運送や物流を業として営む上で、様々なリスクが発生します。その中でも経営者や従業員がケガを負うことや死亡することで、企業が損害を受ける人的リスクにも注意しなくてはなりません。
2008年に労働契約法に安全配慮義務が明文化され、企業や事業主は従業員に対して安全配慮義務を負うことは義務化されています。
労働環境の整備が十分でないと、労働災害が起きた場合に賠償請求問題などのトラブルに発展する可能性があります。求められることになりました。
労災保険以外に賠償金の支払いが生じるケース
労働基準法には業務災害で従業員がケガを負った、もしくは疾患を患った時には必要な補償をすることが規定されています。
補償額が多額となれば企業で補償しきれなくなる可能性もあるので、労災保険などで備えることが必要です。
業務災害でケガや疾患を患った従業員が労災保険から必要な補償を受け、そこで解決できれば良いでしょう。
しかし被害が大きく仮に死亡事故などになれば、遺族が会社に損害賠償を請求する可能性もあります。
損害賠償請求された場合は?
労災保険から補償されるのは、ケガや病気の治療費、休業補償、遺族補償等です。慰謝料などの損害賠償金については含まれません。
被災した従業員に対する保険金が給付されても、それはあくまでも会社が補償すべき金額分であり、安全配慮義務違反が認められれば労災保険とは別で慰謝料を支払う必要性も出てくるでしょう。死亡事故になれば損害賠償金の額は数千万円や億単位になる可能性もあります。
運送業が注意したいのは長時間労働による過労死
運送業で注意したいのは業務時間です。法定労働時間以上の労働が日常的に行われてれば、従業員が過労死するリスクも高まります。
従業員一人ひとりの仕事量が、会社側が設定した残業制限時間でこなすことができなければそれ以上の労働を強いられることになり、結果として過労による心身への負担を与えることになるでしょう。例え残業を命じたわけでなくても、安全配慮義務違反が認められるケースもあります。
多額の賠償金で経営がストップする可能性もある
いざ慰謝料などの損害賠償金を請求されても労災保険からは賄うことができず、多額の支払いで経営がたちいかなくなる可能性も十分あります。
このような場合には業務災害補償に対する保険に加入し、備えておくことが必要になるでしょう。
業務災害を補償する保険とは?
業務災害で被災した従業員に対して、会社が賠償責任を負う場合に補償する保険に「使用者賠償責任保険」があります。
労災保険等からの給付金だけでは不足が生じる場合に保険金が給付されますので、労災保険の上乗せと考えることができるでしょう。
会社で損害賠償金を支払うことができれば問題ないですが、中小企業などは資金に余裕がなく経営の危機に見舞われる可能性も十分考えられます。加入しておくことでリスク対策として高い効果を得ることができるでしょう。