賃上げ傾向による中小企業に及ぼす影響は?

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日本の企業では、2022年以降は物価上昇などの影響もあり、賃上げの傾向になっています。

最低賃金は2023年に大きく改定され、過去最高の引き上げが実施されたのです。

しかし、中小企業にとって賃上げは歓迎するべきことなのでしょうか?

賃上げ傾向が中小企業に及ぼす影響について、解説します。

賃上げの傾向と中小企業への影響

2024年度の帝国データバンクの調査では、正社員の賃金改善の見込みがあると回答した企業は過去最高値である59.7%となりました。

2021年度には42.0%まで減少し、以降は54.6%、56.5%と徐々に上昇し、2024年度にはさらに上昇したのです。

具体的な内容としては、53.6%がベースアップ、27.7%が賞与などの一時金と回答しています。

従業員が多い企業だけが賃上げの見込みとなっているのではなく、中小企業の中にも増えているのです。

今後はさらに賃上げをする企業が増え、企業の人材戦略や採用活動などにも多くの影響が出てくることになるでしょう。

ただし、正社員だけではなくパートなどの非正規社員も賃上げになる可能性が高いため、正社員のモチベーションが低下する可能性があります。

正社員と非正規社員との賃金格差が少なくなってしまえば、正社員のモチベーションが下がり、離職の原因になるかもしれないのです。

また、求職者や就活生が企業を選ぶ際の基準として給与は重視されるため、給与の高い企業に多くの人が集まってしまうでしょう。

特に、近年は賃上げのニュースが増えているため、給与額は今まで以上に注目されています。

業界や規模などが同程度の企業であれば、提示されている給与額によって求人の成否が分かれることになるでしょう。

賃上げできるだけの余力がない中小企業も多いのですが、他社に遅れを取ることになるかもしれません。

賃上げをした場合は、当然ですが人件費も増加することになり、7割以上の企業が人件費の増加が見込まれると回答しています。

たとえ人件費が増えたとしても、増加分以上の利益を生み出すことができる組織づくりや、生産性を高められる人材戦略を実施できれば、問題はないでしょう。

賃上げへの対策

現在、賃上げ傾向は特に高まっているので、企業では人材戦略や採用などにおいても賃上げの対策をしなくてはいけません。

賃上げの対策として、賃金を上げる以外の待遇、例えば就労環境の改善や、福利厚生を充実させるといった方法があります。

たとえ給与が据え置きであっても、働きやすい環境になって待遇もよくなれば、従業員も満足して働くことができ、離職率も減少させることができるでしょう。

少子高齢化によって労働人口が減少したことは、賃上げの原因の1つとされているのですが、労働人口は今後も減少していくと考えられます。

企業は単に賃上げをして人材を確保するだけではなく、労働人口が少ない中で生産性を高め、さらなる利益を創出する必要があるでしょう。

利益を増やすためには、社員がそれぞれ生産性を向上させる必要があるため、生産性を向上させる施策に取り組むようにしましょう。

生産性を高めるにはスキルアップやリスキリングなどがあるのですが、他にも社員同士で密にコミュニケーションをとるだけでも効果があるのです。

また、業務マニュアルの作製も生産性向上につながることもあるため、様々な施策の中から取り組みやすいものを選び、始めてみてください。

現在、採用市場は人手不足から売り手市場になりつつあるため、多くの企業が求人を出しているのです。

求人情報があまりに多いと、自社の情報が埋もれてしまう可能性も高いため、求職者や就活生に情報を届ける工夫をしなくてはいけません。

中小企業が求人の中でアピールするためには、自社について認知を広げる取り組みをする必要があるのです。

特に、昨今では採用ブランディングを行って自社の認知を広げるという方法が注目されています。

採用ブランディングというのは、自社の魅力を求職者や就活生向けに戦略を練って発信していく取り組みのことです。

自社の理念を伝えて共感を覚える人、事業に魅力を感じる人などを見つけ、働きたいと思ってもらい応募を増やします。

応募した理由が理念や事業内容への共感なので、給与をはじめとした条件では意欲がそがれにくいでしょう。

また、入社後は高いモチベーションをもって仕事に取り組んでくれることが多いので、早期離職の可能性を抑えることができます。

今後、多くの企業は賃上げに伴って給与の額を他社と競っていくことが増えると思いますが、給与額だけで人材確保を成功させるのは難しいでしょう。

賃上げの傾向は高いものの、賃金だけにこだわらず自社の魅力を発信していくことを重視しましょう。

しかし、賃上げにはメリットもあるため、メリットを理解したうえで賃上げをするかどうかを決定するべきです。

賃上げは、わかりやすく仕事への報酬が増加するというものなので、従業員のモチベーションを高めることにつながります。

仕事に対するモチベーションが高まることで、離職率の低減や生産性の向上などの効果にも期待できるのです。

また、自社の生産性について見直すきっかけにもなり、今まで複数人で取り組んでいた仕事も1人でできるようになるかもしれません。

賃上げをすることで人件費が高騰するのは当然ですが、コストカットをしたうえで増加分以上のメリットを得られれば問題はないでしょう。

政府では、『賃上げ促進税制』を強化して賃上げに取り組む企業を応援することにしています。

給与が前年より増加していれば、増加率によって税額控除率が高くなるため、節税になるのです。

教育訓練費も対象となり、前年より10%増加していれば税額控除率が5%上乗せになります。

大企業や中堅企業であれば、増加した支給額の最大35%を税額控除として受けられるようになったのです。

制度を活用することで、企業温賃上げにかかったコストを軽減することができ、教育訓練費も上乗せ要件になったことで従業員のスキルアップにも取り組みやすくなりました。

従業員のスキルを底上げすることで、自社の生産性も高まり他社との競争力も高くなるでしょう。

まとめ

現在、日本の企業の中で賃上げの傾向が高まっていて、中小企業にとっては大きな負担となることも増えています。

賃上げをする企業が多いため、人材を確保するためには自社も上げざるを得ないと考えることが多いのですが、賃上げ以外の点で自社の魅力を発信するという選択肢もあるのです。

ただし、賃上げには様々なメリットがあり、税額控除などの制度もあるため、賃上げをするべきか一度よく検討してみましょう。