NTT法とは?

その他

2024年4月に、国会で改正NTT法と呼ばれる法案が成立しました。

また、改正後はNTT法を廃止するという案もあったのですが、そもそもNTT法というのは何を定めているのでしょうか?

また、改正によって何が変わったのでしょうか?

NTT法の内容や改正された点、廃止とはならなかった背景などを解説します。

NTT法の見直しはなぜ必要だったのか

2024年4月、NTT法の改正に関して参議院本会議で可決されたのですが、NTT法とはいったい何を定めたものなのでしょうか?

かつて国営であって電電公社が民営化された、NTTの運営に関して定められた際にNTT法と呼ばれる法律が定められました。

もともとは国営企業だったNTTは、民営になった後も総務省管轄の特殊法人となっているため、法律で多くの規制がされているのです。

改正については、NTTは前向きに受け止めているのですが、他の通信事業者であるKDDI、楽天モバイル、ソフトバンクなどは、反対しています。

実際に、2023年にはNTT法について、他の事業者との間で意見が真っ二つに割れてしまい議論を重ねていたのです。

改正されることになったのはなぜかというと、防衛費を増やす際にできるだけ国民の負担を増やさないようにすることが目的となっています。

増大する防衛費の財源を確保するために、政府が保有しているNTT株を売却したいのですが、NTT法で3割以上政府が保有しなくてはいけないと定められているのです。

政府や地方公共団体が保有しているNTT株を売却するためには、法律を改正しなくてはならないため、法改正並びに廃止の検討がされることになりました。

NTTは制約を取り払いたい

NTT法の見直しは防衛費を確保するためだったのですが、きっかけとなった訴えはNTTから出されたものでした。

NTTは1985年に民営化されていて、当時定められた法律をベースとしてNTT法は成り立っていました。

しかし、NTTは東西に分かれ、さらにNTTドコモやNTTコミュニケーションズなど複数の企業に分裂しており、法改正も何度かされてきたのです。

法律の本質的な部分については当初定められたNTT法から変わっていないため、40年前の価値観にのっとったものとなっていました。

NTTがNTT法を改正して欲しいと訴えたのには、現在になって事業で制約になってしまっている部分があるからです。

まず、NTTには研究開発の成果を開示する義務が定められているため、共同研究をしたくても成果を開示されるのが困るというケースで断られることがあります。

NTTは他社から研究開発についての開示を求められたら応じる義務があるのですが、海外企業も対象に含まれるため、安全保障上の問題もあるのです。

2つ目に、取締役就任の条件が日本国籍を持つ人に限られるという制約があるため、外国籍の人は取締役になることができません。

世界規模で事業を拡げていて、外国人を雇用しているケースも多いのですが、取締役に慣れないためキャリアパスが限られているのです。

優秀な外国人社員を獲得するのが難しくなってしまうため、撤廃して欲しいと求められていました。

また、国民が通信を必要とした場合に日本全国で提供しなくてはならないという、ユニバーサルサービスの提供義務もあるのです。

NTT法によって、いくら過疎化が進んで人口が少なくなった地域でも、サービスの提供をやめることができないという義務があります。

対象となるのは固定電話ですが、従来のメタル回線は大幅に減少して今は光回線が主流となっているのです。

しかし、メタル回線がいくら減少しても廃止することはできないため、回線維持のために毎年500億円もの赤字が生まれています。

NTTでは、上記のようなNTT法で定められている様々な義務などについて、改正して欲しいと願っているのです。

競合他社がNTT法改正に反対する理由は?

改正NTT法では、NTTが社名を変更することが認められたうえ、研究開発の開示義務や外国人が取締役になれないという規制が撤廃されました。

しかし、競合他社は改正NTT法が成立したときにそれぞれ見解を表明しており、改正に反対しているのです。

反対している理由は規制が撤廃されたという点ではなく、改正に伴って定められた附則が原因となっています。

改正は一度に実施されるのではなく、段階別に進められることとなり最初は研究開発の開示義務の撤廃が進められているのです。

次いで、別の規制に関しての議論を進めて変更するかどうかを話し合い、決まった内容に沿って国会に追加で改正案が提出されます。

しかし、附則には法律の廃止を含めた検討を加えて、2025年開会の国会の常会を目途に改正案を提出すると書かれているのです。

競合他社が反対しているのはNTT法の改正ではなく廃止であり、政府が急速に廃止も含めた検討を進めようとしていることに危機感を抱いています。

なお、2025年1月の通常国会ではNTT法の廃止については当面見送りとなり、改正案を提出するという方向になっているのです。

また、NTT法の改正に反対している理由には、NTT東西が保有して管理している、競合から見て特別な資産が存在していることもあります。

特別な資産というのは、固定ネットワーク敷設に必要な電柱や管路、局舎などのインフラのことで、現在のものは電電公社が国のお金で整備したものです。

資産価値は現在の価値で40兆円にもなるといわれていて、民間企業では同規模の設備を整えることは難しいといえます。

特別な資産を持つ巨大企業であるため、政府が主導して分離・分割が進められ、業務範囲などが明確に定められて分けられ、統合も防がれたのです。

しかし、NTTは2020年にNTT法の影響かにないNTTドコモを完全子会社化するという、再統合ともみられる動きをみせていました。

NTT法が廃止されてしまうと、グループ企業が再統合してしまいインフラ設備を独占するのではないか、という懸念も持たれているのです。

現在、競合他社のサービスはNTTの設備を利用することを前提として提供されているため、独占されると競争力を失うこととなります。

まとめ

NTT法は1985年の電電公社民営化に伴って定められた法律で、NTTについて様々な制約を定めているものですが、40年が経過して時代にそぐわないものとなってきました。

NTTでは改正を希望していて、できうるなら廃止して欲しいと望んでいるのですが、競合他社であるKDDIや楽天モバイル、ソフトバンクなどは廃止に反対しているのです。

NTTが保有するインフラは各社も利用しているのですが、廃止によって独占されることが懸念されています。