日本企業の中で、海外に進出する企業が増えているのですが、海外進出においては国内での企業活動とは異なるリスクが生じます。
中でも、為替リスクは特に大きなリスクとなっているのです。
海外進出においては、リスクについてしっかりとマネジメントすることが重要となります。
どのようにマネジメントするのか、解説します。
為替リスクとは?
海外進出で注意が必要な為替リスクですが、そもそも為替リスクとはどのようなリスクなのでしょうか?
為替リスクというのは、為替が変動することで損失を被ること、もしくは利益を得ることをいいます。
為替相場は通貨同士の交換比率のことで、例えば日本円と米ドルなどのレートがあり、他の通貨の組み合わせもあるでしょう。
海外に進出して取引をする場合は、アメリカならドルを用意する必要があるのですが、為替相場が大きく動くとリスクも大きくなるのです。
入出金のタイミングで通貨の価値が変動するため、支払額が増減してしまうことで採算の確保が難しくなるのです。
為替リスクには、為替相場が変動することで自国の通貨に換算したときの金額が変動してしまうというリスクがあります。
他にも、資産が外貨建てだと評価額が変動してしまったり、価格における競争力に影響が与えられたりすることもあるでしょう。
海外に進出した場合に生じるリスク
日本の市場は、少子高齢化やGDPの低迷によって縮小しつつあるため、近年では多くの企業が海外に進出しています。
中小企業も様々な形で海外進出を始めていて、拠点の設置や海外市場への参入なども進められているのです。
海外進出が増加しているのは、まだ見ぬ大きな世界市場に期待している企業や、高品質な日本製品の人気を利用しようとする企業など、様々な理由があります。
しかし、日本企業が海外進出して世界市場に参加する場合、少なからずリスクも生じてしまうのです。
リスクの中には、事前の備えで対応できるものもありますが、常に生じていて切り離すことができないものもあります。
日本円ではなく、外貨での取引となるとリスクは常に生じているもので、輸出なら円安で為替差益が、円高で為替差損が生じてしまうのです。
外貨建ての資産を保有している割合が高いほど為替エクスポージャーが増加してしまい、外貨での取引が多いほど為替リスクも高くなります。
海外での活動が増加すれば資産や取引が外貨になることも多くなるので、予期しない為替変動が起こったときの影響も大きくなってしまうでしょう。
海外進出時の為替リスクマネジメント
海外進出をするのであれば、企業はリスクをなるべく少なくするよう取り組み、為替による影響を最小限に抑えなくてはいけません。
為替リスクマネジメントでは、為替レートと決済レートのマネジメントや、想定されるレート変動を回避することなどが求められます。
また、資産や負債の評価額や、外貨建てでの配当金なども管理しておく必要があるでしょう。
為替リスクマネジメントでは、ターゲットを明確にしておくことも必要とされるため、常に意識しておきましょう。
今まで多くの日本企業が海外進出をしているため、為替リスクに関してもノウハウが蓄積されて独自の回避方法などを把握しています。
通貨オプション取引や先物為替予約などの方法は、代表的な回避方法であり多くの企業が行っている方法です。
先物為替予約というのは、現時点で決めて置いた価格で将来の決められた期日や期間に売買すると約束しておく取引のことです。
一度予約してしまえば、取り消しや変更などは原則できないため、期日になれば必ず受け渡す義務が生じることとなります。
先物為替予約を利用すると、為替メリットを失ってしまう可能性はあるものの、利益確定が早くなるのです。
通貨オプションは、通貨を一定期間に、事前の取り決め通りの為替レートで購入、もしくは売却できるという権利のことをいいます。
購入する権利はコール・オプション、売却する権利はプット・オプションといい、通貨オプション取引は通貨オプションを売却、もしくは購入する取引です。
先物取引の場合は売買契約ですが、通貨オプションは売買の権利だけを購入することになります。
主に銀行や企業間で行われる取引ですが、輸出入業者が安全性を確保するために活用しているケースもあります。
輸出の際の為替リスクマネジメント
輸出の際に生じる為替リスクのマネジメント方法としては、どのような方法があるのかを解説します。
日本の場合はアジアや先進国への輸出が多いのですが、通貨を個別に選択していると為替リスクへの影響が大きくなります。
輸出先企業と自社の為替リスクの比重にも関わってくるのですが、価格設定にも影響が出てしまうのです。
世界的なシェアが大きい製品などの場合は、円建てでの輸出をすることでリスクを回避するケースも珍しくありません。
ただし、円建てでの輸出をする比率は全体的にみると減少していて、主にドル建てで取引されています。
特に先進国向けの輸出では、輸出先の通貨に合わせて取引するケースがほとんどとなるでしょう。
また、アジアへの輸出では厳しい資本規制があるため、ドル建てでの取引が特に多いでしょう。
ただし、規制が自由化されている韓国、香港、シンガポールなどへの輸出は、各輸出先の通貨建てになることもあります。
為替リスクマネジメントには、本社と海外拠点での輸出入で通貨を統一することも有効な方法でしょう。
輸入と輸出を同じ通貨建てで行うことで、為替リスクを相殺することができるので、輸出企業ではよく使われています。
取引において重要なのはリスクをなるべく少なくすることなので、様々な方法を活用してリスクを抑える必要があるのです。
まとめ
海外進出をする場合、進出先の企業と取引することになるため、どうしても日本国内での取引ではない為替リスクなどが生じてしまいます。
為替リスクの影響を最小限に抑えるには、マネジメントをする必要があるのです。
為替リスクを抑えるには、先物為替予約や通貨オプション取引などが有効です。
また、輸出の際はインボイス通貨の選択や自国通貨での取引なども考慮しておくと、リスクを抑えることができます。