なぜ米の値段が上がっているのか??

その他

2024年夏ごろから、米の値段が一気に上がりました。

以前から徐々に値上がりは続いていたのですが、6月頃から値上がり幅が大きくなって前年の2倍近い値段となったのです。

日本人の主食であるのに例年になく高騰していることで、家計に大きなダメージを与えているでしょう。

なぜ高騰が続いているのか、解説します。

新米が出ても値段は下がらない

米の値段が上がり続けてとうとう2倍近い値段になったとき、農林水産省では米不足が原因となって値段が上がっていると言っていたのです。

いくら高騰しても政府の備蓄米を放出することはなく、新米が出るまで待つようにというスタンスを続けていました。

高騰した当時、農林水産大臣は新米が流通するようになれば米不足が解消されるため、価格も一定水準に落ち着くと述べていたのです。

しかし、実際に新米が出荷された後も今まで通りの水準となってしまったのは、需給バランスに関する考え方に問題があると思われます。

7月末には、米の在庫が82万トンと前年よりも40万トン少なかったことで米不足が起こったのですが、猛暑やインバウンドの需要増が原因といわれていたのです。

なかでも特に大きな原因となっているのが繰り返される減反で、米の生産量が年々減少していることといえます。

減反は毎年行われていて、2023年は猛暑と減反、さらにインバウンドが増えたことによる消費の増加という3点があったのです。

合計はちょうど40万トンと在庫量の減少と一致するのですが、今後さらに減少していく可能性が高いと考えられます。

農林水産省が考えている状況とは異なり、現在も需給バランスは崩れた状態が続いているため、まだ値段は下がらないでしょう。

減反政策をやめることはできないのか

JA農協と農林水産省は、毎年減反を続けていて米の生産量を減らすように指導しており、結果として2021年から2023年の間で値段は2割増となりました。

JA農協では、2024年の農家への前払い金を前年より2割から4割多く支払っているのですが、上昇したのは今後の米の値段が高い状態で推移するとみているからでしょう。

米が不足している場合の市場は売り手市場となり、すでに普段より多く支払っている以上は、値段が下がるわけもありません。

米不足の中、来年度は米の作付けを増やすことになると思われるのですが、コストも例年より高くなってしまうでしょう。

2023年度のエンゲル係数は29.8%と、40年ぶりとなる高水準を記録したのですが、今後さらに米の値段が上がるようなら生活はさらに厳しくなってしまいます。

米の生産を制限しなければ生産量は大幅に増え、国内の需給と生産量で量を調節することができ、食料自給率も高めることができるでしょう。

しかし、減反は農協にとって非常に重要な制度なので、いくら米不足になっても廃止することができません。

減反によって補助金が出るものの消費者は高額な値段で購入することになってしまい、取扱量が減少することで中小の米卸売業者が廃業しつつあるのです。

今後の展望

米の値段が下がってしまうと、米の生産を続けられなくなるとも言われていますが、値段を抑えて生産を維持するには米の作付け量を増やすことが急務といえます。

少量の作付けしかしていない米農家は多く、コストと生産量が見合わなくなってしまうのです。

農家の大半は小規模な範囲でしか生産をしておらず、米生産は赤字のままですが、なぜ赤字でも米生産をやめないのでしょうか?

農家は何も、他の収入で赤字を補填しながら生産を続けているというわけではなく、国民のために生産しているというわけでもありません。

兼業農家は、米農家の赤字分を損金として計上することで、給与所得から納付した税が還付されるため、利益が出るのです。

米の値段が市場任せで決まるのであれば、小規模な農家は農業をやめて専業の農家に農地を貸し出すことで、地代を得るという方法がありました。

米の値段の引き上げは、兼業農家を滞留させてコメ消費を減衰させ、減反を実施させることとなって米農業を衰退させることとなったのです。

欧米では、以前から価格支持ではなく直接支払われる政府からの交付金に転換し、農家の所得を保護しています。

米の値段が下がった場合でも農家に直接支払うことで、1500億円ほどの財政負担で農家に利益をもたらすことができるのです。

以前であれば、麦を収穫した後で6月に田植えをする二毛作が行われていたのですが、兼業農家が増えたことで二毛作は消えてしまいました。

田植えの時期はゴールデンウィークになってしまいましたが、以前のように6月に田植えをして10月に収穫すれば、高温障害がなくなるでしょう。

麦の生産量も増加して、食料自給率は70%まで向上すると試算されているため、政府は減反の廃止とともに二毛作を復活させることも望まれます。

石破氏は総理になる前から、減反の廃止と直接支払いという政策を提唱しているため、現在は改革を実行するチャンスではないでしょうか?

しかし、実際に行うとなればかつての郵政民営化並みのかなり大きな改革となるため、実行は困難といえます。

食糧管理制度で政府が米を購入していたときは、政府が米の購入価格を下げようとすると自民党から拒否されていたのです。

改革自体、石破総理が一人で進めていけるというわけではなく、多くの議員の協力が必要となります。

しかし、自民党内でも農政改革に前向きではない議員も多く、農協を説得するのも困難でしょう。

国会では説得がかなり難しいと予想されますが、農林水産大臣に起用される小里泰弘氏は石破氏の主張を実現できるかがわかりません。

せめて政府の備蓄米を放出してもらうことができれば、一時的にしても値段が落ち着くので、国民の生活も一息つくことができるのではないでしょうか?

まとめ

家庭の食費に大打撃を与えている米の値段の高騰ですが、新米が流通すれば値段も下がるといわれていたのに全く下がる気配がないのです。

猛暑やインバウンド需要などが米不足の原因といわれているのですが、米不足の根本的な原因としては減反もあります。

今後、減反政策の廃止や政府主導による米の値段の抑制などが可能かどうかは、石破総理と農林水産大臣の手腕にかかっているといえるでしょう。