近年は、少子高齢化が進んだことで後継者不足に悩む中小企業が増えています。
中小企業は国の経済を支える重要な企業なので、事業承継をして存続させ発展するのが望ましいでしょう。
事業承継において、経営者が頭を抱えることになる問題は、どこにあるのでしょうか?
事業承継の問題点と、対策について解説します。
事業承継の現状は?
事業承継というのは、後継者がいないため、閉鎖する予定の会社、並びに同族経営の会社の経営者が、親族や第三者、もしくはM&Aの相手に事業を承継、あるいは譲渡することをいいます。
事業承継は単に相続するということではなく、会社の存続に大きく関わってくる非常に重要な経営課題です。
失敗すると会社の今後に影響するため、慎重に検討して進めなくてはいけません。
事業承継は、財産の相続とは違い、会社の経営という事業を引き継ぐものです。
会社の資産だけではなく、会社の経営権やブランドイメージ、取引先、更には負債までも含まれるものであり、単純な相続とは違います。
中小企業の中には、後継者が見つからないまま経営者の高齢化が進んでしまい、事業承継ができないせいで伝承されるべき技術や従業員の雇用が途絶えてしまうという、大きな危機に直面しています。
中小企業、並びに個人事業の経営者は、経営を続けるのが難しくなる前に、事業承継について真剣に考える必要があります。
経営者が頭を抱える問題は、後継者不足にあるのです。
日本の中小企業は、2025年問題という事業承継問題や、人手が不足していることが原因である経営資源の不足、コロナショックを契機とした経営基盤の弱体化等、多くの課題を抱えています。
以前なら、後継者の確保はそれほど難しいことではありませんでした。
しかし、社会問題にもなっている少子化の影響もあり、子どもがいない経営者やいても事業に関心を向けないという理由から、後継者確保が困難になっています。
昔のように承継するのが当たり前という時代ではなく、子どもにも職業選択の自由があります。
子どもに気遣って、あまり強く承継するよう言わなくなっているケースも増えています。
売り上げ規模別にみても、ほぼすべての規模の企業で後継者の不在率が高まっています。
特に、売上が1億円未満の企業の場合は8割近くの企業で後継者が不在という結果が出ていることからもわかるように、ほとんどの中小企業は後継者問題を抱えているのです。
現在、中小企業の経営者は高齢化が進んでいて、年代別に見ると60代後半が最も多くなっています。
後継者が不在なので、辞めたくても辞められない経営者が多いのです。
後継者がいないため、自分で経営を続けているという理由以外にも、事業の将来性に不安があるため、自分の代で終わらせてしまうことを決めている経営者もいます。
後継者についての課題がある中小企業の中には、そもそも後継者を求めていない企業もあるのです。
大企業であれば、代表取締役の交代というのは珍しいことではなく、候補となる人も多いためそれなりに行われています。
また、代表取締役が変わっても会社の運営には大きな影響がありません。
しかし、中小企業の場合は運営が経営者に依存している部分が多いため、経営者が変わると運営にも大きな影響があります。
事業承継が進まない理由には、運営に対する影響を不安視しているという点もあるのです。
廃業する中小企業が増えている
近年、中小企業の休廃業数は年々増加しつつあるのですが、倒産件数を見ると余り増加していません。
中小企業は、経営が立ち行かず倒産しているのではないのに、休廃業しなくてはならない事態に陥っているのです。
休廃業となった企業の経営者を年齢別にみると、特に増えているのが65歳以上の高齢者が経営者である場合です。
2006年には全体の14.2%だったのが、2012年には45.6%と3倍以上になっているのです。
10年以上経過している現在では、少なくとも休廃業することとなった企業の半数前後は65歳以上だと考えることができます
なぜ、高齢となった経営者が休廃業に追い込まれるのかといえば、やはり事業承継が上手くいっていないことが大きな原因でしょう。
日本の産業において、中小企業は重要な役割を担っています。
中小企業の事業承継を円滑に進めることは、日本の産業を守ることにもつながるのです。
特に、価値の高い中小企業が廃業に追い込まれることがないようにしなくてはいけません。
中小企業の経営者は、一斉退職で企業が一気に人手不足となった団塊の世代が多いため、経営者も引退を考えることが増えています。
しかし、企業を存続させるために後継者を見つけようとして、まだ引退できない人が多いのです。
事業を今後継続すると業績がどうなるのかというと、経営者の年齢が高ければ高いほど増収増益の企業の割合が低くなっています。
いずれは業績が悪化して、最悪の場合は廃業せざるを得なくなるかもしれません。
経営者が廃業を許容している場合でも、業績の悪化に伴い思わぬ負債を抱えることになる可能性もあります。
また、経営者が死亡して遺産分割をすることになった場合、資産を集中できないせいで企業の存続が危ぶまれることも考えられます。
しかし、後継者をせっかく見つけたとしても、従業員や取引先の理解が得られないというケースもあります。
事前にしっかりと説明して、良好な関係を築く下地を作っておく必要があるでしょう。
事業承継について悩んでいる場合は、税理士や弁護士、M&Aコンサルティング会社などの専門家に相談してみてください。
自分では思いつかなかった提案をしてもらえることもあり、具体的に行動する際もサポートしてもらうことができます。
まとめ
中小企業の経営者の中には、後継者がいないことで事業承継ができないという悩みを抱えている人も多いのですが、中小企業は国の経済の根幹を担っているため、できるだけ存続させることが望まれます。
経営者の高齢化が進む今、自分で後継者を見つけようとしても限界があるでしょう。
事業を存続させることを望むのであれば、事業承継に特化した弁護士や税理士、もしくはM&Aコンサルティング会社などの専門家に相談してみてください。