企業の海外進出は増加しており、中でも新興国を中心とした進出が増えています。日本との文化や言語、気候など様々な違いで不自由さやリスクもあるため、海外赴任者の健康や危機の管理について理解しておくことが必要です。
海外赴任者を取り巻くリスクとは?
海外に赴任する人を取り巻くリスクを考える際には、「危機管理や安全に対するリスク」そして「健康管理に対するリスク」に分けて考えて行く必要があります。
●危機管理や安全に対するリスク
突発的に起きた事件や事故で赴任者が死傷してしまうリスクについて考える必要があります。交通事故や犯罪被害などの発生率が高い地域の場合は、特に注意が必要になるでしょう。
・交通事故
新興国や途上国では道路等のインフラ整備が不十分であり、交通マナーが悪い環境なのに交通量が多いなどが理由で死亡事故に巻き込まれるリスクが高くなります。
・犯罪被害
海外での邦人援護案件の件数が最も多いのは窃盗被害です。国や地域によって治安の状況や犯罪の発生率は色々ですが、大都市や急速に都市化が進んでいる新興国の都市などは犯罪発生率が高いと言えるでしょう。
・テロ、政情不安
アジア、中東、アフリカ、中南米などの一部の国や地域では、分派した組織によるテロなどが行われています。
また、政情が急速に悪化することで緊急避難や国外退避を含んだ対応が必要になることも想定されるでしょう。
・自然災害
大規模な地震、津波、洪水などによる安全が脅かされる事態も想定されます。
●健康管理に対するリスク
海外での死因で最も高いのは疾病等が理由で、全体の7割以上を占めています。
健康管理に対するリスクは発生確率などが高いと考え、日常的な対応が必要です。
・大気や環境汚染
長期間汚染に晒された後で被害が顕在化するといったケースもあり、被害の軽減や抑止の対策が必要です。
・感染症
国や地域によって多様な感染症があるため、罹患を防止する対策が非常に大切です。
・メンタルヘルス
そして在留者や旅行者を含む海外赴任者の死亡原因で、病気の次に多いのが自殺によるものです。プレッシャーや習慣と文化の違いによるストレス、相談相手のいない環境などが精神的疲労に繋がる可能性があることから、海外赴任者のメンタルヘルス対策が重要だと言えるでしょう。
・医療水準の問題
新興国では医療水準や設備が十分に確保されていないと言えますので、急病などの緊急時に適切な対応が困難であると言えます。誤診や医療過誤などのトラブルも起きているため、適切な医療機関の選定と利用方法について赴任者に指導を行うことや適切な支援が必要です。
・食品の安全性
一部の新興国などは食品の衛生管理や安全管理について体制が整っていないことから、食品を摂取したことによる健康被害を最小限に抑えることが必要です。
海外赴任者のリスクに対応するために
海外赴任先の環境や業務、抱えるリスクを踏まえた上で、マニュアル作成や配布だけでなく実態と対策状況を定期的に検証していき、是正と改善を加えていくことが必要です。
また、産業医などと検討を重ねながら適切な健康管理体制を構築していくことが必要だと言えるでしょう。