リスクマネジメント不足による海外事業からの撤退とは

事業運営リスク

近年は、中小企業を含めた日本企業が海外に進出する動きが拡大しつつあります。

しかし、懸念材料となっているのが海外事業から撤退するケースです。

海外事業から撤退する原因として多いのが、リスクマネジメント不足なのですが、なぜ海外事業から撤退することになるのでしょうか?

関係性について、解説します。

海外事業からの撤退とは?

海外事業の撤退とは、日本から海外へと市場を広げた企業が、進出した国や地域から撤退して事業活動を停止することをいいます。

現地に構えているオフィスや工場を閉鎖するだけでなく、資産の売却や処分、現地で雇用しているスタッフの再配置や解雇なども含まれるのです。

企業が海外事業から撤退するケースとしては、環境の変化やコスト削減の必要性などを考慮し、事業を継続することで不利益が生じる場合などがあります。

海外からの撤退は、単に物理的なプロセスとするだけではなく、戦略的かつ管理が求められることになる、非常に難しい活動となるのです。

海外へと事業を進出している日本の法人数は、2020年度末は25,703社だったのですが、2021年度末には25,325社と378社減少しています。

海外事業撤退が増加した背景には、コロナ禍による不安、国際情勢に起因するコスト上昇、進出国への理解不足などが原因となっているのです。

世界的な新型コロナウイルスの感染拡大によって、供給チェーンが国際的に混乱し、市場の不確実性も増大して消費者行動も変化しました。

特に顕著だったのが非製造業で、サービス業や小売業などはほかの業種よりも格段に増加した困難に直面しているのです。

政治的に不安定な場合や経済政策に変化があった場合、あるいは通貨の変動などが起こった場合は、運営コストが増加することもあるでしょう。

現地の商習慣や法律、文化などを十分に把握しないまま事業を展開していると、誤った決定をしやすくなる可能性も高くなります。

現地で社員を確保し、育成するうえでも文化の違いによるズレや言語の壁などがあるため、効果的なマネジメントは難しいのです。

海外事業には多くのリスクがあるため、リスクマネジメントが不足してしまうと海外事業を撤退せざるを得なくなります。

海外事業を撤退する場合のスキーム

海外事業の撤退におけるスキームは、状況や撤退する目的に合わせて選択することで、生じるリスクをマネジメントできる可能性が高くなります。

まず、企業は保有している海外子会社の株式を、他社に譲渡する株式譲渡を行い、現地の事業運営を他の企業へと移譲して市場から手を引くのです。

事業を閉鎖するものの他社によって継続できるというメリットがあり、ブランド名や従業員の雇用を維持することが可能で、投資の損失も最小限にできます。

しかし、買い手を見つけることが困難であり、市場状況や株式の価値によってプロセスが複雑になってしまうこともあり得るでしょう。

海外の子会社を正式に解散したら、現地にある資産を売却して事業を停止し、債務の清算などのプロセスを進めていきます。

事業を整理して終わらせることで、未処理の責任や義務から解放されるというメリットがあり、資産を売却した収益は負債の返済、株主への分配などに使われるのです。

しかし、時間がかかる上法的な手続きも必要となり、コストもかかるプロセスなので、現地でのブランドイメージや市場の再進出にも悪影響があるかもしれません。

企業に債務を支払う能力が無ければ、企業が経済的に持続不可能な状況であるとして債権者からの法的な保護を求め、破産申請を行うことになるでしょう。

破産申請をすると、債務の返済は一時停止し、企業は財務の再構築を図る時間を確保することが可能となりますが、企業の信用度は大きく下がってしまうでしょう。

撤退は難しい

海外に事業を進出して撤退する際は、現地メンバーの理解を得て合意形成し、現地の税務や法務について深く理解する必要があるので、事業進出時より複雑になってしまいます。

海外事業においては、管理や事業運営を現地に委託しているケースもあり、親会社に情報が適切に伝わらず、正確に把握できていないこともあるでしょう。

事業の現状を正しく評価できないため、撤退を含めた経営判断を適切に行うことが難しくなるため、問題が先送りされて大きなリスクを招く可能性が高くなります。

また、国によって税務や法務の規制は異なるため、違いを正確に理解して適切に対応する必要があるというのも、海外事業の撤退が難しくなる原因の1つです。

撤退の影響を最小限に抑え、思わぬリスクに遭遇しないためにも、各国の違いを把握しておく必要があるのです。

まず、海外進出時は事業撤退のラインをあらかじめ決めて置き、計画通りに進展しなかったとしても撤退のラインを守るように徹底しましょう。

計画が明確になっていると、現地スタッフは何を達成すればいいのかを知ったうえで集中して働けるため、モチベーション維持にもつながるのです。

海外と日本で共通の認識を持っていれば事業がスムーズに進むのですが、撤退する際は特に情報共有を密にしなくてはいけません。

日本側で正確に現地の状況を把握できていれば、お互い撤退する理由やタイミングなどについて納得したうえで進めていくことができるでしょう。

海外進出は、撤退する際も専門家に頼る必要があるため、自社だけで処理するのは難しいことから、コンサル会社を活用するのがおすすめです。

コンサル会社の中には、海外事業の撤退の経験が豊富な所もあるので、依頼することでリスクを軽減しつつ撤退プロセスを進めていくことができます。

コンサル会社を活用するためには費用がかかるのですが、代わりに得られる専門的なサポートや洞察は撤退プロセスを効率化して損失を防ぐことができるでしょう。

まとめ

海外に進出する日本の企業は増加しつつありますが、中には海外事業を撤退してしまう企業も少なくありません。

撤退する原因として、リスクマネジメントが不足しているという点があり、日本国内の経営とは異なるリスクがあると把握していなければ経営難に陥って撤退することになるのです。

撤退するとしても多くのリスクがあるため、事前にどのようなリスクがあるのかを把握してスムーズに撤退しましょう。

#保険見直し #保険事業 #保険業界 #保険アドバイス #自動車保険 #保険相談 #保険知識 #事業保険 #事業承継