運送業者にとってトラックドライバーから未払い残業代を請求されることは、経営において最大のリスクの1つと考えられています。
労働時間が長時間になりやすいトラック運送業や物流業での残業代は、賃金請求権の時効2年間分でも百万円を超えてしまうことがあります。
未払い残業代の請求方法とは?
労働時間や賃金規定と、実態の間にズレが生じていると、本来支払う必要がある残業代金が未払いになっている可能性があります。そうなればドライバーからは残業代の請求を受けることになるでしょう。
ドライバーに支払われていない残業代については、労働者が労働基準監督署に相談に行って労基署から呼び出されるケース、労働組合など加入することで団体交渉が申し入れられるケース、弁護士が代理人になり請求してくるケースなどがあります。
未払い残業代を認めない経営者も存在する?
特に運送業の場合には、拘束時間が長時間になることはそもそもわかっていることなので残業代を定めた法律が存在することがおかしいと考える経営者も多いようです。
昔ながらのドライバーは自営業者であるような労働体制を続けて賃金規定を見直していない場合、または利益にならないという理由でなどで放置している場合があり、そのような場合には多額の残業代を請求されることになります。
残業代について一度訴えられてしまうと、裁判所は法律規定に従い判断するので額の残業代金請求が認められることになります。また、対応が悪質な会社の場合、金額が増えてしまう可能性もありますし経営が継続できなくなる可能性も高くなります。
賃金規定の変更の必要がある
未払い残業代を請求されることから会社を守るためには、賃金規定を変更することが必要になります。支給している給与に対して時間外労働分の割増賃金を合理的な形で組み込むことが必要です。それに加えて労働時間の管理も合理的に変更していくことが必要です。
ドライバーの勤務状況の把握を
ドライバーは事業場外で仕事を行うことが主ですので、労働時間を把握することが困難であることも現実として問題です。
そのためみなし労働時間制などの適用を検討する運送業者もいます。このみなし労働時間制は、使用者の指揮監督が具体的に及んでおり労働時間の算定ができる場合は適用になりません。
運送業は目的地、積荷の種類や場所、配送ルートなどがわかっていますし、運行時間や運行状況など把握することは可能ですのでみなし労働時間制の対象にはならないと考えられます。
では具体的にどのように対策する?
残業をしなくて良い業務体制を作ることを検討することはもちろんです。しかし人手不足など運送業は様々な問題を抱えている場合も多くあります。
そのため業務内容はドライバーの申告以外に、勤務時間や運行ルートを効率的なルートで作業できないか会社でも検討するようにしましょう。
その他、基本給や手当等、賃金の見直しは必要です。残業代の請求が行われた場合、手当が残業代の計算に含まれる賃金なのかどうかも明らかにしておきましょう。
残業代を定額制にするなら賃金規定で明示し、割増分と差額が出るなら給与で精算するといった未払い分が発生しない対応も必要です。