財務省解体デモとは??

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東京の霞が関にある財務省の建物の前でデモが行われることが増えていて、多くの人が財務省を非難しているのです。

財務省解体デモと呼ばれていて、所得の壁の引き上げへの反対などの政策に関する不満を述べ、財務省を解体するべきという意見も出ているのです。

財務省解体デモとはいったい何なのか、解説します。

財務省解体デモの発端

2月15日に、Xにおいて財務省解体デモを行うという情報が数日前から流れ、当日は数百人の人が集まったのです。

特定の団体に所属しているというわけではなく、SNSで財務省への不満に共感した人々が集まってデモが行われました。

これまで、財務省の前に多くの人が集まってデモを行うという事態は前例がなく、かつてあったのは経産省へのデモでした。

2011年に起こった東北地方太平洋沖地震をきっかけとして、原発に反対する大規模なデモが行われ、経産省前にはテントも設置されて泊まり込みで抗議していました。

しかし、当時は財務省がターゲットとなることはなかったため、特に人も集まっていなかったのですが、今は財務省がターゲットとなっているのです。

また、デモは東京だけではなく、近畿などの地方の財務局にも広がっており、初めての事態といえます。

そもそも、デモは誰が行っているのかというと、特に左翼などの団体ではなく一般の人ばかりなのです。

つまり、団体によるものではなく自然発生的に起こったデモであり、起こったきっかけとしてはやはり103万円の壁の問題が大きいのでしょう。

現在、扶養家族の収入が103万円を超えると所得税が課されることとなるのですが、先日制限額を178万円まで引き上げるという案が出されました。

人材不足に悩む企業が多い昨今、働く時間を増やすことができるように制限額を引き上げることが検討されたのです。

しかし、財務省が財源問題と税の公平性を理由として反対したため、非難を受けることになってしまいました。

財源問題は、消費税率に換算すると2~3%となるおおよそ7~8兆円の恒久財源を失ってしまうというものです。

安定して国に入ってくるはずの所得税が入ってこなくなってしまうと、現在マーケットで生じている問題である国債価格の下落や金利の急上昇に拍車をかけることになります。

国債を購入していない人には関係ないと思うかもしれませんが、最終的には国民生活にも悪影響となってしまうのです。

昨年末の10年債の金利は1.1%でしたが、3月に入って1.6%に迫るほど上昇したため、日本銀行は金融正常化を進めています。

国債の買い入れを減少させている中で、国債を買っている国内外の投資家は先細りになりつつあるのです。

日本の国債の格付けを引き下げるという動きも出ている中で、国債を7~8兆円追加発行してしまえば国際価格は下落して金利は上昇することになります。

金利が上昇してしまうと、民間企業は資金調達がしづらくなってしまい、個人でも住宅ローン金利が上昇するため、生活に悪影響を与えてしまうでしょう。

財務省が大幅減税となる施策に反対したのは、財政への信認をつなぎとめて投資家に国債を購入してもらうことで、不測の事態を防ぐことも目的と思われます。

実際に、英国のトラス首相が2022年に打ち出した財源なき減税策は、株安、国際安と金利上昇、ポンド安などの事態を引き起こし、金融市場には混乱が生じました。

非課税限度額を引き上げる問題点

非課税限度額を現在の103万円から178万円に引き上げた場合、減税となって必要な財源を確保できなくなるという問題があるのですが、他にも問題点はあるのです。

非課税限度額を引き上げてしまうと、格差が拡大してしまうという税制の公平性の問題があります。

所得制限がないまま基礎控除を引き上げると、高所得者ほど恩恵が大きくなり税による所得再分配の機能を損なって格差が拡大してしまうのです。

国民民主党では、所得制限がない基礎控除の引き上げを主張していたのですが、他国の控除をみるとあまり有効とはいえません。

アメリカの人的控除やイギリスの基礎控除では控除額に上限があり、所得が増加すると控除額も減少したり焼失したりするという方式が採用されているのです。

日本でも、2018年度の税制改正によって基礎控除には所得金額に応じて減額される制度が導入されています。

高所得者に減税の影響が波及するのを防いで、所得を再分配できるようにするには、所得制限が必要となるのです。

また、憲法に定められた生存権についても議論されていて、控除引き上げがなければ最低限度の生活すらもできないと主張しています。

しかし、現在の103万円という金額は、基礎控除と所得控除を合計した金額であり、生存権とは直接関係がないのです。

給与所得は所得を得るために必要な支出と認められているもので、確定申告における経費のような扱いのため、生存権と結びつけることはできません。

財務省解体デモの主張には、国民から選ばれていない財務省が政治を無視して暴走しているというものもあるのです。

財務省岩論という考え方があり、政治の力が強い時を水位が高いときにたとえ、財務省を示す岩は見えず淡々と仕事をしています。
しかし、政治が調整力を失うと水位が下がり、岩が見えてきてしまうという考え方で、現在は岩が見えている状態といえるでしょう。

昨年の補正予算編成においても、財務省が予算の最終責任を負うということができなくなっていて、財務省の力が弱くなっていることがわかります。

しかし、財務省を解体するように主張している人は、まず正しいデータを用いて議論する必要があるでしょう。

デモは国民に認められている正当な権利ですが、主張している内容は正しいのか、他にはどのような影響が出るのかをよく考えてから参加してください。

まとめ

財務省の前に人が集まり、財務省解体デモというものを行っているのですが、原因となったのは所得控除の引き上げです。

財務省は財源を失うことになってしまうため反対したのですが、国民としては財務省が減税をしたくないから国民を苦しめようとしていると思われてしまいました。

デモに参加するのは日本国民に認められた権利ですが、参加する前に主張が正しいのか、どのような点で議論をしているのかをしっかりと理解しましょう。