リスクの種類の1つに、「エマージングリスク」というものがあります。
元々、保険業界では浸透している概念なのですが、最近では多くの企業でも意識するようになってきています。
しかし、具体的にどのようなものなのか、知らない人も多いでしょう。
ここでは、エマージングリスクとは何か、解説していきます。
エマージングリスクとは?
エマージングリスクというのは、ニューリスクともいわれるもので、保険業界においてなじみ深いものとされています。
このリスクは、どういったものを指しているのでしょうか?
このリスクが指しているのは、狭義としては従来であれば予期していなかったようなリスクのことです。
また、それ以外にも従来予期はしていたものの、その頻度や重大さが予想をはるかに上回っていると判明したリスクも同様に呼ばれます。
保険業界では、これまでもこのエマージングリスクをカバーするべく、常に新しい保険を商品として売り出し、その都度成長してきました。
例えば、製造物に対して欠陥概念に基づいた厳格な責任が導入されるようになると、保険業界ではそれまであった生産物賠償責任保険に特約を新設することで、この責任問題にも対応できるようにしたところ、加入者が一気に増えています。
同様に、商法が改正された際に株主代表訴訟をそれまでよりも容易に提起できるようになった際には、その対策となる会社役員賠償責任保険、略称D&O保険などを売り出しています。
阪神淡路大震災、および東日本大震災などが起こった時も、その規模と被害は予想を大きく超えるものでした、
その後、被災地域での地震保険加入数は大幅に増加しています。
このように、保険業界ではエマージングリスクというのは非常になじみ深いものとなっています。
しかし、最近では保険業界以外でも、エマージングリスクという考え方が浸透しています。
企業では、エマージングリスクに対してどう備えるべきでしょうか?
エマージングリスクへの備え
企業がエマージングリスクに備えるには、まずその特徴を知らなくてはいけません。
エマージングリスクには、どういった特徴があるでしょうか?
まず、エマージングリスクというのは非常に認知するのが難しいもので、また認知したとしてもどの程度のリスクがあるのか、そのリスク評価をするのも困難です。
さらに、どうやってそのリスクを除去、もしくはすればいいのかという方法が確立されていないことも多いのです。
また、技術の革新に伴って生じることも多いという特徴もあります。
例えば、現在開発が進められている自動車の自動運転システムや、普及が進むAI、その他さまざまな最新技術に伴って生じるリスクはいくつもあるでしょう。
ただし、こうしたリスクに備えるということは、技術の革新を助けることにもつながっていきます。
最後に、エマージェンシーリスクというのは、リスクが顕在化するまではそれに対応した保険などがないことも多いため、リスクの転移というのが難しいことがあります。
先ほども言ったように、リスク評価が難しいことから迅速に保険商品とすることも困難でしょう。
こうした特徴がある中で、企業ができる備えとしては、事前の調査によるデータ収集を行い、そのデータを評価することでエマージングリスクを特定し、具体的な対策を考えていくことでしょう。
この時は、まずエマージングリスクにつながると考えられる問題を特定してから、データ収集を行います。
データ収集の方法としては、関係者の意見などを求めるほか、専門家による意見交換なども行うべきでしょう。
企業として、思わぬ事態においてもそのリスクを回避できるよう、常にエマージングリスクへの備えを欠かさないよう心がけましょう。
まとめ
このように、保険業界などでは常に意識されているエマージングリスクですが、最近では一般企業のリスク管理にも適応されるようになっています。
しかし、エマージングリスクはまだはっきりとしているものではないか、もしくは想定以上に規模が大きいものなので、簡単に備えができるものではありません。
まずは、素早い対応が可能となるように、情報収集をしっかりと行いましょう。