019年5月に改正道路交通法と改正道路運送車両法が成立し、「自動運行装置の保安基準対象装置への追加や、自動運転車への作動状態記録装置」の設置義務化が盛り込まれるなど、実用化に向けて法改正が進められています。

作動状態記録装置については、記録する内容の具体的項目が定まっておらず、国連WP29(自動車基準調和世界フォーラム)による国際的議論などを踏まえたうえで具体化されていくことになるでしょう。

自動運転の事故責任に関しては、デジタル庁が自動運転車の社会的ルールの在り方を検討するサブワーキンググループを設置し、有識者らからの意見聴取が始まっているため、今後議論を重ねたうえで定められていくこととなります。

意見聴取では、刑事責任の免責規定に注目してさまざまな意見が有識者から挙げられました。

具体的には、個人の過失に関する責任は免責するべき、民事や刑事の免責を拙速に決めるべきではない、といった意見があるのです。

海外の事例

海外の事例を見ると、イギリスでは「自動運転と電気自動車に関する法律」という法律が2018年7月に可決されました。

自動運転車も、自動車保険の契約が義務となったため、強制的に加入させられるのです。

各国ともに、自動運転車に関しては責任の所在について議論を進めています。

しかし、WP29などの国際的な議論による結果待ちの部分も多いため、今後基本的な方針が決まらない限り、各国で具体的な内容を決めることができないでしょう。

まとめ

自動運転が近く実用化されると思われる現在、気になるのは自動運転によって起こった事故の責任は誰にあるのかという点です。

状況によって責任を負う人は異なり、少なくとも車両保有者がすべての責任を負うということにはならないでしょう。

また、プログラムに従って動く自動運転車は速度超過をすることが原則としてありえないのですが、万が一速度超過をした場合は開発者の責任となる可能性が高いでしょう。