新宿にある「ニチガク」という老舗の塾が、2025年1月4日に突然教室を閉鎖しました。
運営企業が資金繰りに行き詰まってしまい、破産申請をすることになったのですが、実は近年経営難とされる塾や予備校が増えているのです。
ニチガク破産の背景から、今後の塾の経営について考えてみましょう。
なぜニチガクが破産することになったのか
ニチガクは株式会社日本学力振興会が運営する企業で、1983年から40年以上にもわたって運営されている老舗の塾でした。
しかし、少子化に伴って入塾生は減少を続け、新型コロナウイルスも塾生を減少させる原因となりました。
さらに、塾生の授業料の未払いなどもあったことで経営に大きな負担がかかってしまい、教室の閉鎖と破産に至ることとなったのです。
少子化という社会問題は、特に塾の経営に対しては直接的なダメージとなるため、他の塾も対岸の火事とのんびりしていることはできません。
塾に子供を通わせているという人も、通っている塾の経営状況、財務状況を一度確認しておいた方がいいでしょう。
また、ニチガクでは破産直前にも新規の生徒を募集しており、何人も新たに契約していました。
しかし、破産直前に契約をしてお金を受け取っていた場合、詐欺罪になるのではないかと気になる人もいるでしょう。
経営陣が破産する予定をすでに立てていたのか、あるいは破産するつもりがなかったのかによって、詐欺罪になるかどうかは変わります。
詐欺罪は、人をだまして財産やお金を交付させる行為となっているため、ニチガクの場合はだます意図があったかどうかが焦点となるでしょう。
すでに破産を予定していたのに、問題なく塾が続くかのような態度で契約を続け金銭を受け取っていた場合は、詐欺罪になるかもしれません。
また、契約を確実に順守すると誤認させて支払いを受けていたという場合も、詐欺罪になった事例があるのです。
破産直前の契約は、詐欺罪だけではなく景品表示法違反にもなってしまうかもしれません。
例として、十分なサービスを継続して提供できると表示して契約したのに、すぐ破産して閉鎖した場合は景品表示法違反になるでしょう。
破産手続きがされたとしても、すでに支払った分は返金して欲しいと思うかもしれませんが、返金ができるとは限りません。
返金されるかどうかには条件があり、まず債権者の優先順位があるため、順位に従って返金されるのです。
最優先となるのは、担保の抵当権を持つ債権者であり、次いで破産手続きの費用や税金などの共益債権が優先されます。
契約者や顧客などは一般債権者と呼ばれ、上位2つの債権者の清算が終わった後で配分されるのです。
生徒は一般債権者に分類されることが多いので、返済のための資金が足りなくなってしまうと全額返金はされないかもしれません。
ただし、一定の条件を満たしている場合は優先返金となる可能性があるのですが、どのような条件があるのでしょうか?
破産手続きを開始した際は債権者に破産管財人から通知が届くため、支払い情報を基に債権届け出を提出する必要があります。
消費生活センターなどの機関に相談することで、返金される可能性や手続きに関して詳しく案内してもらうことも可能です。
また、返金を求めて多くの契約者が集団訴訟を起こすというケースでは、裁判所が特定の救済措置を設けるかもしれません。
しかし、ニチガクの資産状況次第では返金しきれない可能性もあるため、全顎返金は難しい可能性が高いでしょう。
もし詐欺罪だと認定された場合は、刑事裁判によって損害賠償を請求する権利が発生するかもしれません。
刑事裁判で有罪と判決が出た場合は、判決後に民事裁判で返金請求ができるのですが、返済能力がなければ回収は困難でしょう。
学生や周囲への影響は?
学生や生徒の家庭に対しては、塾のサービスを受けることができないため学習機会を損失してしまうという影響があります。
大学受験のための学習計画を大きく失ってしまうことになり、特に途中になってしまった課題や教材は重大な情報ロスとなってしまうでしょう。
事前に支払った学費や教材費などは返金されない可能性があるため、学生や家庭には大きな経済的負担となってしまいます。
代わりに、他の塾などを利用する必要があるため、追加で費用が発生することになるでしょう。
ニチガクで働いている教職員にも影響があり、職を失ってしまうため新たな雇用先を探す必要があります。
現在は教育業界全体が少子化などで縮小しつつあるため、同じ業界で再就職するというのは難しいでしょう。
また、破産手続きが進行している状態では、今までの未払いの給与や退職金が支払われる可能性が低くなっています。
取引があった企業では、まず未回収債権が発生してしまうため、回収できなくなってしまうリスクがあるでしょう。
長期的な取引を持つことができる顧客を失うことになるため、収益も減少してしまうことになります。
これからの対策について
ニチガクが破産してしまったことで、教育業界は全体的に重要な教訓を受け取ることとなったのです。
外部要因である少子化やパンデミックなどにも考慮して、経営戦略も柔軟に立てなくてはいけません。
また、経営状況や運営方針、財務状況などに関しては、透明化をしてしっかりと確認できるようにしたいと考える人もいるでしょう。
経営戦略としてはデジタル化を推進し、従来の教室ばかりではなくオンライン教育を併用してリスクを分散させる必要があります。
安定した経営を維持していくためには、収益向上を見直して余分なコストを削減することも重要といえるのです。
ニチガクの破産について背景をしっかりと把握して、他の塾の倒産にも備えて経営の見直しなどもしっかりと行うようにしましょう。
まとめ
ニチガクを運営する株式会社日本学力振興会は破産してしまったことで、受験を控えた生徒たちは今後の受験を第一に考える必要があるでしょう。
破産手続きをしたことで、すでに受け取っている月謝などの金瀬については詐欺罪として訴えられる可能性があります。
今後、塾は経営状態や財務状況を透明化して、誰でも見ることができるようにすることが求められるのではないでしょうか?