現在、新型コロナウイルスの感染拡大に伴って世界情勢は大きな変革を迎え、これまでのルールや制度などが通じなくなる面も増えています。
その、ニューノーマル時代となった現在、企業のリスクマネージメントも変化を求められることとなるでしょう。
どのように変更されるのかを、考えてみましょう。
ニューノーマル時代の到来によるリスクは?
2019年に発見されたCOVID-19、いわゆる新型コロナウイルスの感染拡大は、今もなお続いています。
また、変異株も現れ複数回感染する人も出ています。
そんな中で、ソーシャルディスタンスを確保することの重要性が高まり、多くの企業では在宅ワークができる制度を導入してテレワークでの仕事も増えています。
また、県をまたいだ移動などが制限され、自動化や無人化のシステムも数多く導入されています。
こういった変化の多くは、「いずれは変革する必要がある」と思われていたものです。
それが、急を要するようになったのです。
そのため、企業は十分な準備期間がないまま、拙速での導入を余儀なくされたのです。
しかし、中にはいち早く反応して準備を進め、必要な制度を導入してこの時代に順応できている企業もあります。
どこでその差が生じたのかというと、経営陣の違いによるのです。
経営陣の違いで生じる対応の差
企業の方向性を決めるのは、経営陣です。
いくら一般社員が変革を望んでも、それに経営陣が同意しなければ企業は変わることができません。
そのため、まずは経営陣が自社の事業に関してのリスクを理解する必要があります。
そして、そのリスクをどうすればチャンスに変えることができるかを考えなくてはいけません。
実際にリスクをチャンスに変えるには、リーダーシップを発揮しなくてはならないのです。
また、不測の事態に備える必要もあります。
そのためには、全従業員のリスク感度を醸成していき、自社にどのようなリスクが考えられるのかを議論して、一丸となって取り組まなくてはならないでしょう。
リスクマネージメントをトップダウン型にする
日本の企業のほとんどは、ボトムアップ型のリスクマネージメントをしています。
これは、現場で業務を遂行する上での阻害要因となる点を見つけて、リスクを抑制するための対策について検討して、業務を遂行しながらその対策を実施して、また別のリスクが出てきたら改めて対策を講じる、というPDCAサイクルを回していくものです。
しかし、このリスクマネージメントを経営陣が検討してそれを現場に実行させるトップダウン型にすると、会社のミッション遂行や外部環境変化が原因のリスクへの不確定要素を認識するため、経営における次の手段を決定することも可能となるのです。
また、この場合はオペレーショナルなリスク以外に、アライアンスの失敗などビジネス自体のリスクもリスクマネージメントに含まれます。
そして、現時点でのリスクや残りの許容量、等を明確にして、投資やリソースなどを含めた経営方針を決定することを中心に決定していきます。
リスクの考え方
トップダウン型のリスクマネージメントを行うことで、リスクの認識範囲を広げることができます。
業務を遂行する上で内包されているリスクに限らず、将来的なリスクや外部環境の変化なども含めて経営をするうえでの判断に関係するリスク情報を把握できるのです。
外部環境は、政治、経済、社会、技術の面での変化を意識して、自社にどのような影響があるかを幅広く見極めていきます。
その中の社会に関しては、特に概念が広いためさらに細分化して考え、それぞれの環境変化について考えることとなります。
事業ベースのリスクを考える
リスクは、これまで法令リスクや経理リスクなど、リスクという点を起点として整理していくものでした。
しかし、これではそれぞれの事業におけるリスク特性が把握しづらく、事業に対して深刻な影響を及ぼすリスクがわかりにくかったのです。
経営判断に役立てるには、事業ごとのリスクとそのノックアウトファクターとなるリスクがどれなのかを整理して、その情報に基づいて経営陣が事業リスクのポートフォリオ分析を行う必要があります。
そのうえで、事業ごとのリスク許容度をはっきりとさせて、今後のリスクテイクの可否などの意思決定をしていきます。
将来のリスクを予想する重要性
リスクの認識範囲を拡大する際は、時間軸、つまり将来のリスクを予測する際の時間の幅を拡大することも重要です。
メガトレンドや数年後に生じる外部環境の変化などを、あらかじめ把握しておくのです。
そうすると、自社にどのような影響があるのかを見極めて、現時点でそれに対して何を行うべきか、目線を合わせておくことができるようになります。
特に長期的な予測に関しては、その方向性を決めるトリガーを見極めて、ベクトルをモニタリングしながら対応の方向性について見極めましょう。
不確定な事象を意識して取り扱う
中長期に生じる変化は、いくら予測しても不確実です。
そのリスクを見極めるために、ある程度はっきりとしているリスクや対応するべき方向性が明らかなリスクは取り扱わないようにしましょう。
将来的なリスクに対してあらゆる可能性を想定して検討することで、不測の事態を減らして早急な対策を打つことができるのです。
リスク感度の醸成に取り組む
リスクというのは、将来起こりうる事象を把握するものです。
その感度を醸成するには、全社員が豊かな想像力を備えていなくてはいけません。
多くの「かもしれない」事象を集めて、その影響まで考える必要があるのです。
リスク感度
リスク感度は、将来起こりうる事象と、その影響を想像することです。
全社員のリスク感度を醸成させることで、リスク情報の質はさらに良くなり、対応の装丁も適切なものとなっていきます。
また、複数名でリスクに関して議論すると、相互に新たな気付きが生まれてリスク感度はさらに向上します。
それにより、さらに多様なリスクを認識できるのです。
リスクは隠すものではない
リスクは、不祥事などが原因で起こることもあります。
そのため、都合が悪いから隠そうとする企業も少なくありません。
しかし、オープンにリスクを議論することで、新たな価値を創出できることもあるのです。
新型コロナウイルスのような問題が起こった時、あらかじめリスクを予測しておくことで適切な対応ができ、対策も思いつきやすくなるでしょう。
この機会に、リスクマネージメントの重要性を認識して、強化していきましょう。
まとめ
リスクマネージメントは、時代が変化しても企業が生き残るために、必要なことです。
ニューノーマル時といわれる現在、いち早くリスクマネージメントに取り組んだ企業が生き残るでしょう。
不確定な将来のリスクを予測して、それにできる限りの対策をしておくことで、あらゆる事態に対応できるようになるのです。
ニューノーマル時代に、自社で生じうるリスクを一度考えてみましょう。